7月末に亡くなったG先輩の奥様とお話しする機会を得た。


G先輩は、知り合った頃は面倒見のよい憧れの先輩。付き合いが深くなってからは恐怖の対象となっていた人。


体調を崩されていたことは聞いていたが、酒の飲み過ぎだろうくらいに思っていたら、ガンだったそうだ。


ちなみにもう10年以上お会いしていない。



奥様によると、病気が見つかった時点でもう切除は出来ず、抗がん剤と放射線で治療を受けるしかなかったとのこと。

しかも当時はコロナ禍の真っ只中で病院内に立ち入ることも容易でなく、G先輩は家族のサポートも無いままたった1人で過酷な治療に臨まれたそう。


こうなることを予測してアフラックの最上位プランを契約していたとか、コロナが5類に移行した後は、寂しがって病院から帰ろうとする奥様を引き留めたとか、豪放な先輩のイメージとはかけ離れたエピソードも窺いながら、オレも昔の思い出話をひとつふたつと披露した。



医師から「もう抗がん剤は体力を削るだけだからやめた方がいい」と言われても、


「生きている限り治療は続けるんだ」


と言い張って投薬を続けられたと聞き、一本気なG先輩らしいと思った。


わがままとか悪あがきとかでなく、夫として、父親として、最期まで闘う姿勢を家族に見せようとしたのだろう。



帰り際、奥様から

「体には気をつけてね。病気しないでね」

と声をかけていただく。


図らずもその渦中に自分も身を置くこととなってしまった。

だがそのことをいちいち喧伝する必要もないだろう。



オレは奥様に「〇〇さんもお大事に」と告げ、ぎこちない笑顔で別れた。


マスクで隠れてはいるが、特に目元の麻痺が気になる。

K先生の説明では、進行すると瞼が閉じなくなるとのこと。


仕事柄、笑顔は大事。


夜、浴室の鏡に向かって、麻痺していても自然に見える笑顔の作り方を研究する。