
現在の政府を見ると、やはり戦前の歴史とそっくりな部分があり、思わず二つの状況を重ね合わせてしまいます。
一つは情報軽視という面。情報軽視にもいろいろありましたが、日米戦争中は海軍が負け戦を隠ぺいして海戦に大勝したと偽ることも多々ありました。
しかし陸軍や政府は正確な状況を把握できず、海軍に追随して偽りの戦況を基に次の作戦を立てたため、さらにひどい大敗を帰すという悪循環が生じていました。
具体的には1944(昭和19)年10月の台湾沖航空戦で、海軍は米軍に大敗していたにもかかわらず、空母19隻を含む艦艇を計45隻撃沈し、大戦果を収めたと大本営発表を行っていました。だが実際には重巡2隻足らずが大破を被ったに過ぎませんでした。
この場合は現場指揮官が、損害を受けた米艦艇をダブって数えるなど、現場での誤りを大本営がそのまま鵜呑みにし、大戦果としてそのまま発表してしまうという不首尾を犯していました。
またミッドウェー海戦では、海軍の大損害を過少に報告するなど、故意に戦果を偽る場合も多かったのです。
大本営海軍部による発表
顧みて現在の政府で原発政策を例として挙げてみても、正確な情報を把握しているとは思えません。
関電の原発問題にしても、今夏は原発を動かさねば電気は足りなくなると、政府は再三国民を脅してきました。
しかし蓋を開けてみるとどうでしょうか。今年の夏は9月に入っても猛暑続きという異常気象が続きました。しかし全国的に、原発は停止していても電気は賄えたのです。
「電力不足になる」という政府の意向で、関電の大飯3,4号原発だけは稼働していますが、その代わり電力は足りているため一部の火力発電は停止しています。
これについて何が言えるかというと、政府は正しい情報を把握できていない、政府の情報は当てにならないということです。
原発反対の環境学者・飯田哲也氏やジャーナリストの広瀬隆氏は、日本全国の電力の需要と供給の分析を行い、夏に全国の原発が全部止まっても電気は足りるとの予測を大分前から発表していました。
そして夏が過ぎると、彼らの予測する結果が真実となったわけです。民間の原発反対論者が正確に現状を言い当て、片や政府はろくでもない虚偽の情報を流し続ける・・・一体税金を使って何をやっているのでしょうか。
この原因として、電力会社が提供する情報を政府そのまま鵜呑みにして利用しているため、情報が歪んでいるという可能性があります。これは海軍(現在は電力会社)が真実を隠匿して、政府や陸軍がその情報を鵜呑みにした戦時中と似ています。
或いは原発推進者が多い政府内(戦時中は海軍内)で、故意に情報を捻じ曲げ、都合の良い発表をしている側面もあるのかもしれません。
いずれにしても、現政府の情報収集・分析能力は大変低いということです。以上のように推測すると、現政府では外交などの他の対応にしても、そのひずみが出てくるのではないかと危惧しています。
日米戦では、日本は情報戦で負けたという重大な敗因をしばしば指摘されています。なぜ現在の政府も同じ誤りを懲りもせずに繰り返すのでしょうか。いい加減学んでほしいものです。