名探偵コナンの作中で、コナン君は犯人を追い詰めて死なせたら殺人鬼と変わらないなどといいました。

そのセリフが、謎解きの後で死ぬ犯人が何人もいる金田一少年の事件簿に当てはまるといって、「コナンのセリフが金田一に刺さる」という意見があるらしいです。


いや、刺さらないでしょ。


金田一君とコナン君とでは立ち位置が違います。

金田一少年の事件簿は、タイトルからいって「金田一少年が事件の謎を解いた記録」です。

名探偵の孫というのは本人が望むと望まないとに関わらず、生まれた時からついて回るただの血縁関係に過ぎません。

金田一君は探偵ではなく、一介の高校生の少年です。

一方、名探偵コナンはタイトルからいって「主人公のコナン君は探偵で、探偵として事件を解決する」というお話です。

作中でコナン君自身、「江戸川コナン、探偵さ」と名乗る場面が何回も出てきて、コナン君の決めゼリフのひとつになっているくらい、間違いなくコナン君は探偵です。

一介の高校生と探偵とでは、立場が違いますよ。


金田一君の、悲恋湖伝説殺人事件かなにかで、船の事故で他の乗客が助かるために女の子を救命ボートに引き上げなかった、恋人を殺されたといって連続殺人事件を引き起こした話で、カルネアデスの板などというのが出てきました。

自分が助かるために必要やむを得ない場合には、他の人を死なせても罪にはならないと。

金田一君は名探偵の孫で、おじいさん譲りの推理能力で事件の謎を解くことができるものの、あくまで一介の高校生の少年です。

一介の高校生が、恐ろしい連続殺人事件に巻き込まれて、次は自分が殺されるかもしれないような追い詰められた状況で事件の謎を解くのに、犯人の命の安全まで気にしていられる余裕なんかないのは仕方のないことです。

犯人が死んだとしても、金田一君自身が助かるためにやむを得ず謎を解いた結果なら、それはカルネアデスの板というものです。


一方で、コナン君は探偵なので、自分から事件を探し回っています。

なんの関係もない事件でも、警察が事件現場を調べているのを見かけたら「高木刑事、何かあったの?」などといって自分から首を突っ込みます。

呼んでもいないのに事件とあらば出しゃばってきて、推理で追い詰めて犯人を死なせていくとしたら、それは「相手が犯罪者なら死なせてもOK」という、犯罪者を狙って殺して回る殺人鬼です。


したがって、金田一君は犯人を推理で追い詰めて死なせても、止むを得ず仕方がないけれど、コナン君の場合は殺人鬼です。

2人は立場が違うから。

コナン君のセリフは金田一君には刺さらないと、私は思います。