指定席(四人席)で見た怖い出来事 | 還暦を過ぎたトリトンのブログ

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団塊世代よりも年下で、
でも新人類より年上で…
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 昨日、或る朝のワイドショー番組で新幹線指定席の話題が出て参りました。

 指定席3人席を向かひ合はせにして6人対面形式にし、仮にそこで女性5人組が和気藹々とはしやいで居た場合、奥の窓際の一人指定席に貴方は座れるか…  といつた内容です。

 

 向かひ合はせ6人席ならずとも、たとへ固定4人向かひ席でも、その奥に座るのはなかなか気遣はしいものでございます。現代人はとてもナイーブですゆへ、他人との距離を取りたがる傾向は、時代を追ふと共に著しくなつて参りますね。

 

 

 昔は、汽車で長時間かけて旅行をするのは、むしろ楽しいものでございました。見知らぬ人と隣り合はせ、向かひ合はせになるのは当たり前。ネットに入れて売られてゐる蜜柑を頂いたり、運が良ければ紙コップに酒を汲んでもらつたりして、すつかり意気投合することもございました。(…ん?私つて貰ふばかりかな?)電車を降りる頃にはすつかり友達になつてしまひ、改めて住所・電話番号を交換することもあつたりしました。

 

 ここで思ひ出した、或る恐ろしい光景がございます。30年ほど昔、私が神戸の印刷会社に居た頃、伊勢方面へ8名で社員旅行に参つた時の話です。

 こちらは上司と同僚の男女8人ですゆへ、何処へ行くのも指定席の向かひ合はせでございます。

 どこの駅かは失念しましたが、私どもが乗り込みますと、背中側に5人組の男性ばかりが座つてをりました。うち2人は年配で、4人向かひ席に2人が対面に座つてをりました。あと3人はその横の4人席に座つてをりますが、若く紺色の作業服を着てをり、胸に○○興業と刺繍されてゐました。その顔がまあ~、柄の悪いこと。2人は坊主頭で且つパチキを入れてをります。(註:パチキとは鋭角の剃り込みのことです)眉毛も剃り込んでありました。あと一人はリージェントですが顔には向かう傷が入つてをりました。

 席が背中合はせなので、余り顔を合はせることはありませんが、遠い向かひ側に座る私とは時々目が合ふのでございます。同僚の女の子らは怖がり、声も小さくなつて参ります。

 

 次の停車駅で、50歳くらひの背広を着たサラリーマンが乗つて参りました。何と間の悪いことに、3人の若者の奥に1つ空いた窓側席がその人の指定席だつたのです。男性が青ざめるのが分かりましたが、彼は仕方なく座るのでした。ほどなく、3人の若者が何とオイチョカブを始めました。うわー、雰囲気悪いなー。男性は「ちょっとトイレへ」と言つて席を外し、車掌の部屋へ行つてどうやら席を変へてくれるやうに頼んだやうですが、何せ車両は全席指定です。

 

 男性が仕方なく席付近に戻ると、3人の若者は「おーい、こつちやでー」とその初対面の男性に声をかけ、さらにゲームに入るやうに勧めてゐるのでございます。もう、周囲の乗客は声もなく、固唾を飲んで目を見交はすのでございました。

 遂に男性も肚を括つたのか、何とオイチョカブに参加し始めたのです。えー度胸しとんなー、と感心しましたが、それも仕方ないなーとも思ひました。理解できないのは、2人の年配の上司(兄貴分かな)が、それを止めようとしないのです。

 

 そんなこんなで約30分経過。男性は恐らくもつと遠方まで乗る予定だつたと想像するのですが、私ども8人が降りる駅で、「じゃー、僕はここで」と彼らに明るく言い放ち、一緒に降車するのでした。若者らは「おっさん、ほんまかいや。勝ち逃げするんかいなー」とブーたれてましたが、無理やり引き止める訳にもいきません。

 私どもは、男性が小走りにホームを駆けてゆくのを、気の毒に思ひながら見守るのみでした。

 

 もしあの時、あの男性が電車に乗つて来なければ、ひよつとすると時々目が合つてゐた私がオイチョカブに参戦させられてゐたのではあるまいか… と、30年経つた今思ひ出しても冷や汗をかく、小心者の私でございます(笑+汗)

 

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