(既に観覧して背景知識のある方にお勧め)
ユ・ナグォン(クレア役)はリーディング段階からメリーとして参加。メリーそのものだと絶賛する共演者たち。「メリーを演じる姉さんたちの演技が不満だろ?」とドビンにからかわれて頭を抱える。
Q:各キャラクターを演じる時、最も重点を置いたポイントがあるか?
(クレア)メリーに対する私の真心。本心からメリーを愛して、配慮して、義理を尽くさないと、後の話が続いていかないと思った。
ナンバー「내 삶을 훔치고 (私の人生を盗んで)」の中で、姉に向かって「언니가 뭔데 나한테 그런 말을 해 (お姉さんが私にそんなこと言えるの⁉︎)」というセリフがあるが、その言葉を出すのが難しかった。
クレア自身が「陰気な天気」という単語を使うとか、メリーの世話を頼まれた時「私も出かけるのに」と言ったり、姉のことを考えない世間知らずの妹とも考えられるが、そう考えていくと「お姉さんが私にそんなこと言えるの⁉︎(傷ついた)」という気持ちにならなかった。練習の時。
これじゃだめだ。メリーを最大限配慮して愛する気持ちを持って最後まで行かないと!そこに1番ポイントを置いて演技している。
(パーシー)まず彼を理解しようと努力しながら演技した。演技しようと人生を生きるのではない。生きていく過程である人を好きになって良い関係を築いていくみたいに、メリーに初めて会う時はメリーを心から愛そうと努力する。本気で演技するタイプだ。
(バイロン)台本を見たときバイロンを演じなきゃ、それだけを考えた。なぜなら俳優としてこんな風に思い切り、乱痴気騒ぎして、やりたいことができるそんな役は多くない。
自慢になるが、僕は演技スペクトラムが広い方だ。(隣から何言ってんだ!とツッコミ)
ヨナスとハンスの両方を演じて、憤怒から上がったり下がったり。そういうのも好きだし。
バイロンはヴィランだと思った。でもそうなるしかない気の毒な理由を作って、行動を見ると殺してしまいたくなるが、だからそうしたのかと理解できる、かわいそうなやつだったのか、そう見えるようにと考えた。
(ポリドリ)最終台本を見て考えたのは、メリーの手助けができる人物の1人だと思った。この公演では。
公演後にメリーが誰よりも観客の心に残って、メリーと一緒に泣けるべきだと思った。そのためにメリーをサポートしないと。補助するためにポリドリが居るような居ないような、重厚にメッセージを与えたり引っ込んだり。
例えば野球で1番輝くべきなのは選手なのに、監督とか審判がミスをして記憶に残ることがある。だから僕は審判の役割を果たしたい。だからメリーを際立たせたい。
(MC)それは理解できるが、ポリドリは全く別の役割に見えることをする。それに対する質問が多い。
Q:ポリ役が怪物も演じるが、照明が緑なだけで特に他の衣装ではない。初めて見たときこの部分が分かりにくかった。クレア役も何役も兼ねているが衣装を変えたりして表現していた。他の衣装に変えない特別な理由があるのか?
(ポリドリ)演出家のはっきりした意図があると思う。最初にこう言われた。この公演のフォーカスは「全員が怪物だ」ということ。全員に内在する怪物を表現したい。その代表がポリの中の怪物だ。
正直言うと、この怪物をどう表現するかとても悩んだ。衣装を変えるのが実際1番簡単な方法だが、最後まで悩んだ。別の存在ではなくポリの中にある怪物なのでこういう結果になったのではないか。
特別な照明を当てると反射するような衣装も考えたが、思ったほどの効果がなくてボツになった。
Q:ミュージカルで自分の怪物から目を背けるなという言葉が出てくる。各キャラクターの中にいる怪物はどんな形象だと思うか?
(パーシー)パーシーの怪物は「責任」だと思う。ナンバー「인생은 공포소설(人生は恐怖小説)」で人生で最も怖いものとして「責任」を上げる。
誰でも愛することができるが、その愛にはある程度の責任が必要。だがパーシーはその責任を果たせない人物。とても恐ろしくて向き合えない怪物だと考えている。
(バイロン)バイロンは孤独な怪物だ。寂しい人間ほど大騒ぎする。自分の別荘に人が来て嬉しくて、楽しもう、酒を飲もう、薬もやろうという具合に。ひとりでいたら文が書けなくて頭を抱えているだろう。
(MC)バイロンは天才?
(バイロン)天才芸術家、天才文学家。それとこんな話もある。バイロンを見て女性が気絶した。
(クレア)あまりにも素敵で、見た瞬間気絶したそうだ。
(ポリドリ)単なる噂では?
