こんにちは!ヒョニです。
今日は〈こんなに普通の〉を取り上げます。
公演を観るたびにその日のキャスティングボードをインスタに上げるんですが、〈こんなに普通の〉を上げたらたくさんの方からレビューの要請が来たんですよ。
やはりこの作品が創作ミュージカルの初演だし、もう作品をご覧になった方は共感されると思うんですが、これを見た後に考えさせられることも多いし、話し合いたい部分も多いです。
では始めてみましょう。Go,go!
先程申し上げた通り〈こんなに普通の〉は創作ミュージカルで2人劇です。原作はウェブ漫画で、オムニバス形式で構成され、その中の「ある晩彼女が宇宙で」を元にミュージカルが作られました。
ですが、ミュージカルと漫画で違う部分がかなりあります。この点は後半でもう少し詳しく扱うことにして、まず作品の見所を見てみましょう。
出演する人物は2人、恋人同士のウンギとジェイです。時代背景はかなり先の未来。ジェイは宇宙局に勤務し、ウンギはロボットを修理する仕事をしています。
ジェイは幼い頃から宇宙に行くのが夢でした。宇宙が大好きで。そのために一生懸命情熱的に努力して生きている人物です。
ウンギはどんなことが好きかと言うと「普通の1日」を好きな人物です。
ジェイとウンギはよくあるカップルのようにいちゃいちゃと仲良く過ごしています。しかしそこにある事件が起こります。
ついにジェイが宇宙に出るチャンスがやってくるのです。1年間宇宙に行ってくると言うのですが、ウンギはそれを簡単に受け入れることができません。
1年と言う時間はある意味短いですが、愛する人と離れなければならないと言う意味では、とても長く苦しく辛い時間でもありえます。
こうしてジェイが1年間宇宙へ行くと言ってから様々な出来事が起こります。
皆さん私がこうしてあらすじを話す時は、作品のシノプシスに出ていることを基準に、ネタバレしないように私なりに基準を決めているんですが、この作品に関してはチケットサイトに出ているよりもっと少なめにお話ししました。
なぜならシノプシスにもネタバレになるような内容が結構書かれているからです。なのでここまではネタバレを完全に排除してお話ししました。
ほんのちょっぴりのネタバレも嫌だと言う方はここでストップ。以上で終わりにしてください。
多くの方がこの作品を難しいと感じるかもしれないし、一度見ただけではストーリーが入ってこないかもしれません。ストーリー自体を理解したとしても部分部分で「これについてはどう思う?」と問われた時に途方に暮れる部分があるかもしれないと思います。
難解で不親切だ、というのとは違います。作品にどんでん返しがとても多いんです。
ところでこの作品にどんでん返しが出てくる理由、観客たちが作品のストーリーをもっと受け入れ易くするためだと思います。
どんでん返しの内容が私に押し寄せてきた時、正直な話、劇場で、客席で、完全に受け入れることができなかった気がします。感情とか、ストーリーとか、そういうことが。
ですが、内容と人物がそうであるしかなかったことを理解した後は、公演が終わってからじっくり噛みしめるほど胸が痛む…そんな作品です。
だから皆さんが初めて見に行くときには、逆に原作漫画を読まずに行くことをお勧めします。
原作漫画を全部読み終わっていませんが、どの部分が同じでどの部分が違うかは知っています。映像でもご紹介する事はしません。
皆さん知らずに行くべきなので、どんでん返しを初めて見るその瞬間が重要だと思うからです。漫画を読んでからミュージカルを見たら、見ている最中に漫画が重なって見えるじゃないですか。私としては先に公演を見るタイプです。
ミュージカルならミュージカル、演劇、映画、本、これらは1つの作品の中に言いたいことが込められているので、その作品だけを見ればいいと思っています。
さて今度は舞台の話に移りましょう。舞台はとても美しかったです。宇宙宇宙、星がキラキラ、そんな感じも良かったし。セリフや歌に舞台がよく似合っていました。
ですが皆さん、舞台が美しいのと良くできているのは別個の問題です。作品に合わせて良く作られているという感じが正直しませんでした。
何故かと言うと、私が1番大きく感じたのは、2人劇なのに動線が恐ろしく複雑なんですよ。そっちに出てこっちに戻ってきて、舞台の上でも登ったり降りたり。なので、いやに動き回ってるなと感じてしまいました。
