期待の再演だったが、開幕早々はレジェンド級の不評で、オスカー・ワイルドが驚いてだか、怒ってだか、墓の中から飛び出してくるんじゃないか、などと言われた作品。
退廃的シーンが目に余る!そもそも結末が初演(原作)とは違う、何を言いたいのか分からない!と散々な言われよう。
いったい何がそんなにいけないのか。逆に怖いもの見たさで、一種のレジェンドを見てみようじゃないか。1列目で! (2階だけど)


3人シスターズ。
若い女優2人の歌がひどいって口コミがあったけど、そこまでじゃないと思う。こなれてきたのか?
結局、歌は2幕も楽しめたのだが…
バジルの死後ドリアンが歌う時、絵を切り裂くのか、自分を切り裂くのか、早く先が知りたくて「歌はいいからパリパリ!」となっていた。
全編通じて、ヘンリーの哲学とかドリアンの行状とか、半分近く聞き取れてないので、分かってない人間の感想ではある。
2幕初め、映し出された文字でドリアンの近況を知るとか無理なんで!誰か説明して!となり、
韓国在住のバイリンガルに聞いてみたら、ドリアンの顔にロックオンなので分からないとのことだった。
「そう言えば、なんか文字出てましたね〜」
そういう楽しみ方もアリなんだと学んだ。大いに参考にしたい。
この作品を見たかったもう一つの理由は、カテコ写真がドキドキするほど素敵だったメガネのギョンスヘンリーだ。
余裕たっぷりにシニカルで冷ややかそうで、実はすごく欠けた所のある、満たされていないヘンリー。堪能した。
5/23
ドリアンとバジルだけが交代で、あとは全員初回と同じメンバー。
今日は近くから見る!
やだ、面白いんですけど
てか、ヒョンソクが良いのかな
近年一番のはまり役?
前回より理解が増したのもあるかもしれない…
舞台はゴージャスだし、全然悪くない。
もっと早い時期にこの経験をしていたら、ヒョンソクをリピしていたかもしれない。というより、そうしたかった。
ヒョンソク・ドリアンは登場時は本当に透明な魂の持ち主って感じで、可愛いが、途中傲慢さを経てぐちゃぐちゃになっていく振り幅がすごい。
母親の美しい遺伝子と祖父の残酷な遺伝子の2面性を遺憾なく発揮である。
何より歌が上手い
〈ホーリーイノセント〉は〈サリエル〉の声楽的唱法が残って大袈裟に聞こえてしまい、〈ラパチーニ〉は無難な感じではあったものの、〈ドリアン〉は歌唱と舞台規模がマッチして圧巻
ところで、赤い布の上のドリアンとシャルロッテの絡みは2階からの方が良く見えた。
シビル役のヘイリは次作が〈チャミ〉のチャ・ミホだ。なぜか唐突に思ったのだが〈小人たち〉の人魚姫をやらせたい!似合いそう。
本日も残念ながら、2幕は私の脳が疲れた信号を出してしまった。聞き取るのと味わうのを同時にやるのは能力超えがちだ。相変わらずヘンリーの屁理屈に追いつけないし、周辺人物の状況も正確には把握できない。
小難しい言葉を把握してから「味わう」オンリーで見たかった。
折良く今日の夜公演から台本を販売開始すると言う。見たのはマチネだが、ソワレの1時間前まで待って台本を買うとしよう。
(その後数日で売り切れてしまい、再入荷しても最後までは持たなかった様子で、タイミング良く買えてよかった。)
6/7
予定外の密航で追加。
評判悪いのに見るの?と人の観劇を止める勢いだったのに3回目。(最後ではない)
相変わらず見応えがある。
こうなると初めはどんな舞台だったのか気になる。最初の3日間でだいぶ変わったらしい。ドリアンが飛行機に乗るシーンがあるが、初日しかなかったので2日目が初日のユガン君は乗れなかったと言っていた。
開幕直後のバージョンを特別に復活させて欲しい。逆に見てみたい!
