記事にはだいぶ調子の良いことが書かれていますが、私は実現性が高いとは思えませんでした。

投資に回しているお金が10万円の人と100万円の人と1000万円の人で、誰が億り人に近いかといって、当然1000万円の人だから、タネ銭を増やせといいます。

とにかく早く投資を始めて、資金は後から増していってもいいというのです。

それは事実、正しいと思います。

ただ、「億り人になる方法」という魅力的な見出しを付けて話をするとしたら、それは正しいとは限りません。

なぜなら、それは株価が何倍にもなる大化けする銘柄を見抜く能力があってはじめて実現するからです。

仮に最初、10万円の資金で株を始めたとして、投資をする一方で働いて得た給料の中から毎月1万円、投資資金のためにお金を貯めて、1年間で12万円です。

投資の利益がゼロだとしても、1年後には最初の10万円プラス12万円で、合計22万円になります。

1年間で2倍以上です。

でも、100万円のお金を投資に回している人が、同じように毎月1万円のお金を貯めたとして、1年後には100万円プラス12万円で、112万円です。

10万円の人のように2倍に増えることはありません。

金額が大きくなればなるほど、自分で働いて貯めるお金の割合は小さくなっていきます。

もちろん、株で儲けたお金を使ってまた株を買い、再投資の繰り返しで増やしていくことを考えれば、12万円でも10年後、20年後には大きな金額になります。

それでも億り人などというと、投資で増やす方を何倍にも増やし続けなければ無理です。

投資の利益の再投資だけでなく、働いて稼いだお金を投資に注ぎ込んでタネ銭を増やすことは有益だけど、億り人になるのには、投資で増やせなきゃ無理です。


次に、株価が何倍にもなる割安銘柄や成長銘柄を買えといいます。

たとえばこの銘柄はどうでしょうか?


実績PERが0.41倍ですから、会社の資産を株数で割った一株あたりの資産と現在の株価との比率で、株価より資産の方が倍以上も大きい、割安銘柄です。


株価は長期のチャートで見ても下がってきていて、私は株価600円を割ったところから「そろそろ底値じゃないか?」と目をつけていました。

それに、600円を割ったくらいの頃は、配当金を30円や25円出していて、配当利回りも悪くありませんでした。


業績でいっても、ここ3年ほど赤字だったものの、売り上げはどんどん成長しています。

売り上げがあるなら、販売費及び一般管理費のいわゆる経費を減らし、営業外損益をプラスに持っていけば黒字になります。

時価総額100億で東証プライムだとかいうところを、時価総額2200億の押しも押されもせぬ大企業です。

会社側は業績の黒字化を予想発表しています。

割安で、成長の見込める銘柄と言えるでしょう。

だけど、この銘柄は上がりません。

なぜなら、配当金を出すのをやめたからです。

株価は需給バランスで決まるので、つまり株価を決めるのは業績だけではなくて、その株に投資することで儲かる、利益です。

業績が良くなって再び配当金を出せばいいけれど、無配のままだったら、保有しても儲からない銘柄です。

そして、当面は無配です。

私だって平成20年頃から十数年も株をやってきて、大儲けはないものの株の損益は毎年きっちり黒字です。

それでも、いいと思って目をつけている銘柄でも、大ハズレを引くことは珍しくありません。

割安銘柄を買って、配当金ではなく売買利益を狙っていけば儲かるですって?

テレビに出ているプロの経済アナリストだって景気の先読みを外すのに、アマチュアの投資家が急成長する株ばかり見つけられるというのが間違いでしょう。

業績の安定したいい会社の相場が安いときに買っておいて、株価が上がるまで配当金をもらいながらじっくり待つ方がアマチュアにとっては確実です。

株価が何倍にもなるような急成長株はわからないので、資金を配当目的の手堅い銘柄と、大きく上がるかもしれないギャンブル的な銘柄とで分けて、遊びで急成長株を探すのです。

急成長株なんかに本気で賭けていたら、アマチュアはしくじって大損するのが目に見えています。


最後に、「損切りは素人がめったにやるものではない」と、私は考えています。

ダメだと思って売った途端に上がり出すなんてことも、世の中にはあります。

上がるか下がるかがわからないから、株で大きく儲けるのは簡単ではないのです。

売った株が上がって、買った株が下がったら、損切ったうえに新たに含み損を抱えて、ダブルパンチで痛い目に遭います。

欲をかいて高値掴みをすることなく、落ち着いてチャートを見て、一流銘柄の高くないところを拾っておけば、数年後には上がります。

アマチュアなら下がったら上がるまで待ち続ける方が安全です。

損切りは上級者のテクニックなので、よほど見切りをつけない限りは、やらない方がいいと思います。


とりあえず、これから株を始めようという素人を相手に、億り人になる方法などといってハイリスクな投資をさせるのは、どうかと思います。

専門家なら変に射幸心を煽る記事で表示回数を稼ごうとするより、安全性を優先して的確なアドバイスをしたらいいのに、と思います。