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もしも株初心者がダイドー株を買ったら、十中八九損をするだろうと、私は予想します。
ダイヤモンドオンラインはしっかりしたサイトなのでしょうが、この記事にだまされてはいけません。
ここには事実しか書かれていないとしても、その事実は不十分だからです。
記事に書かれているのは、ただ「増配する」という事実だけです。
ダイドーの株価が今後伸びていくのか、会社の業績は成長していくのか、そのような重要なことが書かれていません。
そして、この会社の株価も業績も、良くはないはずです。
今はこのニュースの話題性でお祭り相場になっているだけで、株価は適正ではありません。
それは、証券会社の示す指標や会社四季報の情報から明らかです。
まず、この会社はずっと赤字だったし、将来もそんなに業績が良くはありません。
会社四季報の情報で、赤字だった20年3月期から22年3月期までの純損失の合計金額は、黒字になった23年3月期、24年3月期の合計純利益よりも大きいです。
つまり、20年3月期から24年3月期までの5年間のトータルで、会社は赤字です。
さらに、今後2年間、25年3月期と26年3月期の予想まで合わせた7年間でも、トータルで赤字になります。
20年3月期よりも古いデータは知りませんが、少なくとも四季報に載っているデータを見る限りでは、この会社は過去の赤字が大きすぎて、ちょっとくらい利益を出しても過去の赤字を穴埋めするだけにしかならないということです。
それに、配当金というのは利益剰余金分配金であって、会社が営業活動で儲けて余った利益を、会社の出資者である株主に分配するものです。
本来は黒字経営のときに利益の中から配るはずのお金を、赤字で利益がないのに配っています。
そのお金はどこから出るのかといえば、会社の資本金を食いつぶしていることになります。
株価対策なのか知りませんが、配当金を増やす上に自社株買いまでするそうです。
けれども、そもそも会社が儲かっていないのに、証券取引所を通じて市場で流通している自社の株を買い取るといっているのです。
お金がないのに買うという。
それでは会社のお金は、なおさら減って無くなってしまいます。
四季報には20年3月期よりも古いデータはありませんでしたが、もしもこの会社がかつては安定した黒字経営をしていた会社で、過去の蓄えで資産をたくさん持っていたなら、その資産を使って配当金を配ったり自社株買いをしたりすることはできるでしょう。
が、実績PBRの数字を見れば、そうでないことは明らかです。
PBRは会社の資産を株数で割った、一株あたりの資産と、現在の株価とを比べ合わせた比率です。
2倍くらいは特別数値が悪いわけではありませんが、あまり良くはないです。
出資割合に応じて会社の所有権を得るのが株で、100%すべての株を手に入れれば会社は100%自分のものになるのですから、株価は比喩ではなくそのままの意味で、会社を買うことのできる値段です。
この会社の持っている資産、つまり直接的な会社の価値に対して、会社を買うことのできる値段、株価はいくらかというと、2.14倍です。
つまり、会社の資産を株数で割った1株あたりの資産は500円くらいしかないのに、株価は1000円くらいだということです。
もっとも、配当金を増やすという発表をして株価が上がる以前はもっと株価が安かったわけですから、この倍率はもっと1倍に近かったはずですが、とにかく、1株あたりの資産は、500円くらいしかないわけです。
それで、25年3月期から27年3月期までの3年間を1株あたり年間100円の配当金にするそうですが、会社四季報に乗っている1株あたりの利益は、25年3月期で1.1円、26年3月期で1.9円の予想です。
会社の一株あたりの利益は1円か2円くらいなのに、配当金で100円配る。
足りない98円とか99円は、会社の資産を使うことになる。
だけど、そもそも会社の資産は1株あたり500円くらいしかありません。
27年3月期の予想は四季報に出ていないけれど、少なくとも25年、26年の2年間で、配当金を配るために1株あたりの資産は197円減る予想です。
500円から197円ですよ?
そんな馬鹿げた金額の配当を出すのは、会社の資産の規模からいって間違いなく相当の無理をすることになります。
それから、予想PERは会社の業績予想の1株あたりの利益と、株価の比率です。
この数値が995です。
もしも現在の株価の1095円でダイドーの株を全て買い取って、会社を100%自分の所有物にした場合に、会社の毎年の純利益を積み上げていって、会社を買い取るのに使ったお金を回収することができるのは995年後ということです。
つまり、全然儲かっていないのに株価ばかり高すぎるということです。
世の中にはこのPERの数値が1桁の割安銘柄がたくさんあります。
後もう1日も株価の高騰が続けばPERが4桁にもなろうかというひどい株を買うなんて、マネーゲーム以外の理由があり得ません。
さらに、キャッシュフローもマイナスです。
キャッシュフローは資金繰りで、例えば商品を売ってもかけ取引で、支払い期日が長くてお客さんがなかなか支払いをしてくれない場合、会社の売上高はあるんだけど、商品代金の回収が悪くて現金が入ってこないことになります。
お客さんに対して商品代金を請求する、貸しているお金を取り立てる債権はあるんだけど、実際のお金は無い、資金繰りがダメで会社が潰れる黒字倒産というものも世の中にはあります。
だから、資金繰りはマイナス続きではいけないわけですが、本業の営業活動の資金繰り、営業キャッシュフローがマイナスです。
その他、33%しかない自己資本比率の低さなども含めて、この株を買うべきではない理由はたくさんあります。
異常な増配の話題性でマネーゲームが起きているだけで、投資という意味で考えると、この銘柄を買う理由はひとつもなさそうに見えます。
ネットニュースの記事になったからといって、株初心者が飛び付くと十中八九とんでもないことになるでしょう。
もしも私の身の回りで家族や友達が株を買うといったら、全力で「ここだけはやめておけ」といいます。