昨年末、惜しまれつつも閉店してしまったお店。
「煮込みや なりた」
料理もワインも安くて美味しく、常連達による予約で一見さんはほぼ予約の取れないお店だった。
店主の成田さんは、自分からはあまり話しかけないけど、常連達はカウンターに居座って成田さんと色々と話をする。
それは、料理の話であったり、ワインの話であったり、成田さんが毎年行く欧州でのビストロ巡りの話であったりする。あとは、ちょっとエッチな話等…
そういう時、ちょっとはにかんだようないい笑顔をする(笑)
そんな常連の集う店だから、当然客同士も知り合いも多く、当日も2組知り合いが居た。
店内は狭く席はぎっしりと配置されており、狭い厨房では大将が、まるで片足を軸にしてくるくる回るコマのように一人で忙しく立ち回る。
カウンターには、普通だったら客が使う塩やソース等が置いているような場所に、調理に使用するためのマルハのゼラチンが袋に入ったまま置いてたり、胡椒やハチミツ等が無造作に置かれている。
厨房が狭すぎて、そういったものすら入れるスペースが無いからだ。
だが、そういった猥雑さもこの店の居心地の良さの一部だった。
そうした店に別れを告げるべく今回参加した5名で頼んだは、
「蟹とマカロニのグラタン」グラタンのソースのソースがあっさりしていて蟹の香も活きている
「タルトフランベ」ピザのようでピザとは違う。カリリとした食感とベーコンやチーズとのマッチングが素晴らしい
「豚バラの軽い煮込み」切るのも困難なぐらい柔らかく、添え物の人参、アスパラ、アッシュパルマンティエもたっぷりある。玉ねぎのソースがやさしくそれらを包み上げる
「ナヴァランダニョー」これは、バケット!間違いない味。一緒にジャガイモがホクホクでまたボリューミー
「ブッフブルギニオン」じっくりと煮込まれた肉は、筋まで柔らかくコラーゲンたっぷり。でも添え物のパスタ、ちょっと炒めすぎたんじゃないかな?(笑)
そして、隣にいた友達グループの「ラムハンバーグ」も一口。乾燥させた香草を乗せて火をつけ香を移すのがなりた流。
ドシンドシンと音をたててビンで叩いてた肉は、「牛カツ」として出てきた。これまたボリューミー。ほうれん草の添え物も旨い。
実は、この店、こういった添え物の組み合わせも素晴らしかった。
料理は、どれも1皿の量が多く、一人1皿頼んでシェアするのでも、十分満足できる量。
作る料理は古典的なもので近代的な料理ではないのだが、長く愛される料理というのは、何かしら安心感がある。
お腹が許せる限り、いつまでも食べていたかったのだが、惜しむらくは、終電の関係で自分はデザートまでたどり着けなかった。
一人1本以上のワインを空けて、存分に酒を飲み成田さんの料理を喰らった。
ああ、閉店しまうのだなぁと思うと、実に惜しい。
最近は、1日限定のシェフズキッチンを行う場所も増えているので、そういう所で是非やってみませんかと聞いたけど、しばらくは、料理つくるのはいいかなと言われた。
ちょっと寂しくもあったけど、それが彼の下した決断だとするならば、我々食い手が異を唱えることはできない。
これからは、奥様とご一緒に仕事で出すための料理の研究としてではなく、純粋に美味しい料理を楽しむため欧州旅行を堪能していただきたい。