そこには、ある2体の戦士がモグーン兵を踏みつけ、殴り倒している姿が映っていた。逃げ惑うモグーン兵に容赦なく拳や蹴りを打ち込む。
その重圧な鎧と、両腕に装備された二対の斧はいやがうえでもあの戦士を想起させた。つい先日の儀式で大罪を犯し、今は独房で拘束されているはずの戦士。
「ベアックス。あいつがなぜこんなことを」
その奥では、ワザワイカブトが両手両足を鎖で繋がれたままもがいている。皮肉にも、牢獄でべアックスがやられていたのと同じ態勢であった。
ゲンワクアゲハの電影鱗粉は、鱗粉を飛ばすことによって遠く離れた場所の出来事を映し出し、それをどこでも見られるようにする技だ。つまり、この映像は、現在まさにルートの森で繰り広げられている惨事ということになる。
「ベアックスは牢獄にいたはずだろ。それがルートの森まで赴き、果てはあそこまで暴れまわるとは考えられない」
「そうだよ。牢獄にはちゃんと見張り番もいたはずだし。今は、えっと、エレファンマーだっけな」
ベアックスの脱獄に関し、「どういうことだ」「訳が分からない」と議論を交わす獣刃大将軍。すると、その重要な手掛かりとなるものが写り込んでいた。
ベアックスにばかり目がいっていたが、同じくモグーン兵を蹂躙する戦士。鼻が長くて肥満体形、棘のついたハンマーを振りまわす生意気な野郎。
そう、そいつはエレファンマーだったのだ。
「大方べアックスの脱獄の経緯は分かった。べアックスにそそのかされたか、自発的にやったのか知らんが、エレファンマーが裏切り、牢のカギを開けたのだ」
ウルブレードは拳を握った。エレファンマーが自分に対して反感的なのは百も承知だった。だが、まさかこんな愚行を犯すとは。ウルブレードは体を震わせ、眉間にしわを寄せた。
「じじい。あのバカクマと象は何をしでかしたんだ。詳しく聞かせろ」
「逆に叱られるとは心外じゃの。被害を受けたのはわしらの方じゃ。それに、今から話そうと思ったのじゃ」
ノロイムカデによると、べアックスがルートの森を訪れたのはほんの数時間前のことだった。