3/1
眠くて気を失った22年の〈ハムレット〉以来、2回目の国立劇場ヘオルム。
競馬用の「騎手ヒューマノイド」コリーは、研究員のミスで開発中の学習用チップを装着され、千個の単語が分かるようになる。
言葉が分かるとは、物事を認識できて、思考できて、好奇心を持てて、学習できて、とにかく人間らしさの基本だなーと思った。(読書だいじ)
反面、愛しているのに本音を分かり合えない家族。思いやりに邪魔されて、あるいは勝手に思い込んで、伝えることを怠ってきたために見えないもの。
家族とは近そうで遠い、時には他人より厄介な存在だ。言葉を持っていても、ちゃんと使えないと誰にでも起きることだし、私にも覚えがある。
そんな葛藤がコリーと馬のトゥデイに関わることで変化していく。
物語の全ては最後のコリーの一言に集約されている感じ。グサっと刺される。
ストーリーには動物の消費に対する批判とか、交通弱者の移動がいかに保証されていないかの訴えが含まれていて(学校推薦図書の味わい)、韓国の交通施設や道路の整備状況は日本人の目にはびっくりするほど不十分だからなー なんて考えた。(それでも例の車椅子デモの頃から、駅のエレベーターは確かに増えている)
作品全体のヒューマンな感じがミュージカル〈アーモンド〉に似ているかも。
正直言うと、1幕は期待したほどじゃなかった。(期待値がかなり高かったので。) 人間の話にシフトしてから盛り上がってきたと思う。
たくさんいるキャストの中で、知っているのはカンヘインだけ。
コリーは声がふんわりしていて彼の純粋さとマッチ。最初のまあまあレベルからぐんぐん乗ってきて後半はとても好きだった。
ヨンジェの声は出ているんだけど、言葉が良く聞こえなくて音響のせいかと思いきや、カンヘインはスッキリはっきり感情もビンビン伝わってきた…ので…
素敵な声のお父さんに見覚えあると思ったら〈ディルクーシャ〉のブルースだ。
ところで、消防士のお父さんがそばにいるのは、そういうことだったのか。お母さんの心うちがすごく伝わる。
馬のトゥデイが良くできていてびっくり。四つ足のロボットが出てくるのにも感心しきり。
1幕は騎手ロボットのコリー中心の話なので、どうしても馬上で歌うことになり動きがない代わりに、周囲で群舞の構図。アンサンブルが踊る!踊る!
それにしてもアンサンブルの人数の多いこと!作り方の部分で、ここまでの大舞台よりもう少しこじんまりした貞洞劇場くらいの規模の方がストーリーに相応しい気がした。1幕を散漫に感じたのも、それが一つの原因かもしれない。
当日券で購入。国立劇場系は敬老割で50%。
キャスボ横に提示されたQRコードでデジタルプログラムを無料ダウンロードできた。太っ腹。