「同棲時代」といふ言葉をご存じでせうか?
元々は、漫画アクションといふ漫画週刊誌で連載(1972~73)されてゐた、上村和夫(かみむらかずお)氏の作品です。1973年、映画化。主演・由美かおるさんの全裸写真の美しさが社会現象として捉へられました。某国会議員が大人気なくテレビで絶賛してゐた事態を覚ゑてをります。
さらにセクシー女優大信田礼子さんが歌ふ、この映画の主題歌が発売されると、これがまた爆発的にヒットしました。私が個人的に覚ゑてをりますのは、高校の修学旅行で東北へ参りました際に、バスの中でこの「同棲時代」を歌つたO君が余りに上手く、悪ガキ揃ひのバスがシーンとなつてアンコール要望が相次いだものでございました。
「同棲」はこの頃の流行語となり、まさに一世を風靡したのでございます。
大信田礼子さんについては、以前拙ブログでも「旅がらす・くれないお仙」を取り上げた際、時代劇にもかかはらづ豹柄のビキニを着て登場するといふ、はちゃめちゃぶりをご紹介しましたね。
さて、「同棲」といふもののイメージ…。
この私、齢63になりますが、何となく秘められたやうな、不安定な、背徳の香りがするやうな、羨ましいやうな、でも私どもには縁が無いやうな印象が強うございます。それは恐らく、この漫画「同棲時代」の印象が強いのも理由かなと思ふのです。
その同棲をば、近々わが息子が始めるやも知れぬといふ報に接し、私はすこぶる戸惑つてをるのでございます。「ゑ? この私の身内が…」 といふ感覚でせうか。
私のひと回り下の知人で、夫婦で教師をしてゐる人が居ります。彼らは二人の娘がいて、上は22歳、下が19歳。二人とも離れた土地の大学に通つてをり、一つのマンションを借りて姉妹を住まはせてゐます。ところが、この二人が二人とも、そのマンションに彼氏が転がり込んでゐるといふのです。
もし私が父親なら、もう心配で眠れないと思ふのですが、この夫婦は、私どもとは考え方が異なります。
この両親の言ふには、いきなり相手の男性の性格も碌に知らないのに結婚して人生を誤るより、きちんと男性といふものを知つて、少々失恋しても構はないから、きちんと相手を選ぶ方が、結果は幸せになれるといふのです。
言はれてみれば、確かにそれは正しく説得力もございます。何しろ、ご夫婦とも教師ですし。しかしよくもまあ、そこまで達観できるものだと、私などは未だに釈然と致しません。
ひと回り、12歳違ふだけで、ここまで異性との交友に対する考へ方が異なるのですね。
私はやはり、50年前の「同棲時代」といふ言葉が流行した昭和を越へることが、現在もなほ出来てゐないのだと痛感致しをるところでございます。