月曜の午後、参観日の半日代休を使って新任保護司研修を受講した。



送られてきた案内状には「午前10時開始」と書かれていたのだが、病院通いで有給休暇の残日数が心許ない状況故、保護観察所の職員に、 

「午後の部しか出られない」

と無理を言って休暇を節約。

半日受講を許可してもらった。


後から考えるとボランティア休暇でも対応可能だったと思うが、午前中は辞令伝達とか職員紹介とかそういう感じだったので、元々いてもいなくてもよかったのかも(オレは昨年12月に委嘱状やバッジを受け取っている)。



ちなみに保護司とは、犯罪や非行をした人の立ち直りを地域で支える民間のボランティアで、一応非常勤の国家公務員という扱いになってはいるが、報酬はゼロ。逆に年会費1万円を保護司会に納めている。


まだ病気が見つかる前の昨年7月、地元の保護司会の会長(同級生の父親)から直々に依頼があり、職場の許可を得て受諾していた。


なんでも前任者(オレより若者)がガンを患い、保護司を続けるのが困難となったため、後任探しが急務だったとのこと。

何だ、この笑えないジョークのような展開は。


後任者を探す前に、お祓いでもしてもらった方がよいのでは。



研修では、法律に関することや保護司の職務、具体的な仕事の流れについて説明を受けたり、保護観察所の中を見学させてもらったりする。

中でも「かんちょう(環境調査)」「ちょくたん(直接担当)」などの業界用語を学ぶ講義が面白かった。


「あ、今度の直担オレっすか。分かりました。じゃ週末、環調行ってきまーす」

という感じで使うと、通っぽく聞こえるのだろうか。

でもちょっと間違うと、お下品な会話と誤解されてしまいそうなので注意が必要だ。



まぁオレが担当する区域は事件そのものが少なくて出番は滅多に回ってこないらしいのだが、願わくば用語を使いこなす前に任期を終えられることを。


いやその前にまず、無事に任期を務め上げられることを。




さて、本日はPET/CTの検査結果を聞きに病院へ行く日。



診察室へ入ると青年K医師から、

「気になっていると思いますので結果からお伝えしますが、光った箇所はありませんでした」

と望外の報告を受ける。


「MRIで気になる所見があったのですが、直径1cm大のガンがPETで光らないことは通常あり得ないので、写っていたのは治療後の炎症による腫れと考えて間違いないと思います」

とのこと。


K医師は希望のない言い方はしない人だが、若さ故か話している言葉の裏側まで伝わってきてしまうため、前回の説明を聞いて「これは転移しているかも」と覚悟していた。



察して同行していた妻の緊張が一気に解けていくのが、背中越しに伝わってくる。


実際、転移を見越して診察後には喉の細胞診もオーダーされていたので、K医師にとっても予想外の結果だったのだろう。



何はともあれ現時点での無事が確認されたのだ。

こんなに嬉しいことはない。


ポケットに忍ばせていた、S園長とA園長にもらった御守りをズボンの上からグッと握りしめる。


診察が終わったら、真っ先に2人に報告しよう。



最後にK医師から「何か困っていることはないか」と尋ねられたので、「唾液が出なくて話すこともままならない」と答えると、「それなら唾液が出やすくなる薬を試してみましょう」と言われて、サラジェンという錠剤を処方された。


唾液腺を半分近く切り取っているため根本的な改善は望めないそうだが、この薬を飲めば強制的に唾液が分泌されるとのこと。

ただ、出過ぎて脱水症状になるケースもあるため、服用後は意識的に水分を摂った方がいいそうだ。



そう聞いて、うちの園の1歳児、Rちゃんの姿が瞼に浮かんだ。

Rちゃんのよどかけのように、オレもマスクがびしょびしょなんてことにならなければいいのだが。




病院からの帰り道。


車内で妻に、覚えたての保護司用語クイズを出して楽しんでいると、


「その仕事に危険はないのか?」

「突然危害を加えられるようなことはないのか?」


とネガティブ発言を連発。


「刑を終えた人の帰る場所がないような社会であってはいけない」

「誰かの一助になる機会を与えられて嬉しく思っている」

など、カッコつけたセリフを吐いていると、


TVから、滋賀県大津市の保護司殺害事件を報じるニュースが飛び込んできた。



「ちょっ...、えぇー⁉︎ ほら‼︎ ほらー‼︎‼︎」


と、妻絶叫。




どんなタイミングだよ...。

全く。




(日曜日にちまきを作りました)