ミンクのコートが2,000円(泣) | 還暦を過ぎたトリトンのブログ

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団塊世代よりも年下で、
でも新人類より年上で…
昭和30年代生まれの価値観にこだはります

 過ぎし日ブログにてお知らせ申し上げましたが、年末と年始に、父母をコロナで亡くしました。訃報を知つた時は、不肖と兄もまたコロナで入院致しをりましたゆへ、親の臨終に立ち会ふことは叶ひませんでした。

 本来なれば本葬、初七日、四十九日などと式が続く訳ではございますが、死因が死因ですゆへ通常のスケジュールは守れません。こういふ時期ですので、親類のみ声をかけ、三月下旬に遺骨葬の形式で告別式を行ひました。そして先週、墓地へ納骨を済ませて、ようやく一連の見送りを済ませることができました。

 

 現在は相続の作業で大童(おおわらわ)でございます。

 

 父が15年ほど前まで自宅で質屋を経営致しをり、それがし幼少よりその姿をつぶさに眺めつつ成人になつたこと、またその道の喜怒哀楽を過去ブログで10回に亘つてお話し申し上げましたね。

 

 https://ameblo.jp/zigzagsha/entry-12292519248.html

  

 質屋といふ稼業は、一般的に大きな蔵があり、質草の管理も必要ですゆへ、昔は店舗と蔵と自宅がひとつになつてをりました。現代のやうにセキュリティも発達してをりませぬゆへ、ガードマンも雇ふことなく経営者はほぼ常駐してをります。それを良いことに、慣れた客となれば夜間閉店後も訪ねてくることがございました。

 質屋は通常「七」のつく日が休業ではありますが、何しろその場所に住んでゐる訳ですゆへ、急に金銭が必要な客が、休みとは無関係に訪ねてくることも多うございました。

 

 当時はどこの商店でもさうでせうが、店主と客とは共存関係にあり、家族の顔まで知られてゐる場合もございます。今のやうに個人情報も何も有つたものではありません。相手の顔を見て商売致すのですから、爾後トラブルにならぬやう、少々の無理も聞いてやることになります。

 

 それゆへ、客が持ち込んだ品に傷があつたり、多少古くて「このまま流されても売れないなあ」と感じても、「1ヶ月だけやで。来月ちやんと引き出してや!」といふシチュエーションで目をつむり、金を貸してやることも多々ございました。人情のある父ならではとも言へますし、只管(ひたすら)家族の安全を願ふゆへの苦肉の策やも知れません。

 

 今、相続手続きの必要から、父が廃業後に処分せず、蔵の中に眠つてゐた品々を遺産整理致しをります。その中には宝石、貴金属、ブランドバッグなどがございますが、私ども素人には真贋も判りません。そこで古物専門業者に診てもらひますと、出るわ出るわ偽物が(笑)

 父が本物と信じて金を貸したのか、それとも先にお話ししたやうに断りきれずに預かつたのか、それは今となつては定かではありません。

 それより落胆致しましたのは、婦人用毛皮コートでした。昔はお金持ちのステイタスであつたミンクもチンチラも、動物虐待廃止の観点からか、今や求める人も少なくなつたのでせう。

 ミンクのハーフコートですが、つきました値段(引き取り価格)は何と!たつたの2,000円… これでは殺されたミンクも浮かばれません。

 このコートは40年ほど昔、毛皮専門店が閉店の際に父が1着10万円で5,6着引き取つたもので、売れば1着50万円する掘出し物だつたのです。

 

 これ妻には内緒ですが、前回ご登場いただいた檸檬さんのお誕生日に、そのうちの1着を父から仕入れ値で買つてプレゼントした思ひ出がございまして、その意味でも隔世の感が致すのでございます(涙)