霊団のリーダーとなった貧しい靴職人【後編・シルバーバーチ】 | 太平洋戦争史と心霊世界

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海軍を中心とした15年戦争史、自衛隊、霊界通信『シルバーバーチの霊訓』、
自身の病気(炎症性乳がん)について書いています。


海岸 



 彼(靴職人)は何か言おうとしたが口に出ない。不安の念に襲われ、しり込みして天使の前で頭を垂れてしまった。そしてやっと口に出たのは次の言葉だった。

 

「私はただの靴職人です。人を指導する人間ではありません。私はこの明るい土地で平凡な人間であることで満足です。私ごとき者にはここが天国です」

 

 「そういう言葉が述べられるということだけで、あなたには十分向上の資格があります。真の謙虚さは上に立つ者の絶対的な盾であり防衛手段の一つなのです。

 

それにあなたは、それ以外にも強力な武器をお持ちです。謙虚の盾は消極的な手段です。あなたはあの地上生活の中で攻撃のための武器も強化し鋭利にしておられた。

 

たとえば靴を作る時あなたはそれをなるべく長持ちさせて貧しい人の財布の負担を軽くしてあげようと考えた。儲ける金のことよりもそのことの方を先に考えた。それをモットーにしておられたほどです。

  そのモットーがあなたの魂に沁(し)み込み、あなたの霊性の一部となった。こちらではその徳は決してぞんざいには扱われません。

 

 その上あなたは日々の生活費が逼迫(ひっぱく)しているにも拘らず、時には知人宅の収穫や植えつけ、屋根ふきなどを手伝い、時には病気の友を見舞った。

  そのために割いた時間はローソクの明りで取り戻した。そうしなければならないほど生活費に困っておられた。

 

そうしたことはあなたの魂の輝きによってベールのこちら側からことごとく判っておりました。

  と言うのも、こちらの世界には、私たちの肩越しに天界の光が地上生活を照らし出し、徳を反射し、悪徳は反射しないという、そういう見晴らしがきく利点があるのです。

 

ですから、正しい生活を営む者は明るく照らし出され、邪悪な生活を送っている者は暗く陰気に映ります。

 

 このほかにも、あなたの地上での行為とその経緯(いきさつ)について述べようと思えばいろいろありますが、ここではそれは措(お)いておきます。

 

それよりもこの度私が携えてきたあなたへのメッセージをお伝えしましょう。実はこの本に出ている界に、あなたの到着を待ちわびている一団がいるのです。霊団として組織され、すでに訓練も積んでおります。

 

その使命は地上近くの界を訪れ、他界して来る霊を引き取ることです。新参の一人ひとりについてよく観察して適切な場を選び、そこへ案内する人に引き渡すのです。

 

もう、いつでも出発の用意ができており、そのリーダーとなるべき人の到来を待つばかりとなっています。さ、参りましょう。私がご案内します」


シャガール・天使 


 それを聞いて彼は跪(ひざまず)き、額(ひたい)を天使の足もとにつけて涙を流した。そしてこう言った。

 

「私にそれだけの資格があれば参ります。でも私にはとてもその資格はありません。それに私はその一団を知りませんし、私に従ってくれないでしょう」

 

 すると天使がこう説明した。

 

「私が携えてきたメッセージは人物の選択において決して間違いを犯すことのない大天使からのものです。さ、参りましょう。

 

その一団は決してあなたの知らない方たちではありません。と言うのは、あなたの疲れた肉体が眠りに落ちた時、あなたはその肉体から抜け出て、いつもその界を訪れていたのです。

  そうです。地上にいる時からそうしていたのです。その界においてあなたも彼らといっしょに訓練なさっていたのです。(注1)

 

まず服従することを学び、それから命令することを学ばれました。お会いになれば皆あなたのご存知の方ばかりのはずです。彼らもあなたをよく知っております。大天使も力になってくださるでしょうから、あなたも頑張らなくてはいけません」

 

注1)睡眠中、地上の人間は霊界を訪れていると言われている。

 

 そう言い終わると天使は彼を従えてその家をあとにし、山へ向かって歩を進め、やがて峠を越えて次の界へ行った。

 

行くほどに彼の衣服の明るさが増し、生地が明るく映え、身体がどことなく大きく且つ光輝を増し、山頂へ登る頃にはその姿はもはやかつての靴直しのそれではなく、貴公子のそれであり、まさしくリーダーらしくなっていた。

 

 道中は長引いたが楽しいものであった。(長びいたのは本来の姿を穏やかに取り戻すためであった)

 

そしてついに霊団の待つところへやって来た。ひと目見て彼には彼らの全てが確認できた。出迎えて彼の前に整列した彼らを見た時には、彼にはすでにリーダーとしての自信が湧いていた。各自の目に愛の光を見たからである。


 

『ベールの彼方の生活』(3)、1章 天使による地上の経綸 

キーワード:霊界、幽界、利他的行為、睡眠中の霊界訪問