長期休暇がもらえたら、私たちニースでも行く?
ニース?
うん!あんなに行きたがっていたじゃない。シャガールが死ぬ前に住んでいた街もあるって。
そうなんだ。
長めに、3ヶ月ぐらい滞在できたらいいな。朝寝坊して、コーヒーを飲んで、海岸に散歩に行って、あなたが好きな絵も心行くまで見て。
そうだな。
なんでそんなに(?)なの?
いや、だってさ。毎回そう言うけど、君が働き始めてからこの5年間、1日だって満足に休めたことないじゃないか。もう期待しないよ。
それでなんだけど…。私が今回、本当にものすごいプロジェクトを受け持ったことをお知らせします。今回だけ成功させれば、私の願い通りに長期休暇を取れるかもしれない!
ものすごいプロジェクト?
あのね、地球と全く同じ惑星が見つかったの。
なんだって?
地球と全く同じ惑星が見つかるなんて不思議じゃない?もしかして知ってる?もう1人のあなたと私が存在してるかもしれない。確率上不可能な話じゃないから。
そうかもね。
ねえウンギ、私ね、ついに宇宙に行ってくることになったの!1年間!
何なの、その反応?航空局で働いていれば、いつかは行くことになるって分かってたじゃない。私が元々行きたがっていたのもよく知っていたし。
絶対行かなきゃだめ?
今更やめられないわ。それにたった1年じゃないの。
行くなよ。
何がそんなに不安なの?ただ、おめでとうって送り出してくれない?たかが1年なのよ?
「たった」「たかが」1年かもしれないけど…
私たちが過ごしてきた時間に比べれば、1年くらい離れていたって何でもないわ。他の人は行かれなくて大騒ぎしてるわ。私がやっとの思いで手に入れたチャンスなのよ。わかるでしょ?
…おめでとう。君が夢をかなえられることになって、僕も嬉しいし誇らしいよ。
皮肉はやめてよ。どこに行くの?
考える時間が必要だから…
何をどう考える時間よ?
僕が今君から受け取った通知を、僕も理解する時間。
今ここで私と理解すればいいじゃない。
嫌だよ。
あなたって、いつもそうよ。何か問題があるとなんでいつも逃げるのよ?
(続く)