私は昭和31年生まれ。戦後10年を過ぎて生まれたので世の中は充分「民主化」(米国化)されてをり、それを疑ふことさへ知りません。団塊世代よりも数年後、高度経済成長の真つ只中です。東京オリンピックが小学二年生の時で、子どもたちは夢を持つのが当たり前で、前途は揚々と致しをります。
我が家は自営業を営んでをり、サラリーマン家庭よりも若干裕福でした。周囲の子どもらと同様、クリスマスが楽しみで、サンタクロースの存在を信じてをりました。
12月24日イブの晩に、煙突からサンタさんが入つてくる。
うちには煙突は無いけれど、大丈夫やろか。
それは、窓から入るから大丈夫。
窓に鍵かけたらあかんで、お兄ちやん。
兄弟でそのやうな会話を交はし、眠りに就きます。子どもらが寝静まつた頃、両親が靴下の形をした袋に、菓子や文房具を入れて枕元に置き、部屋を出てゆきます。
好奇心旺盛な兄は、目を閉じてはゐるものの、暗闇でサンタの正体を確認致しをりました。そして言はづともよいものを、幼稚園児の私に「サンタさんは居ない、あれはお父ちやんや」とバラしてしまふのでございました。
斯様な幼児体験がございましたので、私が子を持つ親になつた暁には、必づや我が子にサンタの存在を信じさせてやらうと決意致しをりました。
息子が幼稚園年中の時、一計を按じて、玄関外にプレゼントの大きな袋を置きました。
「サンタさんは父さんの友達や。スペインから飛んで来はるから、まず父さんに電話がある。電話がかかつたら玄関の外へ行つてみ」
そして夕食の途中に携帯のアラームが鳴るやうに仕掛け、私が電話に出るふりをして、デタラメのスペイン語で応対。無邪気な息子は玄関へ走つてゆきます。
「父さん、サンタさん、もう行つてしもたわー」
「サンタさん、今夜は忙しいから、しやあないな」
「わー、欲しかつたベイブレードが入つてる。サンタさん、何でも知つてるんやな」
といふやうな要領で、毎年演技を致しをりました。息子はすつかりサンタさんの存在を信じ込み、だうやら小学校3年生くらひまで確信してゐたさうで、学校で級友に笑はれたさうです。
「サンタさんが居るて言ふたら、友達に笑はれたわ。父さん、嘘ついたん?」
「お釈迦さんがな、『嘘も方便』と言ふて、世間さまが喜ぶやうな良い嘘はついてもええんや」
…と、私は苦しい弁解を致しました。
私が小学生2年生のころ、担任教諭の提案で、12月には学級全員参加のプレゼント交換会がございました。一人30円~50円くらひの物を買ひ、お金の無い人は何か作つたものを、朝、教室の入り口に置いてある大きな箱に入れるのです。そして学級会の時間に、一人ずつ前に出て、穴の空いた箱の中から一つずつ取るといふ簡単なものでした。額が知れてゐるので、せいぜい鉛筆、消しゴム、チャック式の小銭入れ、金平糖くらひの品々でしたが、大いに盛り上がつたのを覚ゑてをります。
皆様は、どのやうなクリスマスプレゼントを記憶に残してをられることでせう?