後から反芻すればするほど見えてくる、セリフの裏の隠された意味。ジェイの言う「元どおり」は、宇宙に行く直前、複製と交代した時点を言ってるんだと理解していたけど、それを通り越してウンギが事故に遭う前の本物同士の関係を言っている、とか。
自分が戻って来て、部屋を出て行こうとするウンギに本物ジェイは言います。「行かないで!これじゃあの時と同じ。あの時私がどれほど辛かったか!」
続くウンギの言葉。「自分はたった3ヶ月も我慢できないくせに、君は僕を1年も騙していたんだぞ」
違うんですよね。ウンギは多分事故の後3ヶ月くらい病院にいたのかもしれない。その期間の事だと思ってます。自分が死んだのを知らないから。
ジェイの辛さはウンギを永久に失ってしまったことを言ってるんだけど。しかもケンカして飛び出して行ったのが原因なんだし。
「僕は一年前の僕じゃないし、僕が変わる1年を与えたのは君だ。」ウンギのこの言葉が記憶に残ります。同じDNAをもとに全く同じに作られたとしても、作られたその瞬間から独自の経験をして少しずつ変わっていくのが人間じゃないですか。人間じゃないけど。
ジェイの誤算は複製ウンギの時間は止まっていると思ってしまった事じゃないだろうか。そして、そもそも死んだ人を取り戻せると思ったこと。
いや違いますかね。取り戻せたらいいと思ってあがくんだけど、最後には無理なことを悟って彼の死を受け入れるから。大切な人の死を受け入れるって人を愚かにするくらい辛いことなのでしょう。
最後のシーンの2人が本物なのか、複製なのか、迷ってしまったわけですが、どこか別の宇宙の別の2人ってのを聞いてナルホド〜と思ったり。観た人それぞれの解釈が全部正解なんだと思います。
この作品を劇場で観たその時は、押し寄せるストーリーに、なんだこれ?今私が観た話はなんだったの⁉︎と衝撃を受けた第1段階。
ちょっと待って、頭の中を整理させてちょうだい、と必死に理解につとめる第2段階。
一応ストーリーを理解して、様々なセリフや行動に隠された意味に気づく第3段階。
第3段階がやたら長く続いております。一粒で3回美味しい作品でした。
レビューにもあった通り、舞台美術はとても綺麗なんですが、場所の移動や過去と現在が少し分かりにくいところがあったかな。
ナンバーは美しくてとても好きです。ずっと聴いています。
〈こんなに普通の〉シリーズはこれで完結。可笑しいのはここでの人気が全然無いこと。
だけどいいんです。自分勝手ブログだから