ゆったりと刃を引き抜くウルブレードに対し、べアックスは執拗なまでに斧をかち合わせていた。互いに間合いを計っているのか、第一歩を踏み出そうとしない。
だが、まっさきにベアックスが詰め寄り、加速度を味方につけ、斧で薙ぎ払おうとした。ウルブレードはそれを刃で受け流す。続いてべアックスは、接近したまま連続で斧をふるう。
ことごとく刃で防がれているものの、ウルブレードを防戦一方に持ち込んだのは驚愕に値する。上段かと思いきや下段からのすくいあげと、完全に弄んでいるかのようだった。
とはいえ、黙って防御に徹するほど、ウルブレードは我慢強くはない。べアックスが腕をそらし、大振りの一撃を加えようとした瞬間、がら空きの胴体に掌握を打ち込んだのだ。
鎧によって大したダメージにはならなかった。だが、思わぬ反撃にベアックスはうめいた。その間に、盾として使われていた刃が本領を発揮し、べアックスの胸を袈裟がけにしたのだ。
「よし、ウルブレード様がまずは決めたぞ」
観戦しているガゼルスピアーは喜びの声をあげる。エレファンマーはおもしろくなさそうに鼻息を鳴らした。
ウルブレードの刃による一撃は、生半可な防備だと戦闘不能寸前にまで追い込むことができる。それを不意打ちでくらってもなお、変わらぬ臨戦態勢に入ることができるとは、べアックスの耐久力は軒並み外れていると評するしかなかろう。
「さすがは若狼だ。こうでなくては、倒しがいがない」
「貴様に褒められてもうれしくないな」
「褒めたつもりもないがな。それに、お遊びもここまでとしようや」
ベアックスはそう言うと、両腕をクロスさせ、そこに体中の力を集約させた。その構え、挙動から、べアックスの次の一手を読み取るウルブレード。安全策でいくなら回避だ。しかし、徐々に詰められつつある間合いの中、完全に攻撃をかわすのは困難であった。そうであれば、取るべき行動は自然とこれになる。
「断首獄斧(ギロチン・ヘルアックス)}
アクアヒルの命を奪い去った一撃が、ウルブレードに直撃しようとしていた。