舞台もそこまで親切な舞台ではありませんでした。曖昧だと感じる部分が舞台にもあって。
ではナンバーの話をしてみましょう。聞く前にお話ししたいのは、同じナンバーが繰り返される、歌詞も繰り返しが多い、同じナンバーが多い、こうした意見が多かったんですね。
でも私は…そう聞こえるかもしれないとは思います。でも「こんにちは」を何回も言ったとして、この作品ではその「こんにちは」が違う響きを持っているんですよ。
ナンバーや歌詞が同じ繰り返しだったとしても、シーンに合わせてそこに込められた感情がみんな違うと感じることができたので、その点に関して、私は不満はありませんでした。
逆に物足りない点があるとすれば、初めて見た後覚えたナンバーが無かった、その程度でしょうか。作品の雰囲気とナンバーがすごく合っていたと思います。
ナンバーでネタバレしてしまうので、2曲だけご紹介します。「こんなに普通の」はウンギとジェイが一緒に歌います。星を見ています。毎日夜空を見ながら普通の1日を分け合いたいと言う内容です。私が一番好きなナンバーです。
作品でシャガールの絵が重要な素材として出てきます。「都市の上で」はシャガールの絵の前で対話する2人が歌うシーンです。
皆さん、ここからはネタバレ満載でいきます。〈こんなに普通の〉という作品は、ネタバレしないとレビューがしにくい作品なんです。ネタバレが嫌な方はここから14:58まで飛んでください。行きますよ?3,2,1!
他の作品の場合、ネタバレすると言ってもストーリーを全部説明したりはしませんが、この作品はそれが必要です。最初の説明の続きをお話ししますね。
結局ジェイは宇宙に1年間行くことになります。でもウンギはその事実を知りません。なぜならジェイが出かける前に、自分と全く同じ姿の複製人間?複製ロボットを作って行くからです。
本物のジェイと複製のジェイは全く同じ人物と見なければなりません。全く同じ人間とは、この2人が同じ状況に置かれた場合同じ行動を取ると言う意味です。同じDNAを持ち、同じ思考をするから。
こうして複製とウンギが1年間一緒に生活するんですが、1年経って本物のジェイが戻ってきます。
ウンギは1年間愛してきたジェイが複製だったこと自体にも驚くし、複製の彼女が去らなければならない事実も受け入れることができません。
なので結局本物のジェイに別れを告げます。そしてウンギは複製のジェイの後を追います。
さてここで、再びどんでん返しです。実は、皆さん、ウンギも複製だったんです。自分が複製だとは知らなかったのですが…複製だったんですよ。
このシーン以降の客席の驚きが感じられるはずです。
1年間宇宙に行くと話した後、ウンギが外に飛び出して事故に遭うのですが、実はその時本物のウンギは死んでしまったのです。事故で。
だからジェイがウンギの複製を作りました。残された彼が寂しくて辛いだろうと思い、自分の複製を置いて宇宙へ出かけていったんです。
その後の1番大きなどんでん返しは…、私が思うにですが。
正直言うと作品の中盤までこの作品があまり好きじゃありませんでした。好きでなかった理由は、ジェイが憎らしいからです。自分の夢のことばかり考えて宇宙に行きたがって、恋人に対して言い渡すように知らせて、理解させようともしないで、自分がしたいようにだけする人に見えたからです。
ところが突然、ジェイまで苦しみ始めました。ジェイか宇宙に行きたかった理由は、自分の夢のためではなかったのです。
ウンギが事故に遭って死んでしまったので、すごく辛かったんですね。愛する人がもうこの世にいない。複製を作りはしましたが、辛さに耐えるため、そしてまた宇宙のどこかにいるかもしれない別のウンギを探すため、宇宙に行ったわけです。
そしてまた、私が見て1番驚いた部分は…。2人とも実際は複製だったと言いましたよね。でもウンギが複製だったことは、複製のジェイも知らず、私たち観客も、誰も知りませんでした。
どのシーンで明らかになるかと言うと、2人が抱き合っているシーンがあります。複製のジェイは自分が初期化されるとに思っていました。(本物の)ジェイのために。
抱擁しているんですけど、ウンギが初期化されたので「えーっ!あなたが複製だったの?」となるんですよ。
「複製だったの?」よりも、「ウンギは死んじゃったの?」にもっと驚く…。
うわ、突然話しながら悲しくなってきた。「複製だったの?」ってことは「死んじゃったの?」ってことだわ。
自分が話しながら自分で驚いていてどうする!
