ティーザー
スランプに陥った傲慢な天才ピアニストのスティーブンと、奇人変人の教授マシュカン。
2人がぶつかる不協和音にクスクス笑っているうちに、ある瞬間音が合ったと思うと、だんだん美しい和音が奏でられていくようで、2人の距離が縮まっていくのを見ながら心が温かくなる。
しかし、作品のモチーフは「悲しみ」と「喜び」の結合。
近づくかにみえた2人が向き合わなければならなかった「悲しみ」。その「悲しみ」の深さと鋭さが苦しくて、気軽に「観て」とは言えないような気がするほどだった。
「悲しみ」と「喜び」の片方が高揚すると、反対側も一緒に高揚する。
物語は極限の苦しみを垣間見させるが、その深い所から浮上していく喜びも同時に味あわせてくれる。
立場や年齢を超えた友情の物語だが、「浄化」という言葉がしきりに浮かんだ。過去の苦しみや悩みが浄化されて未来に希望が見えてくる物語。そんな風に受け取った。
Aバージョンのペアは、
ナム・ミョンリョル/チョン・フイ
ミュージカルではない「音楽劇」。物語を進行させる装置がシューマンの歌曲集「詩人の愛」なので、全体を通じて美しい音楽が流れている。
ボーカルトレーナーであるミョンリョル・マシュカン教授はあまり歌がお上手とは言えず、フィ君はピアニストにしては上手すぎ?
感情表現が乏しかったフィ・スティーブンは日が経つにつれ感情が豊かになっていき、ミュンヘンへの旅について語る熱情は全くの別人のよう。この辺りから〈ワイルド・グレイ〉〈メアリー・シェリー〉での姿が想像できる気もする。
Bバージョンのペアは、
ナム・ギョンウプ/イ・ジェギュン
Aのペアを先に観た時に「最高!」と思っていたが、こちらのペアを観るとやはり「最高!」
こちらの教授はちょっと歌える感じで、スティーブンはピアニストだからこの程度だよねと納得のレベル。
でもそういう表面的な事ではなくて、人物造形がそれぞれ異なって魅力的なので、本当に甲乙つけ難く全員面白い。
今年の舞台と今年のキャスト。楽しみでならない
劇場で聴くピアノの音色は、配信とは比較にならないはず。
インターパークとYES24のグローバルで販売しているので、ばっちり予習したら大学路のYES24ステージを是非訪れてください! 12/10から2/19まで。
訳はちょっと頑張った。いや、だいぶ頑張った!
制作会社から、話題に出てくる政治家や音楽家の名前と背景の解説が出たので助かったが、参考にする本文のテキストが見つからず、相変わらず得意の想像力と創造力を発揮せざるを得ないものの、そうするとこの素晴らしい作品を汚すような気もして…でも確実に以前より理解できたし…ということで
INDEXに行ってみてくださいませ。