恵化的公演生活(ふぇふぁろうん こんよんせんふぁる)YouTubeチャンネルの「ワイルドグレイ勉強放送」の抜粋。私にはこう聞こえたという意訳です。
(56:00)
Q.ロスの「だから僕があなたを逃したのかな?」を聞いてどう思うか?
ジョンミン:今回少し演出が変わった部分だ。前は無視ではなくても聞こえなかった感じですぐに次の場面に移っていた。だが今回はこのセリフに対する反応を入れてくれと言われた。重いセリフだが冗談のように言うから反応が難しい。直後のシーンがひたすらボシだけを想って歌わなければいけないのに、こんな難しい演技を要求するとは演出家が自分を高く評価してくれているようで感謝した。
でもその宿題ができそうになかった。(次のシーンへのタイミング的にも)大きなリアクションも大変だし、しないわけにもいかない。だから音楽監督に相談したりもした。
ボシに出会ってから物凄い刺激を受けて、実際ワイルドがそれ以前に書いた原稿がかなり修正された事実もある。だから、このセリフにも創作的インスピレーションを得た、という風に落ち着いた。
このセリフを聞いて具体的に何かを考えたことはなかった気がする。その場面のワイルドはロスの言葉が耳に入らない状態だから。強いて考えれば、今日もそうだったが、ロスが最後に「僕じゃだめなのか。一緒に行こう」と本心をぶつける時、問題のセリフの答えでもあるかのように、心がつぶれる。ロスにとても頼ってきたという感情を表現するようになる。本来は私がロスを抱きしめるのだが今日などは私がロスに抱きしめられた感じだ。それが答えになる気がする。
演じながらとても混乱する。俳優として、ワイルドとして。だが、それが実際にワイルドの心理なんだ。どうすることもできず、正解を出すこともできず、応えてやることもできなくて申し訳ない感情もあるが、申し訳ないとばかり思ってはいられない。前進しなければならないし。
四六時中、ずっと混乱するから辛い。でも最後にロスに抱きしめられると、その時だけ心が静まる。抱きしめられて生きられればどれだけ良いか。誰かを抱きしめて生きるのがどれほど辛いか。私だって公演中に何らかのヒーリングが必要なのに、全然そういうのがない!だから公演が終わってもぐったりだ。抱きしめてくれるロスがどれほどありがたいか。
「汚れた血」は、何らかの薬物のように
幻想と現実を分離できなくさせる歌
(1:02:30)
Q.「汚れた血」で、ボシに対する感情が大きく変化すると思うが、どんな変化なのか?
ジョンミン:ここは見物だけするシーンだ。ドリアンとボシが重なり合うのがこの部分だ。この劇の各シーンはある程度の時間的経過を含んでいるのだが、(単独のシーンだけを表現するのではなくて)各シーンの時間経過とキャラクターの関係性を見せるのが俳優の役割だ。
ボシが危険だということをワイルドも知っていたはずだ。以前にもボシのような相手と自由恋愛してきた人物だから、その中にロスもいたし、ボシとの出会いも数ある出会いの中の一つに過ぎなかったはずなのだが、存在自体が特別な相手だった。見たこともないほど美しいし、名家の貴族という地位もある。
そんなボシが表現するドリアンの心情を、ワイルドも全く同じように感じていたと思う。ロスが言う「ドリアンを殺してしまった罪悪感」は大きな心のしこりだが、それを解消できるかもしれない人物だ。それも現実に、目の前にいる。
「汚れた血」は、何らかの薬物のように、幻想と現実を分離できなくさせる歌だ思う。
それで歌が終わって向かい合う2人の姿が「私がお前の肖像画だから」という台詞と嚙み合うことになる。この時点までは、ボシと会い続ける確信も無かったろうし、会いに行って話すのも小説を書くうえでインスピレーションを受けるのが楽しかっただけだ。付き合っていたわけじゃない。だが、この歌の後に告白する。
歌の前には「なぜ来なかった」と聞かれても、適当に受け流していた。「あえて破る必要は無かったじゃないか」と言うのが変化を表していると思う。
もしかすると、ただインスピレーションを受けてスラスラ書ける幸せな状態をずっと続けたかったかもしれない。でも「汚れた血」がその幸福を捨てる決心をさせたと言える。(危険なボシを受け入れるというのは)責任を引き受けるということだから。
MC:ワイルドについてとても語りたかったようだが。
ジョンミン:ワイルドは他の人に語らせると不利になるキャラクターだから、自分で語ってみた。
(1:08:42)
Q.全シーズン参加に感謝する。シーズンを重ねながら変化した部分はあるか?
フィ:変化したと言うより人物のレイヤーが多くなったと言うか。人物に関して台本には出ていない部分とか、初/再演では考慮できなかった部分が追加されてきた。俳優は分析をするのだが、分析量が増えたから表現の幅も増えた感覚だ。
ジョンミン:今回練習を始めた時、フィが俳優としても内面がすごく深まったようで、演技が本当にうまいなーと。皆が引くほどだから演出が「練習に来るな、かえって邪魔だ」と冗談を言った。
(1:11:17)
Q.ロスのどの言葉で一番腹が立つか?(「お前は本当におぞましい人間だな」「私との初体験が果たして安全なのか」など)
(ジョンミン:ほら、ロスはああいうことを言うのがうまいんだ。)
フィ:ロスの言う事はほとんど全部、気に障る。でも一番気分が悪いのは、こういうセリフではない。今は思い出せない。
MC:ロスとしては、こういう言葉を吐き出して少しはすっとするか?
スビン:そうでもない。溜まっていることが多すぎて、吐き出すとしても全部じゃないから。
(1:14:00)
Q.イ・ボムジェ作曲家のナンバーが全部良いし、難しくもあると思うが、フィ俳優が歌うボシナンバーで一番難しいのは?
フィ:歌うのが一番難しいナンバーは、何と言っても「あなたの目」だ。とても好きな歌で、ただ歌うだけならそこまで難しくはない。
確かに音程や発音が難しいと言えるが、それよりも感情的に更に難しい。泣いてしまうと歌えなくなるから、毎回必死に耐えている。今日も、久しぶり(のジョンミン・ワイルド)で、いつもより感情が高まっておかしくなるほどだったが、俳優として役に入り込みすぎると歌えなくなる。
ジョンミン:泣けるナンバーが多くて、楽曲的に難しい以前に、涙が流れ続けて…
フィ:涙が出ると喉がつまる。肝心なのは自分が感じる事より、観客が感じることだから、自分を抑えて歌う。
ジョンミン:泣いて「えっえっ」となると、音を伸ばすところがスタッカートみたいになってしまう。ところがこの作品はそうなるナンバーが多い!
フィ:今日は特に、本当に辛かった。
(1:18:13)
(先の「ロスのどの言葉で一番腹が立つか?」について)
フィ:思い出した。セリフではなくて、「お前はいなかった」の後のシーンだ。「最後まで高級な顔をしたいのか?復讐したくないのか?」と聞くが、ロスが返事をしない。「いまだに、そうまでして彼を手に入れたいのか?」図星なのに何も言わない。最後に「観客になりたい人」と一言だけ言う。見下されているのが感じられるので、一番腹が立つ。聞いてもいない時は何か言ってくるし、答えを聞いている時は何も答えない!
MC:ロスがワイルドにだけ言いたい事を言えないようだが。ワイルドがいないと、ボシには言いたい事を…
ジョンミン:ワイルドともよくしゃべる。ただ、自分の心を話さないのだ。