早朝4時半。
ポストに新聞を投げ込む音で目が覚める。
若い頃は1分1秒でも長く寝ていたいと思っていたが、最近は活動を始める前に助走が必要というか、準備に時間をかけたい欲求の方が強いので、早起きは大歓迎だ。

最近お気に入りのyoutube番組「新進工房」を観ながら10分かけてヨーグルトを食べたり、30分間ハミガキをしたりしてスローに過ごす。

でもこういう日って、大抵出発前になってから大事なことを思い出してバタバタするんだよねぇ。
何故か直前にならないと記憶の引き出しが開いてくれない。

案の定、今日も仕事で使用する3mのHDMIケーブルをカバンに入れ忘れて、途中で引き返した。

保育園は、今年度最後の参観日。
職場復帰の後も感染症対策のため事務室にこもりがちなのだが、こんな日に副園長がこもっている訳にはいくまい。
率先して自分に役割を振った。

園庭で駐車場係をしていると、オレが出勤していることに気付いて声をかけて下さる保護者さんが多数。
年末に病休中である旨の手紙を配布したからだと思うが、中には「よかった…」と言って涙ぐんでしまうお母さんもあり、保育士冥利に尽きると思った。

外の仕事を終え、参観後に予定されている保護者研修会の準備に取りかかる。
講師は世界80ヵ国を巡り歩いた冒険家で、20年来の友人でもあるN氏に依頼。

到着後、外まで迎えに出るとオレの顔を見て、
「おや?」
という表情をされたので、手術後の腫れだと適当に説明した。

顔を見られるのが恥ずかしいとかそういうことではなく、相手に余計な気を遣わせてしまうのが申し訳ない。
片目が塞がり、何なら白目になっていることもある(と思う)ので、リアクションもしづらいだろう。
ホント、寝起きなどはバイオハザードのゾンビ化しているので。

今後、誰かと会うたびにこういう場面を繰り返すと思うと、先が思いやられるというか、やるせない気持ちになる。
今は不特定多数との接触を避けるようにしているが、機会があればとっとと皆にお披露目してしまいたいものだ。

N氏の車から講演のネタである大量の民族衣装を運び出し、ステージにスクリーンを立て、プロジェクターとPCを接続して準備は完了。

当初はS園長が研修会の進行と講師紹介の両方をすると言って下さっていたが、ご心配をおかけした保護者さんにひと言ご挨拶したいと考えて、進行役を代わってもらった。

顔の見た目もそうなのだが、発声も口が開かないのでほっぺに綿を詰めたようなくぐもった声になっている。しかも開かないくせにしっかり閉じることもできないので、ぱ行などの破裂音が上手く言えない。

いろいろな不安や葛藤を抱えつつ保護者さんの前に立ち、お礼の言葉を述べてから司会を務めた。

講演は世界の人々と触れ合って感じた価値観の多様性を人権問題と上手く絡めながらユーモアたっぷりに話され、期待を裏切らない内容。
特に、地球上の9割以上の人間は時間にルーズ。それでも何の問題もなく世界は回っている、という話が面白かった。

やはり実際に体験してきた人の吐く言葉は重みが違う。

S園長も講演後に、
「すごくいいお話だったから、職員研修に来てもらおうか?」
と言って下さり、N氏を強く推したオレとしては面目躍如の思いだった。

夜、謎の商品注文完了メールが届いていることに気付く。
一瞬詐欺メールかと思ったが、どうやら新進工房で紹介されていたバッグをよく検討もせず半寝ぼけで注文していたらしい。

怖い怖い。

値段を見たら、さほど高額ではなくて胸を撫で下ろした。