
ここ数年の間、アメリカで大量のシェールガスが発見され、世界のエネルギー事情は一変しましたが、日本ではこの状況が一般に認識されておりませんでした。
そこで国際政治学者、藤井厳喜(げんき)氏がアメリカのシェールガス革命について語ります。
■シェールガス革命:日本は米の6倍の天然ガス価格
【藤井厳喜】AJER
藤井厳喜(げんき)氏:
1952年、東京生まれ。国際政治学者。早稲田大学政治経済学部卒業。1985年までアメリカ留学。クレアモント大学院政治学部、ハーバード大学政治学部大学院助手、同大学国際問題研究所研究員。拓殖大学客員教授、モンゴル国際経済商科大学客員教授、日米保守会議理事・事務局長。
【概略内容】
この数年間で、世界のエネルギー事情は一変しました。
シェール・ガスと言われる新しい種類の天然ガスの採掘が可能になったからです。
在来型の天然ガスの確認埋蔵量は、28兆立方メートルで、その可採年数は僅か60年でした。
ところが、シェール・ガスは、188兆立方メートルも存在が確認されており、その可採年数は、約400年です。
大気汚染やCO2の問題を考慮すると、石炭より石油、石油より天然ガスが優れています。
その天然ガスが大量に発見されたので、世界のエネルギー供給は、大きな余裕が出来てきました。
アメリカではこれが、天然ガスの価格に反映され、天然ガス価格はピーク時の3分の1にまで低下しています。
ところが、日本では、安定確保を重視したあまり、ガス価格が、石油価格に連動する契約で、天然ガスを輸入しています。
その為、日本は今までのところ、シェールガス革命による天然ガス価格の低下の恩恵を全く受けていません。
日本の輸入している天然ガスの価格は、アメリカのガス価格の6倍にも及んでいます。これは、天然ガス輸入の際の、契約の仕方が賢明でなかったためです。
今後、賢い輸入戦略をとれば、安価な天然ガスの恩恵に日本も預かることができます。
私は、「脱原発」派ですが、代案のない脱原発論は無意味だと思っています。
ところが、現在、シェールガス革命によって、天然ガスを利用した火力発電により、原発を代替することが簡単に出来るのです。
しかも日本には、ガスコンバインドサイクルという非常に優れた天然ガス発電の技術があります。
この国産技術と、安い輸入天然ガスを組み合わせれば、安全で安価な電力を豊富に供給することが可能です。
これに気が付いた日本の商社などは、早くもシェールガスの開発輸入のプロジェクトを始動させています。