水兵だった人達の記録を読むと、いじめや暴力行為のシーンが、日常茶飯事的に登場します。
罰直が行われる時間は、だいたい夜の甲板掃除の後で、デッキに総員整列がかけられ、教班長数名によって、長々と小言を聞かされた挙句、
「お前たちは口で言ってもわからないから、気合いを入れてやる」と制裁が行われます。
制裁には幾つかの種類がありました。
■代表的なものがバッター(尻をこん棒で叩く)と、アゴ(顔面を殴る)である。
■「前にささえ」
体操の腕立て伏せの格好で、15分以上の長時間、その姿勢を保つ。これを全員が長時間行うと、寒中でも兵隊たちの流す汗で、デッキは水をまいたようになり、なかなかきつい。
「急降下」下手な絵ですが(汗)
「前にささえ」の型で、足を椅子もしくはテーブルの上に、両手は床の上において、体を前傾させ、もろ腕で体を支える。急降下する飛行機をあらわすが、「前にささえ」よりも数倍のきつさであった。
■「大黒様」
日用雑貨を保管する手箱が各自に貸与されているが、その小さな木箱の上に正座させて、さらに、衣嚢(いのう)を肩にかつぐ。木箱が足にくいこんで、その苦痛はひとしおであった。袋をかついだ大黒様の格好からきたものだろう。
■「蜂の巣」
主に真夏の暑いときの罰直で、衣嚢(いのう)を収めておく40センチ角にしきられた奥行きの深い棚が、5段8列あるが、その枠内から衣嚢をだして、その中に一名ずつ頭から体を突っ込むのである。
これは分隊180名のうち、80名が衣嚢に入り、あぶれた100名がバッター制裁を受けることになる。
これを一斉に決行するので、(バッター制裁を受けないよう)必死だ。みんな中段に的を絞るから、上部があく。すると、中部に入ろうとしている者の背中に乗って、上部をねらう者もいる。
棚に入ったら、両肘を張って、足を引っ張られても頑張る。10分も辛抱すれば「やめ」となる。
→ 下の方のロッカーに頭を突っ込んでいる人の背中を踏み台にして、さらに上の棚に登って頭を突っ込むようです。一種の椅子取りゲームみたいなものでしょうか。
次回に続きます。


