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古稀を過ぎたトリトンのブログ

団塊世代よりも年下で、
でも新人類より年上で…
昭和30年代生まれの価値観にこだはります

 我が息子は今年、大学4回生となりました。

 さう、即ち現在は就職活動の真っ只中であります。先月から公務員試験が毎週のやうに行はれ、その度に息子も東京、大阪、神戸などで行はれる試験会場で朝から晩まで答案用紙に向かひをります。

 先週は第一希望の某市役所の採用試験に出かけてゆきましたが、その出がけに私どもへチョコレートを置いてゆきました。銘柄は「キットカット」です。本人が食するだけでは物足らず、親にまでこれを食して「きつと勝つ」と、祈願を乞ふメッセージなりと受け取りました。

 

 

 いにしへより試験や試合の際は「敵に勝つ」といふ言ひ回しから、前日の夕食にステーキとトンカツを食するといふ「験担ぎ(げんかつぎ)」をする習はしがございました。

 さすがに現代の若者らしく、ステーキとカツでは油ばかりで体に良くないと思つたのか、5、6年前から中高生の間では「キットカット」を食するといふ、安上がりで低カロリーなアイデアが持て囃されるやうになつたと聞きました。

 

 チョコレートといへばバレンタインデーを連想するやうに、冬が売れ時です。もちろん年中いつでも美味な菓子ではありますが、カバンやポケット内で溶けてしまつたといふ苦い経験は誰もがお持ちのことでせう。

 年端もゆかぬ幼ない子が、口の周りや衣服をチョコだらけにしてをるのは側から見る分には微笑ましいですが、お母さまがたにとつては悩みの種かと思はれます。

 そこへ行けば、この「キットカット」や「クランチチョコレート」「ブラックサンダー」などは、チョコレート菓子と言へども中にウエハースや米シリアルなどを混入する製造法ゆへ、手に持つてもベタベタになることも少なく、且つ低カロリーのため、チョコレートの進化型として人気を博してゐることは確かでせう。

 

 この「キットカット」は今年生誕45周年を迎へるさうでございます。

 ところが、私の記憶と経験では、それを遡ること10年ほど前には既に、同様のサクサク感のチョコレートを好んで食してをりました。その製品とはF堂の「コウベピアー」です。

 神戸市元町に本社を置くF堂の直営店が、私の母校であります本山(神戸市東灘区)の小学校正門から50m西にございました。因みにこの店舗は現在、JR本山駅北駅前に移転致し現在も繁盛致しをります。

 

 其の店は如何にも高級菓子然とした優雅な佇まひでした。小学生が帰り道に立ち寄るやうなお気楽な雰囲気ではございません。それでも、店主は今から思へば50過ぎくらひの気品のある女性で、道ゆく私どもにも常々微笑みで接して下さいました。後に、F堂の創業者Y家の眷属の方だと耳にし、さもありなむと感じたものでございます。

 

 

 さてこのF堂本山店にて、母が参観日に買ひ求めた「コウベピアー」こそ、今にして思へばキットカット的なサクサク感のあるチョコレートだつたのです。何時の頃に考案されたかは存じませんが、少なくともキットカットより10~20年以上遡ることは確かでせう。形状も似通つて、棒状をしてをります。これには訳があり、神戸港に多数有る「突堤(ピア)」を象(かたど)つてゐるのです。神戸の郷土詩人・竹中郁氏が、この「コウベピアー」の美味に感銘を受け、命名されたさうでございます。

 

 後年F堂の工場に知己を得た私は、面白い事情を教へて頂きました。F堂と言へば円板の煎餅にクリームをサンドした「ゴーフル」が有名であります。このゴーフルの円型を抜く際に大量に発生する煎餅の欠片を粉末にし、チョコレートの中に混ぜ込んだのが「コウベピアー」の起源なのださうでございます。決して吝嗇ではなく「無駄を排する」心が産んだ先人のアイデアに、感謝の拍手を送りたう存じ上げます。

(写真は型録よりお借りしました)

 

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