銀メダルでもスゲートと思う。
坂本花織がミラノ・コルティナ冬季五輪を有終の美を飾った。坂本本人は銀メダルとなった結果に悔し涙を流しつつも「前は本当に奇跡のような銅メダルから銀で悔しいと思えるぐらい成長したのかな。この4年間頑張ってきてよかった。自分を褒めてあげたい」と語った。今期がラストイヤーだと決心して挑んだミラノ・コルティナ冬季五輪だったことから坂本本人は金メダル獲得への意欲が相当強かったであろうが、個人競技としての最後の舞台を見事に締め括ったと言える。坂本が銀メダルを獲得したことは日本フィギュアスケートの歴史的な1ページとして高く評価されるはずだ。オリンピックの女子個人スケート競技で複数のメダルを獲得した日本人選手はいなかった。坂本は2022年北京オリンピックで銅メダルを獲得し、女子シングルスで自身2個目の冬季オリンピックメダルを獲得したことは快挙と言って良い。
坂本は、国内実績は十分だったが2018年の平昌五輪には代表に選ばれなかった。この落選後に彼女の練習姿勢が一段と厳しくなったと言われている。当時はロシア勢を中心に女子4回転ジャンプが台頭。「4回転を持たない選手は勝てないのでは」という評価があったが、坂本は無理をせず、ダブルアクセルの完成度向上、出来栄え点の最大化、スケーティングの加点など総合的に得点を積み重ねる戦略に特化した。技術点と演技構成点を高水準で両立させる現代型スケーターの完成形と表されている。2022年モンペリエ、2023年さいたま、2024年モントリオールと世界選手権3連覇を成し遂げている。2022年には北京オリンピックでシングルは銅メダル、団体で銀メダルを獲得、個人と団体の両面を牽引した。女子フィギュアは4回転時代に派手な高難度ジャンプだけに依存せず、完成度や安定性など総合力で頂点に立ち続けた坂本の演技は女子フィギュアの価値観を再定義した。技術と表現を高次元で両立したスケーターという点で坂本は大きな功績を残した。
坂本は勝って当然という期待の中で股関節や足首の痛みと付き合いながら競技を続けてきた。「環境変化に適応する戦略的思考」と「失敗を成長材料に変える心理的回復力」が華々しい実績を生んだのであろう。引退後は彼女を育てた神戸の地で後進の指導に携わりたいという意向を示している。ミラノ五輪でのSP曲は「タイム・セイ・グッバイ」、これからも日本フィギア界に貢献を続けてくれるであろう。