耕一は、オフィスに入り本多女史に声をかけた・・・
耕一「やあ、どうしたの?急に電話貰って、びっくりしたよ。」
本多「ごめんなさい。ちょっと、気になることがあって、ここに居たら貴方に相談したくなって・・・」
耕一「でっ、相談って何?」
本多「・・・お腹空いたわ。中澤さんは、もう食事したでしょう?・・・食事に、付き合って欲しいけど・・・」
耕一「分かった。じゃあ、とりあえずここを出よう。遅くなっても、自宅まで送っていけるから・・・何が食べたい?」
二人は、行き先をあれこれ話をしながら、オフィスを出た。結局、昭和通り沿いの新橋に近い、ファミレスに入った。
耕一「話は、戻るけど相談って何?また、資金繰りが厳しいの?」
本多「いや、そうではなくて・・・女で一人で会社を張ることに、少々自信が無くって・・・疲れたのかな?・・・」
耕一「・・・今更、勤め人に戻る?・・・」
本多「いや、それは無理だわ。20代前半で、マスコミ(新聞社)でバイトしつつ、応募したミスコンでチヤホヤされて、レースクイーンになって、レースやって、結構華やかな経験もしたけど、普通にまともなOL生活なんてしたこと無いから・・・それに、私、何ができるわけでも無いから・・・」
耕一「そうなんだ・・・しかし、過去は過去で変えられないからね・・・それ以上に、今君は、頑張ってるんだし・・・第三者から見れば、魅力的な経営者だよ。」
本多「それって、私が女だから?・・・そう、確かに多くの人が私に会ってくれるわ。でも、それは私が女であることが半分以上の理由よ。それに、おじさん達から見れば、若い部類だしね・・・」
耕一「それに付いては、僕なんかよりはるかに優位性があるね。全てにおいて、マイナスにはならないのでは?・・・」
本多「ところが、そうではないのが事実よ。本人の為に、名前は伏せるけど、面談者の半分以上は、最後に私を口説くわ。・・・それはそれで、これまで当たり前のことと、割り切ってたし、逆に利用しようとも思ったわ。勘違いしないでね。『枕営業』はして無いわよ。」
耕一「それは、男の僕には分からない感覚だね。・・・まあ、君は一般的女性と比較したらはるかに魅力的だし、仕事抜きならそれなりの感情も沸くのは理解できるけど・・・仕事が絡むと厄介だね。」
本多「そう、そこなの。結構、誘い水的なオファーはあるのよ。資金援助の変わりに・・・・とか、他に別会社を立てようとか・・・・」
耕一「そうだろうね。それは分かる。なかなか、純粋に『ビジネス』だけを考えて、物事進めるのは難しい。それなりに金を持つものは、結構、腹黒いと言うべきか、狡賢いというべきか、信頼できる相手はなかなか居ないよ。必ず、最後には何かと引き換えに得が無ければ、ボランティアなんて架空のモラルに近い言葉だね。」
本多「そう、やっぱりそう思う?・・・ねえ、貴方本当に信頼できる?」
耕一「いきなりな質問だね。そうね、それはそちらの意向と期待によるのではないかな?僕に、何を期待する?」
本多「・・・一口ではいえないけど・・・貴方は、なぜ私のオフィスの会員になったの?それに、それなりに実績や人脈があれば、普通にオフィスを立てれたでしょう?」
耕一「そうだね。でも、そうしたくは無かった。なぜなら、本当にゼロから自分でやるべきと、自分にプレッシャーをかけたのかもね・・・・」
本多「なぜ?もっと楽に、なれたはずじゃないの?」
耕一「仰るとおり。しかし、今の自分になるまでに、つい最近まで『廃人』同然のメンタリティで生きていたから・・・やっと自分で前に歩こうと思ったのは、つい最近なんだ・・・」
本多「そんなに、大変な事があったの?」
耕一「今にして思えば、そうでないかもしれないけど・・・でもまだ、過去としての感覚は持てない。まだ、後遺症がある感覚が体のどこかにあるよ。話すと長くなるから、その事は置いといて・・・要は、自分にリセットかけた感覚かな・・・」
本多「私には、想像できないけど、女としての足かせも逆に邪魔になってきているの・・・どう思う?このまま、『社長』張ってていいのかしら・・・それとも、何か別の道を考えるべきかしら?・・・」
いつの間にか、夜も更け深夜2時を回っていた・・・耕一は、『この話の落としどころ』が見えなくて、思案し始めた。(続)