
昭和の戦時中に出版されたジョーク集です。
●「これは御無理な」
時間厳守を尊ぶ社長の秘書、朝の出勤に省線電車(注1)が故障して五分後に停車したので、カンカンに成って駅員に向かい、
秘書「オイ君、ケシカランさっそく証明書を書いてくれ」
駅員「十分以上の停車でなければ証明書は差し上げられません」
秘書、すかさず
「ヂャア十分以上でなければ証明書をくれないと云う証明書を書いてくれ」
(『キング』大日本雄弁会講談社、昭和6年6月号)
注1)1920年から1949年の間、現在の「JR」に相当する鉄道を指した言葉。当時の国有鉄道が「鉄道省」の管轄であったことによる。
【解説】昭和6年という、戦前から鉄道が遅延証明書を発行していたのは興味深いです。ちなみに海外ではこのような制度を見たことがありません。
●「動物園」
「日本は世界の公園だってね」
「それじゃ帝国議会はそこの動物園だろう」
(『日の出』新潮社、昭和7年8月号)
●「死人に口なし」
売薬商人、街頭で薬の効能を述べながら、
「我輩はこの丸薬をここ二十五年売りつづけている。その長年月の間、ただの一言(いちごん)も不平を聞いたことがない、これ、何の故(ゆえ)であるか」
聴衆「死人に口が無いからさ」
(『キング』大日本雄弁会講談社、昭和7年4月号)