50年以上ミシュラン3つ星を獲得し続けるトロワグロの唯一の海外支店が閉店 | じきの食歴

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世の中には、美味しいいもので溢れている。
そんな美味なる料理やお酒の記録を食の歴史として記しておこう

ハイアット リージェンシー 東京の「キュイジーヌ[S]ミッシェル・トロワグロ」。
フランスの本店は50年以上ミシュラン3つ星を獲得し続けており、唯一の海外支店であるこちらのお店も2つ星を獲得し続けていたのだが、おしまれつつも年末に閉店してしまうこととなった。
実は日本と縁の深いオーナーシェフのミッシェル・トロワグロ氏は、その父親であるピエール・トロワグロ氏が1967年に銀座のマキシム・ド・パリ」の初代料理長に就任している。
父を通じて、日本の文化、日本の食材について知見を深めていたミッシェル・トロワグロ氏は、いち早く日本の食材や旨みといったものを取込み、ミシュランの星を取り続けることとなった。
そんなミッシェル・トロワグロ氏が、東京支店の営業期間中で最後に来日する日に運よく予約が取れたので、イタリアンの巨匠である山田宏巳シェフと、レセンシェルのオーナーパティシエである牛島源希さん達を誘って訪問してきた。
当日は、最終来日日ということもあり、オーナーシェフのミッシェル・トロワグロ氏と次男のレオ・トロワグロ氏が料理の合間に各テーブルを周って挨拶にこられたのだが、タイミング良く、トロワグロ氏の友人であるKさんが自分達をトロワグロ氏に紹介するためにやってきてくれ、色々な話をすることができた。
山田シェフがイタリアンのシェフだという話から、イタリアの女性は怖いとか…実は、トロワグロ氏の母親がイタリアの方だった(笑)
料理についての感想とかも色々お話できたのだが、次の料理がでてきて話は終了。だが、その後も折を見て話かけに来てくれた。

そんな特別な日の料理は、「トロワグロ」のスペシャリテから最新の一品までを堪能できるという特別コース。

「ひとつまみの喜び」として出されたのは、3種類のフィンガーフード。
1つ目は、大根の薄切りにオレンジゼリーを入れ、その淵に海苔のパウダーを付け、中央にはワサビを添える。
見た目は、まるで、パンジーの花のようで可憐だ。オレンジとワサビの組み合わせが実に良い。
2つ目は、ジャガイモをスライスしたものをカップにして、その中に玉ねぎのペーストを入れ、黒トリュフのベーストを乗せたもの。ジャガイモな、いわゆるポテトチップスのようなもの。当然たまねぎとの相性も良く、トリュフの香りが旨みに奥行を出す。
3つ目はシンプルに、フォアグラムースを揚げたもの。
なめらかにしっかりと裏ごしされたフォアグラが、舌の上で膜のように広がっていく。


パンも種類出た。
1つはキノコ型のブリオッシュ。見た目がオシャレだ。
もう一つはカンパニューユ。ガリガリではなく、ソフトタイプ。


「分かち合う楽しみ」
スズキの薄切りとワカメを交互に重ね、柚子パウダーをかけたもの。
恐らくシート状に大きく作られたものを、各自の皿に出す時に切り分けたのだろう。
1つの大きな料理を「分かち合う」そういった楽しみを演出しているのだと思われる。
非常に上品な味だし、ワカメの旨みを使うなんて、実に日本人好みの味だった。



「私たちを繋ぐもの」
持ってこられたのは、丁寧に編み込まれた紐状の大根。そして、その下には大量のキャビアが忍ばされていた。
大根は、薄味のヴィヨンで煮込まれており柔らかいのだが、大根の繊維に沿って切ってあるため、ちぎれることなく編み込まれている。キャビアも、なんらかの味付けがなされているようで、それほど塩味は強くない。むしろ、本来の魚卵としての旨みを感じるぐらいだった。
白と黒のコントラストもまた見事だった。



