言語:日本語、公開:1939(昭和14)年、製作国:日本、
時間:89分、監督:熊谷九虎、出演者:大日方傳、月田一郎、原節子 階級章が肩に付いている
昭和12年の海軍陸戦隊。
主役の岸中尉(中央)
ここのところ映画の紹介ばっかりになっちゃってますね。(^_^;)
「上海陸戦隊」は何と1939(昭和14)年の日米開戦前に製作された、モノクロのプロパガンダ映画です。といっても映画らしいひねったプロットがなく、ほとんど話はドキュメンタリー調に終始しています。
製作は昭和14年なので、映画に登場する銃器・兵器も全部本物です。この頃着ていた軍服の検証にもなりますが、フィルムが古くて詳細が良く見えません。劣化のせいで声も聞き取りにくい部分があります。
内容は映画が製作された2年前の1937(昭和12)年の日中戦争中に起こった、第二次上海事変を取り上げています。
最初に1937年(昭和12)年8月、上海陸戦隊の中隊長、大山勇雄海軍中尉が上海で中国軍に殺害され、その葬儀の場面から始まります。その後3万の中国軍が国際租界を包囲、日本に発砲を仕掛けてきました。
対する日本軍の上海陸戦隊は、4千人あまりのわずかな兵力で、3万人余の日本人が居住する租界を苦戦しながら防衛。2ヶ月後に到着した陸軍の上海派遣軍にその任務を明け渡しました。
この間の出来事を、ほとんどひたすら戦闘場面で描写しているのですが、プロパガンダの割に日本軍の素晴らしさを大げさに誇示するわけでもなく、話は淡々と進行していきます。
途中に陸戦隊に助けられる中国避難民の婦女子が出てくるのですが、日本軍を毛嫌いし、ツバを地面に吐きかけて抵抗の態度を示す中国娘(原節子)が登場します。
原節子演じる中国娘。動く原節子初めて見ました。(ノ゚ο゚)ノ 1920(大正09)年生まれ。身長165cm。当時としてはかなり大柄だったのでは。
他の中国人が日本兵に食糧をもらっても「食べるな!」と睨みつけるような役なのです。よくこんな反日中国人役を映画の中に取り入れましたね。製作は現代ではなく昭和14年なんですよ。
ネット上の映画レビューを調べると、「映画界にも赤色思想が入りこんでいたのではないか」などの所感がありました。しかしこの映画監督は国粋主義者とも言われていたそうなので、それはないのでは・・・?
その理由の一つとして、私は日本人特有のバランス感覚が働いたのではないかと思っています。
中国人避難民の全員が、日本兵から食糧をもらって嬉しがっていたのでは何か現実感に乏しく見えるかもしれません。だから反日中国人も一人くらい混ぜた方が話が引き立つと考えたのかもしれません。反対に中国が映画を作った場合は反日一色になりそうな気がしますが・・・。
戦後にもモノクロの戦争映画は撮影されましたので、この映画も制作年代を聞かなければいつ作られたのかわからないかもしれません。でも戦前・戦中に製作されたものと、戦後に作られた映画の見分け方がわかりました。
戦前・戦中の映画では兵士が負傷しても、「早く戦場に出せ!」とせがんで早く死にたがります。この映画でも同様で、死ぬ死ぬ喚いて日本兵の勇ましさを強調しています。
戦後の戦争映画は死ぬんだと主張する兵士が出てきても、結局「生きろ!」とか「命が大事だ」など戒めているものが多いです。既に戦後の価値観が映画の中に入っちゃってますね。しかし現代の人間に共感してもらうには、やむを得ないのかもしれないです。(・・;)