今日はジェウン・ヘンリー。とてもソフトな感じだ。初演ではバジルを演じたわけだが、そちらの方が似合うような気もする。
ユガン君は子供みたいなドリアン。
飛び出して行くくせに、不安な時は保護者がいないとオロオロしちゃうみたいな雰囲気。保護者とはもちろんバジルだが。
マッコンなので挨拶があった。MCを担当したが、台本にある決まり文句の部分を適当に早口でまくし立てたのが笑える。
ユガン君はデビュー時期に「(現代風)ドリアン」を他の作品で演じたこともあり、「ドリアングレイの肖像」を題材にした作品は自分にとって特別な意味があるのだそう。
好きなタイプとは違うのに、なぜ私はムンユガンが好きなのか?ちょっとお風呂のアヒルみたいな顔してるかも?(この写真は若干いつもと違うけど…)
6/8 千穐楽
もう一度見たかったヒョンソク・ドリアンと、危うく逃すところだったジュニョン・バジル。
ジェボムさんヘンリーを見られなかったので残念だけど、3演に期待する。←えっ?
正直、美貌で言ったらバジルとドリアン、どっちが綺麗?てな感じだけど(笑
ヒョンソクは歌声とその情感が素晴らしくてドリアンの魅力が溢れすぎ。OSTを出してください!!!
バジルは低音の魅力。
そんな人たちが繰り出す "Life of Joy" は圧巻!
数日経っても"Life of Joy" が頭の中を駆け巡る。本当に凄かった。
「情感」の話をすると、初日には何の感動も覚えなかったバジルの死後にドリアンが歌うナンバーが、ヒョンソクの手にかかると(喉か?)、全く違う響きで迫ってくるのでびっくりした。極めてドラマチック。
ヒョンソクの最後の挨拶、気が利いている。
「この役を任されるとは想像もできなかったし、本当に特異で独特な目を持つイ・ジナ先生と関係者に感謝する」
「特異で独特な目」って。
確かプログラムにも似たような記述があったはず。
Q. 準備中のエピソード、もしくは記憶に残る瞬間は?
A. 俳優全員が、台本に書かれているので仕方なく、僕を見て美しい、と熱演してくださいました…
本人もびっくりなキャスティングが天才的。
私が見たかった聞きたかったユ・ヒョンソクを舞台に上げてくれて、私からもありがとう。
ハマったとさえ言えるこの作品。作風が大学路的と言うか…解釈遊びのし放題なところが沼。
俳優ごとの違いにもワクワクする。
絵を見つけて大ショック中のバジルを見つけるユガンドリアンはひたすらすがるようにキス。
一方、ヒョンソクドリアンは、これで楽になれる!ってぱっと表情が明るくなるのに、自分を見るバジルの歪んだ顔を見て、何でだよ!みたいに数%の不満が漂って、キスをするのも自分が楽になりたいからバジルを誘惑するかのようだった。
やっと細部を楽しめるようになってきたのに、もうおしまい。
公演が終わってから恵化的公演生活の「ドリアングレイ勉強放送」を見たら興味深いことを色々喋っていて、ちゃんと先に見ておくべきだったと後悔した。
飛ばし見してしまったけど、いくつかある「ドリアン・グレイの肖像」の修正版のうち、作家がもとにしたのは最終版ではない、というような事も言っていたかもしれない。(ワイルドが最初に書き上げたものを読んでみたい。探せばあるんだろうか?)
「絵を切り裂く場合は、あくまで自分のしでかした事から目を背けて、何か(自分とは離れた)向こう側にあるもの、責任回避の感じが強いとすると、自分自身を断罪する場合は自分が罪を受け入れる、もう終わらせたいという意味だと思う。」
ミュージカルでは観客にドリアンを哀れに思って欲しかったらしい。
私も、オスカーワイルドが書いた「ドリアン・グレイの肖像」におけるドリアンと、ミュージカル〈ドリアン・グレイ〉のドリアンは異なるキャラクターなんじゃないかと思っていた。全く違う選択をするから。
原作でドリアンは醜く変わった絵を切り裂く。まさか自分が死ぬとは思っていなかったんじゃないか?(原作は50年くらい前に読んだのでほとんど覚えていないけど)
ということは、このミュージカル〈ドリアン・グレイ〉は〈ワイルドグレイ〉で語られる「ドリアン・グレイの肖像」とは似て非なるものと思っていた方が良いかもしれない。(ややこしい!)