「オーセンティックなサーモンのオゼイユ風味」(鮭のムニエル)
トロワグロのスペシャリテ。この料理のためにつくられたとも言われている平らなスプーンでいただく。
薄いサーモンをレアにソテーし、オゼイユという少し酸味のあるハーブを白ワイン、クリーム、レモンで煮込んだソースを合わせる。仕上げに、レモンの皮の粉を振りかけられており、クリームの甘味とコク、白ワインの深み、レモンの酸味と香りが一体化し、そこにオゼイユのアクセントが加わり非常に完成度の高いソースとなっている。
サーモンも、低温調理されており、その薄さも相まってとろけるような食感。
思わず唸ってしまうような旨さだった。



「牛のサーロイン ソースヴェール」
最初にメインにトリュフをトッピングしますかと聞かれていたので、当然のように全員がトッピングを希望していた。その料理がこれだ。
先週まで白トリュフがあったのだが、今週から黒トリュフになったとのことで少々残念でもあったが、その分しっかりと肉に乗せてもらえた。
グリーンのソースは、パセリ、アンチョビ、ケッパー、ビネガー、マスタード等で作られているようだ。他にもいくつか入ってるようだが、そこまでは分からなかった。
レアっぽく焼かれた飛騨牛に、苦味、旨み、辛味、酸味等の複雑な味が加わることにより、王道のフレンチの片鱗を垣間見た。



「セルからシュクルへ」
デザートとして出たのは、ゴマとヨーグルトの組み合わせ。
上の網状になっているものが、ゴマをベースとしたもの。
中央には、ドーム状になったものがあり、それもゴマベースなのだが、中にヨーグルトのソースが入っている。
ゴマとヨーグルトの酸味の組み合わせが、実に絶妙。
以前、旨いゴマアイスを食べたが、バランス良くすると、ゴマは乳製品に実にマッチする。



「小菓子」
小菓子は3種類。
チョコレートのボールは、中にナッツ類を砕いたものが入っている。さらにその中には、クリーム状のものが入っており、全体が一つとなった時、非常に上品な味へと変化する。
アールグレイの マカロンは、中にオリーブオイルが使われている。
オリーブの爽やかな香りが、マカロンの甘さを中和させ、いくつでも食べれそうな錯覚さえ引き起こす。
ピンク色のものは、ラズベリーの他、赤ピーマン、ピスタチオも用いられてる。この組み合わせも非常に面白く、そして旨い。
かるく降られてる胡椒が良いアクセントとなっていた。



「フロコン」
Floconで、雪の結晶という意味。酸味のあるムースの上にメレンゲを焼き固めたドームが乗せれている。そこには、ラムネ菓子のようなものが取り付けれており、アクセントとなっている。
見た目もかわいらしく、どうやら新作のケーキだったようだ。


そして、最後にお茶で締めくくる。

自分は、定番のコーヒーを飲みながら余韻にふけっていると、再度トロワグロ氏がやってきた。
なんと、トロワグロ氏がこの日のために作成されたという、ミニ写真集をプレゼントしていただいた。
カラーコピーしたものを閉じただけの即席のものだが、嬉しいではないか。
中には、この店がオープンしてからの様々なシーンでの写真や、各種料理の写真等。

なお、店内には、オープンした時にミッシェル・トロワグロ氏が書かれたサインと、その父親であるピエール・トロワグロ氏のサインが書かれた柱がある。

今回、他の客が居ないときに、そちらの写真も撮影させていただけた。
年明けには、アラカルト形式の別の店になるようだが、こちらの柱は、やはり無くなってしまうのだろう。
最後に、その柱にそっと触れてみた。
オープンして13年、重ねた年月のぬくもりのようなものを感じた。

 

 

 

 

 

キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロフレンチ / 都庁前駅西新宿駅西新宿五丁目駅
昼総合点★★★★ 4.5