海軍では士官(少尉候補生以上の階級)となるためには、通常では海軍兵学校・機関学校・経理学校に入学し、卒業後少尉候補生(兵科、機関科、主計科)となるしか道はありませんでした。
また戦時中に限って、大学・大学予科・高等学校・専門学校を卒業し、海軍予備学生に採用されたものが士官になることができました。
それ以外で兵クラスから昇進して来た叩き上げの下士官も士官にはなれましたが、これは特務士官と呼ばれ、普通の士官とは区別(いや実は差別だったのですが)されました。
下記に海軍の階級表がありますので参考にしてください。
特務士官は特務大尉でも、兵学校出の少尉より階級は下とされました。つまり実戦になったら、指揮をとるのは20歳そこそこの経験のない兵学校出たての少尉となり、実務経験豊富な特務大尉はその指揮下におかれると言うことになります。
海軍では昇進は徹底した学力主義(学歴差別)があり、特務士官のような制度ができた背景には、兵学校出身の軍人を何かと優遇したいという思惑が働いていました。
士官からの差別もひどく、兵学校出の士官ではたいした咎めを受けない状況でも、特務士官であると徹底的に責められたなどの逸話も残っています。
対して陸軍士官学校では階級は下士官兵からはじまって卒業時に曹長となり、半年の見習い期間を経て少尉に任官されました。
陸軍では叩き上げでも特務士官と言う制度は無く、士官学校出身者と同様に昇進していったので、陸軍の方が昇進に関しては平等で納得のいくものでした。海軍が貴族主義・エリート主義といわれるゆえんです。
特務士官の最高位は特務大尉で、ほんの少数ですが、少佐にまで昇進する特務士官もいました。最高位は中佐まで昇進しました。佐官になると「特務」の呼称ははずれ、名簿上は普通の「少佐」となります。
特務士官制度も昭和17年11月に全廃され、「特務士官」から普通の「士官」へ編入されます。しかしそれは名目上で、実際は兵学校を出ていないと言うことで差別は続きました。