記事に書かれている内容は間違っていると思います。

追い越しはセンターラインや車線境界線を跨いで前方車の前へ出ることだといいます。

が、それは違うでしょう。


写真は有限会社シグナルの『普及版道路交通法』から、追い越しの方法についてのイラストで、車線を跨いでいません。

シグナル社は、運転免許更新の際に配布される道路交通法の黄色い冊子の発行元ですから、道路交通法の関連書籍としては、公安委員会御用達のしっかりした会社です。

道路交通法第2条にはさまざまな用語の定義が定められていて、追い越しについても道路交通法第2条の中で決まっています。(第2条第1項第21号)

車両が他の車両等に追いついた場合に、その進路を変えて前車の側方を通過して、その車両等の前方へ出ることを、追い越しといいます。

この進路変更というのは、写真のイラストでわかる通り、車線を跨ぐかどうかではなく、「そのまままっすぐ進むか、進む向きを変えるか」の問題です。

例えば、時速50キロで走る普通乗用車が、時速30キロで走る原付バイクに追いついたとします。

原付バイクの通行区分は、「道路の左側に寄って通行する(道路交通法第18条第1項)」ということになっていて、自転車のように「左側端」ではなく、普通乗用車と同じ「道路の左側に寄って」です。

仮に、原付が自転車と同じように左側端部に沿って走っていて、車道の真ん中を走る普通乗用車が回避することなく、そのまままっすぐ走ったとしても接触しない場合には、これは追い抜きです。

でも、原付が左側端から少し離れていて、普通乗用車が、車線を跨がないまでも、少し右へズレなければ、そのまままっすぐ走ったらぶつかってしまう場合には、進路変更をして「追い越した」ということになります。


すり抜けをするバイクもまた、大抵の場合、「すり抜けをするとき以外にも、普段からクルマの通行するラインとはズレた狭いスペースを走っている」ということはありません。

渋滞せずに普通に交通が流れているときには、クルマの流れに乗って、前のクルマと後ろのクルマの間を、クルマ1台分のスペースを使って走っているはずです。

それが、すり抜けをするために進路を変えて、前の車の側方を通過し、前へ出る。

これは、車線を跨がなくても「追い越し」のはずです。

世の中のすり抜けの多くは厳密には追い越しだと、私は思っています。

自動車雑誌に記事を書くような人、特に今回のすり抜けの記事のように道路交通法の規定について書く人は、仕事なので当然、道路交通法について詳しいと思います。

それが、「車線を跨がなければ追い越しじゃない」というのは、いかがなものでしょう?

車線を跨がなくても、『追い越し』になりますよね?