テロに気を付けテロ。
日常の一瞬を切り取り飾らないありのままを共有する、とした理念を掲げて登場したSNS、BeRealは、従来の映えを競う文化へのアンチテーゼとして若年層を中心に浸透した。しかし、その設計思想そのものが新たな摩擦とリスクを社会にもたらしている。
象徴的なのが「BeRealテロ」と呼ばれる現象である。授業中や会議中、あるいは接客中といった本来集中すべき場面で突如通知が鳴り投稿を促される。この「2分以内」という制約は単なる遊びの範疇を超えて場の秩序や規律を乱す要因となる。実際、国内の高校では授業中に生徒が一斉にスマートフォンを取り出して撮影して授業が中断される事例が報告されている。教師側が注意してもアプリの仕様が行動を後押する。従来の校則では想定しきれない問題である。
企業の現場ではより深刻な影響が顕在化している。飲食店や小売業において従業員が勤務中にBeRealを投稿した結果、店内の様子や厨房の衛生状態、他の顧客の姿が無断で写り込むケースが相次いだ。ある外食チェーンでは従業員の投稿にレジ画面が映り込み、内部オペレーションの一部が外部に露出するという事案も発生している。これらは単なる不注意では済まされず、企業のブランド毀損や情報管理体制への信頼低下に直結する問題である。
さらに問題なのはプライバシーの境界が曖昧になる点だ。BeRealは前後カメラによる同時撮影を特徴とするため投稿者本人の意図を超えて周囲の人間や環境が移りこむ。学校内での投稿により友人の顔が無断で公開されたり、オフィス内の背景から企業名や所在地が特定されたりするケースも報告されている。個人の発信が他者の情報公開に転化する典型例でありリテラシーが求められる。
一方、こうした問題の根底にはアプリの設計そのものが生む緩やかな強制力が存在する。「投稿しなければ他人の投稿が見られない」という仕組みは利用者に対して日常の切り取を半ば義務づける。同調圧力は可視化されにくいが確実に作用し、本来は投稿を控えるべき場面でも無理に撮影を行う行動へとつながる。これは自由な発信というSNSの理念とは逆行する側面を持つ。
社会はどう向き合うべきか。企業においては撮影禁止エリアの明示やSNS投稿に関するガイドラインの策定、さらには従業員教育の徹底が不可欠だ。学校においても同様に校則による禁止だけでなく、なぜ問題なのかというリテラシー教育を通じて生徒自身に判断力を持たせる必要がある。そして利用者個人に問われているのはリアルとは何かという根源的な問いである。ありのままを共有することが価値だとしても、その「ありのまま」が他者の権利や社会的規範を侵害してはならない。BeRealは新しい時代のSNSの可能性を示したが、それは「見せる自由」と「見せられるリスク」が表裏一体であることを浮き彫りにした存在でもある。その境界線はしっかりと引かなければいけない。
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