今週は日本軍の情報関連の話を載せましたが、これらを見ても分かる通り、戦前・戦中の海軍で諜報活動は、実は人があまりやりたがらない閑職に近い分野でした。
この理由も戦争に勝つために必要な分野である、という認識はなく、作戦に直接関わらない地味な職種であるため、何となくパッとしないという理由で海軍軍人に敬遠されたようです。
この「なんとなく敬遠」という心情が、日本人のメンタリティを表していて非常に興味深いのですが、『ジパング』で例えると、人気のあった花形分野は滝中佐が就いていたような作戦関連でした。
滝栄一郎中佐。海軍兵学校・主席卒業。
こういう兵科将校で優秀とされる軍人は、実際には作戦畑に集まってしまい、情報収集などの報われない分野には人材が集まりませんでした。
草加拓海少佐。海軍兵学校は次席卒業。滝中佐と同期。イギリスに駐在経験あり。
話の中で草加少佐は通信士官(情報分野)となっていますが、ハンモックナンバー(海兵の成績順)が重視される海軍では、実際に存在するとしたら別の人気のある分野に行っていたのではないでしょうか。
彼は海兵を次席で卒業しており、英国に駐在経験があります。海外駐在経験がある将校は、海兵を上位成績で卒業し、「優秀」と目される軍人が多いです。
諜報活動・スパイ=スマートという印象は戦後の後付けで、情報は戦時中には軽視されがちな職務でした。
従って草加少佐の情報士官と言う役割も、「スパイはカッコいい」という現代の価値観を反映したものであると言えます。
『ジパング』は非常に時代考証を重視していたと思いますが、良く調べてみると以上のように現代人の価値観に合わせた設定がなされていたりします。
これは作者が話を魅力的にするために故意にセッティングしたのだろうと私は思っています。