元に戻って話を続けると、私が今話している部分は終盤のシーンでどんでん返しになる部分です。2人が抱き合っていて、2人とも複製である事実が明らかになります。
さっき、ジェイが宇宙に行った本当の理由を話しましたよね。そのシーンが出てきます。ジェイは宇宙にいる時ずっと映像を残すんですが、それをウンギが見ることになります。
ナレーションが出ると記憶していますが、「この宇宙を全部探し回ってもあなたがいなかったらどうしよう」こんなことをジェイが言ったと思います。
この時立っているウンギは本物のウンギだと私は思います。複製ではなく。実態の本物のウンギが聞くシーンだと思ったんですよ。
そして最後のシーンの解析で考えたことをお伝えしたいです。
2人がシャガールの絵の前で立っています。2人が言葉を交わすんですが、私はここで話している2人が複製同士のウンギとジェイではなく、本物のウンギとジェイでもなく、どこかの別の人物、或いは想像、或いは別の地球で生きているかもしれないウンギとジェイなのかもしれないと思いました。
このように解析するのが、この作品にずっと出てきたセリフやなにかと良くマッチする気がするし、私が客席で見ながら受けた感覚からしても、別の宇宙もしくは想像上のウンギとジェイだと思いました。
かえって最後のシーンが本当に好きだった理由は、私たち観客に対して、2人はどこかで元気にしていると言ってくれているようだったから。癒し。ヒーリング。
ネタバレしたついでに、私が1番好きなシーンを紹介します。〈こんなに普通の〉を見ながら反感が続いて…ある箇所で、おっ、好き!となった場面です。
それまではジェイが理解できなかったと言いましたよね。だけど複製のジェイが登場した部分から、本物のジェイも受け入れ始めたようです。
足首をひねってからジェイは自分が複製だと気づきますよね。この時ジェイがウンギに膝枕してあげます。お互いを愛しげにぼんやりと見つめ合いながら、「私はあなたのために作られた。」めちゃくちゃ甘い言葉を言います。
私はここでジェイが言う「私はあなたのために作られた」という言葉が、すごく好きでした。
もちろん複製のジェイが言うんですが、2人のジェイは全く同じ人物じゃないですか。だから(本物の)ジェイも同じくらいウンギを愛してるんだなあと感じられて、ジェイを即理解。
なので私は〈こんなに普通の〉は、ジェイというキャラクターを理解すればするほど、辛く悲しい作品なんだと思います。
これまで私がレビューで語ったことを考えると、私がこの作品を好きだと言ってるのか、物足りないと言ってるのか、分かりにくいかもしれませんね。
作品自体を見ると素敵な良い作品だと思います。なぜなら今私が話しながら、若干…、皆さん私は若干そうじゃなかったですか?
レビューしながら一人で自分に営業して。話しながら営業。編集しながら自分に営業して。今日は撮影しながら自分で自分に営業されてる感じがありました。
愛する人が死んでしまうときの痛みをすべて経験し尽くす話を見た気がします。
〈こんなに普通の〉はそんな別れを通して、どのように受け入れ、どんなふうにどれほど辛いのか、そうしたことを本当によく見せてくれる作品です。それが良い作品だと言う理由です。
そして、俳優たちが本当にすごくたくさん泣きます。私が見たペアは、チョン・ウクチン、チェ・ヨヌだったんですが、お二人ともものすごく泣くものだから、見ている私がさらに切なくなる、そんな涙でした。
さて、そろそろ終わりにしようと思います。物足りない部分は少しだけ…というには話しすぎた気もしますね。少しだけよりはたくさんあります。
難しい部分があるともお話ししたんですが、皆さんがそれに怖気付いたり、難しいんだという先入観を持つ必要は全くありません。私も事前情報なしに劇場に行きましたが、ご覧の通り楽しんできましたから。皆さんが心配しなくても大丈夫です。
それでは今日のレビューを終わります。チャンネル登録とイイネを絶対に押してくださいね。アンニョーン