(バイロン)実話だ。
(パーシー)具合が悪かったんじゃ?
(ポリドリ)ポリドリは腹黒い怪物。他の人物は全部堂々と何かをするが、ポリは違うふりをしながらこっそり文章を盗み見てばれたりもして。1番悪い奴?
誰でも悪いことをする前に善悪の基準は持っている。バイロンに嫉妬しているので、バイロンに勝ちたい欲求もあり、思わず一度盗み見て、それが2度3度となり、いつしか当然のことになり。それで個人的に、悪事にはそもそも手を出してはならないと思ったりした。
(クレア)私も実は孤独な怪物だと思ったが、少し変えて、へつらう怪物。
クレアは寂しさを嫌う人物。なので姉とパーシーが逃げる時も、1人残されるのに耐えられず付いて行く。カップルの間に割り込んでも余計寂しいのに。
バイロンに会うとまた取り入ろうと努力するから、へつらう怪物。
(MC)なんだか慰めたくなる。違うよクレア。
Q:最初に出てくるカエルの電気実験が中間に再びセリフも無く登場するが、理由は?メリーがそれを考え続けているから?
(バイロン)演出家に聞いてきた。
「最初のシーンのカエル実験によってメリーが生と死について考え始め、周辺の人々の観察を通してその考えがだんだんと積み重なり、フランケンシュタインの小説として完成するのだが、生と死に対するメリーの考えが重要な位置を占めていたことを表現しようと蛙のシーンを中間に挿入した」
Q:パーシー、クレア、メリーはどんな経緯でバイロンの別荘に行くことになったのか?
(クレア)クレアが連れて行った。
(パーシー)1816年に3人がジュネーブを訪れた。バイロンにクレアが出会って招待を受けて行くことになった。
(クレア)クレアがまずバイロンに助言を求める手紙を書いたそうだ。クレアは文筆家ではないから、バイロンによく見せようと、文学的才能のある2人を連れて行った。
Q:メリーの母が書いたのはどんな本で、なぜ人が母親のことをとやかく言ったのか?
(クレア)メリーの母は女流作家で、当時かなり進取的で進歩的なフェミニズムの本を出した。女性の地位は男性より下で、弱く、夫がいなければ女性は飢え死にするしかない時代だった。しかし男女は平等だと主張したので世論で叩かれたそうだ。
Q:パーシーが買った家は担保に取られて逃げたのにメリーが戻ってきた。その家はずっと空き家だったのか? それともまた買ったのか?
(パーシー)ミュージカルでは限られた時間内で表現するが、とても時間が経っている。状況を解決してから戻ってきた。
Q:バイロンが薬を探す途中で見つけた小説は、バイロンが書いて捨てた文をポリが拾って自分のものとして書いた文なのか?
(ポリドリ)設定としては、その前のシーンでポリがバイロンの捨てた文を拾って自室に戻って書き写す。参考にするのだろう。そのまま本棚に置いたのをバイロンが発見する。
(MC)私も観覧しながらその部分が紛らわしかった。バンパイヤは書き写した物?
(バイロン) 質問の意図は、バンパイヤの素材は誰のものかということのようだが、バイロンは素材として出しただけで盗作までとは描いていない。でもそう見えてしまったのか?
(ポリドリ)ポリがバイロンに投げ渡す本がバンパイヤだから…
(バイロン)でも時間が…最初の場面で…(話し合う2人)
(MC)ただ今皆さんは俳優の解析作業をご覧になってます。
(ポリドリ)もう一言だけ付け加えるなら、実際にはバンパイヤのような話がとても多くあったそうだ。ポリが自分の想像で書いたと言うよりも、口伝を小説に仕上げたもので、バイロンという魅力的なキャラクターからモチーフを得たとも言える。
バイロンの姿を見てインスピレーションを得て書いたのもあるが、バイロンの技法をたくさん参考にしたのではないだろうか。
Q:回転舞台を練習するときのエピソードは?
(バイロン)練習中の問題は回るフリをしなくちゃいけないこと。舞台では手動で回すので、舞台裏ではすごく苦労している。
速度がゆっくりではない。両足に力を入れてよろめかないようにしなければならない。
(ポリドリ)たくさん練習したから、担当者は本当に大変だった。セットも載っているし。微妙に船酔いする。
(パーシー)回転舞台が単に登場退場するだけでなく、時計回り(右)だと現在、反時計回り(左)だと過去を区別するから…それを注意して見ると良い。
(MC)それは気付かなかった。
〜後編に続く