「너를 위한 글자」
"When you close your eyes"
ちょっと横道に逸れますが、感動して身近な人たちに熱く語る結果になったので、記録をこちらに。
本当のほんとうに❗️暖かくて良い作品でした。じんわり感動系が一番好きなので「キダリアジョシ (足長おじさん)」が大好きですが、それ以上に好きかも。
小作品系はジーンと暖かくなる作品が(も?)多いですよね。わたしが観た中では…。
「もしかしてハッピーエンディング」「女神様が見ている」「サンキューベリーストロベリー」「ストーリーオブマイライフ」「ホープ」…
感動的な物語…と言っても、個性的なチェルシャ、ロボット、戦争中で無人島、幽霊?、ユダヤ人収容所まで!どうも少し変わった設定が多くない?
この作品には普通の人しか出てこない。(多少変わり者が約1名。) 日常の物語が小説を読むかのようにゆったりと流れていく。
幼い頃、隣同士だったトゥリーとキャロル。昔キャロルと赤い屋根の上で小説を語り合っていたドミニコ。
トゥリーは故郷を離れずに、へんな発明をしながら一人静かに暮している。
故郷の、昔と同じ隣の家に戻ってきたキャロル。小説家になるのが夢だった彼女はある秘密を抱えているが、明るく振舞っている。
ドミニコは新進の小説家。実は自分の描きたいような小説ではないのにヒットしたのが処女作。ジレンマを抱えている。次作の執筆のため一時的に帰郷中。昔からキャロルが好き。
トゥリーはうるさいキャロルが戻ってきたので迷惑顔。木々の擦れるくらいの音量で暮らせと要求したりする。キャロルは面食らうものの、なるべくそうしてみるわ〜と明るく答える。
実際は相変わらず、やかましい暮らしぶりのキャロル。発明品のランプが点かなくなるが、キャロルが音をたてるたびに灯りが点くのでトゥリーは不思議顔。慌てて謝りに来たキャロルに、大丈夫気にしていない、そのままでいいと答える。
トゥリーの気持ちが緩んだのかとキャロルがドアの修理を頼もうとすると、そこまで大丈夫ではない、人に迷惑をかけるな!とドアをピシャッと閉めるトゥリー。
2人のやり取りの中にあるこのエピソード。トゥリーは "そこまで大丈夫ではない" のだけれど、キャロルのたてる騒音がランプを点灯させるように、彼の心も明るくなっていたような気がする。なぜランプが点くのか、なぜ心が明るくなるのか、理由は分からないけれど。いつのまにかキャロルが気になるトゥリー。
暗闇が怖いと書いたキャロルの手帳を読み、例のランプをプレゼントするトゥリー。喜ぶキャロルの姿に、亡くなった母親の姿が重なる。父親が去ってから笑顔の消えた母親の笑う顔が見たくて作り続けたおかしな発明品。キャロルは母親と同じように喜んでくれた…。
いつか男2人はキャロルを巡って争うように。そのさや当てぶりが微笑ましくて笑える。
昔のように小説について語り合うことにしたキャロルとドミニコが「夕立」をテーマに話していると、気象学的な解説で邪魔をするトゥリー。文化系と理科系の戦い。
やがてキャロルが失明することを彼らも知ることになる。
実は幼い頃、キャロルが喜ぶから小説の話をし、彼女のために文章を書いてきたドミニコ。ドミニコは自分の今の気持ちを、ある青年の物語に託してキャロルに読んで聞かせる。君の手を取ってあげたい。一緒に歩きたい。キャロルは感謝するのみ。片思いだと悟るドミニコ。
この時ドミニコは正面切って「好きだ」と言わないし、キャロルもはっきり拒絶する訳でもない。言葉に表された以上のものをお互いが感じ取ってそれで十分な2人。「君の幸せだけを祈っている。一歩下がって見守るよ」とドミニコは自分の想いを噛みしめる。
これをまどろっこしいと感じるのか、奥ゆかしいと感じるのか。私は後者でした。
反対にキャロルの初恋の人が自分だと最後まで気付かないトゥリーはご愛嬌。
トゥリーは目が見えなくなるキャロルのためにタイプライター開発を決心するが、可愛い火花を散らしてきたドミニコに協力を頼み、ドミニコもキャロルのために発明してくれとトゥリーに要請する。
それぞれ悩みや悲しみを抱えて生きている3人が、お互いをいたわり合い応援し合う姿に暖かい感動を覚える作品。
例えばキング・アーサーのように、飛び出してくる強烈なナンバーでは無いけれど、(多分)ピアノとバイオリンの伴奏に乗って美しく歌われるナンバーたち。その時々の3人心情にぴったり沿った音楽で、自然にセリフの延長のように感情を届けてくれる。
小さな舞台の上に様々な空間が表現されているセット。イタリアの海辺の田舎町という設定で、セットの陰から後ろの幕に描き出された海が見えたり、2人の家やカフェが可愛いくて、それにも癒される。
さて、ピルソクさんの説明は要らないと思いますが、あの滑らかな声は健在。とにかく可愛さが炸裂!
イ・ジョンファさんは、ジバゴの奥さんとジキハイのエマしか観ていなくて、良妻賢母型の穏やかな優しいイメージを持っていたところに、騒がしくて元気のいいキャロルを自然に演じていたのでビックリ!声質も変えて歌っていたと思います。凄く芸達者な女優さんだったのね!
エノクさんは初めての観覧。チケット引換の時、彼のポストカードをくれたので、ちっ!と思ってしまったことをお詫びします。トゥリーと違って落ち着いた大人の男性(でも恋のさや当ては中学生レベル)を安定して演じてました。
エクスカリバーのように十億円以上費やした豪華な舞台も素晴らしいし、こうしたこじんまりした濃密な舞台も違った魅力で楽しませてくれるので、どちらも捨てがたい。
9月1日までYES24 Stageで上演。書いているうちに感動を思い出してしまった!一度だけで終わらせるには惜しい作品!2回のスワッグエイジのうち1回をこっちに回せば…うーーん。悩みは続く。