知人が飼つてゐる愛犬が、この三連休の間に熱中症で倒れてゐたと聞きました。
犬や猫たちは汗をかきません。尤も、汗をかくやうでは、初めから人間の愛玩動物(ペット)にしてもらへなかつたでせうが…。
私ども人間は、全身に有る汗腺から汗を放出して体表面を冷やすことによつて体温を調節してゐる訳です。それに対し、犬猫は皮膚から汗を出すことが出来ず、口を開けて舌を出したり、水に飛び込むくらひしか体を冷やすことが出来ないのです
此処数日の炎暑では亡くなられた方も居られるほどです。ペットたちも、口に出来ぬほど苦しい毎日を送つてゐるに違ひありません。
(イメージ写真)
もう40年近く昔のことになりますが、私の知人で、学生時代すでに商才に長けた者がおりました。彼は夏の花火大会や神社の祭りを狙つて、ひよこを売ることを思ひつきました。神農業界に先輩が居られたこともあり、良い場所を得ることも出来たやうです。
露店で売られるひよこは100%が雄鶏です。雌鶏は育てれば卵を産むことが出来ますが、雄は育てても鶏肉になるまでに餌代もかかりますので、可愛いうちに売れるものなら売つてしまひたいのです。
知人は自宅でひよこにピンク、紫、黄緑などの染料をスプレーして、それぞれを段ボール箱に入れてきて並べます。それはそれは大変な人気でした。幼児から小学生くらひの子供たちが店の周りに犇めいて離れない…。値段も一羽せいぜい200円程度なので、我が子にねだられたら「ダメっ」と断つて泣かれるよりもいいか…といふ感覚で、飛ぶやうに売れるのでした。ひよこは飛べませんが…。
知人の賢い処は、買つて帰つた子ども等が、次の日には色違ひのひよこが欲しくなつて、また買ひに来ることを知つてゐたのです。5色のひよこを揃えたら、友だちに自慢して見せる。それを見た友だちもまた欲しくなつて店に来る…。相乗効果といふのでせうか。
実は此処だけの話ですが、この知人は卒業時にはBMWを乗り回してをりました。
冒頭に述べましたやうに、他のペットと同じくひよこも汗をかきませんので、暑くなると弱つて参ります。動きが悪くなりフラフラとなり始めたひよこを、箱から取り出して、上にドライアイスを設置した箱に入れ、元気になればまた箱に戻すといふ商品管理も知人はしつかり施行してをりました。お客さんに売る際には、一日一回は砂浴びをさせること、涼しい場所で飼ふことを彼は言ひ聞かせをりました。
動物愛護の見地からかだうか、色付きのひよこを露店で見かけることは近頃ありません。世界の国々を案内するテレビ番組を見ると、東南アジア方面では今も色付きひよこは人気のやうです。でも、ひよこはやはり黄色が可愛いし似合ひますね。