起業から、経営者へ、そして・・・ -14ページ目

起業から、経営者へ、そして・・・

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耕一は、わずかな間に・・・


複雑な人間関係が、絡み合い始めた事を感じざる終えなかった・・・

本多女史とのこと・・・UP-RISEなる意味不明なグループ・・・HJPの水谷氏からの依頼・・・

耕一は、頭の中を整理することを自分に課し、常に幾つかの顔を持てるよう努力するようになっていた。
朝、起きてから寝るまでの間に、常に多くの人間と接し、単なる挨拶ではない、それぞれの会話をし、また食事もし、・・・緊張感がある時間があっという間に過ぎた。耕一は、それがある種、心地よいと感じた瞬間もあった。しかし、それは果たして真実か錯覚か?


佐嶋氏と面談してから2日後、朝早くに携帯電話が鳴った・・・

耕一「はい、おはようございます。中澤ですが・・・」

XXXX「おはようございます。柴田です。お元気ですか?まだ、寝てました?いや~、急で申し訳ないんだけど今日これから、時間取れるかな?直ぐにでも会って、相談したいことがあるんだけど・・・」UP-RISEのメンバーであった。2・3回、定例会で同席していた。

耕一「ああ、柴田さん、どうも。急にどうしたんですか?・・・今日は、ちょっと待ってくださいね・・・・ああ、午前中なら時間取れますよ。どうします?どこでお会いしますか?」

柴田「それじゃ、中澤さんのオフィスに伺うから、10:30位でいいかな?」

耕一「はい、分かりました。お待ちしています。」

それから、耕一は、本多に携帯からメールで、会議室の予約をした。

(3時間後・・・)

耕一「いや、どうも~。お電話もらって一瞬誰かと思いましたよ。」

柴田「いやいや、ぶしつけで申し訳ないね。早速なんだが、相談というのは・・・」柴田は、コーヒーに口を付けた。

柴田「実は、中国で新たなビジネスチャンスがあるんだよ。それというのは、上海で大手の百貨店(デパート)の新店舗の1フロアー全てを日本製のブランド店舗を集めて、出店・運営する話なんだけど・・・」

耕一「どういった、お店ですか?」

柴田「アパレル、雑貨、とにかく中国の都市部に在住する女性が、興味を引くもの全てを揃えるんだ。今、日本の経済は沈滞ムードが否めないが、上海は、信じられないくらいの活気があるんだ。一度現地に行って、感じれば分かるよ。」

耕一「はあ、いきなりで恐縮ですが・・・私はあまりリテールの店舗のことは・・・」

柴田「それは、承知している。それ以上に中澤さんの人脈で、適切な人材を探して欲しい。そして、これから契約にまつわる交渉の実務が多くなるから、そこの部分は、実務レベルで加わって欲しい。」

耕一「そうですか・・・・面白い話ではありますね・・・」「ただ、まだ実感として、イメージが沸きませんが・・・」

柴田「そりゃ、そうだろうな。俺も、この話ここ1ヶ月位で急進展してるから・・・ただ、何度も上海には行っているから、現地の状況はよく肌で感じている。」

耕一「では、どのように進めますか?」

柴田「そこで、私のパートナーの謝(シャ)氏に会ってもらいたい。」

耕一「そりゃまた、いきなりですね。私、中国語駄目ですよ。」

柴田「それは、問題ない。彼は、日本に在住している。日本語も問題ないから・・・」

耕一「はあ・・・」

耕一は、唐突な話に面食らった。ただでさえ、多忙な日々である。そこに加えて、また新たに、何かに手を出すのは、想像していなかった。

しかし、耕一の中では、HJPの契約が終わった時どうすべきか?既に頭の片隅に、気に掛かっていたのは確かであった。耕一は、考えた・・・

耕一「柴田さん、3日間ほど時間下さい。ご所望の人材を探すことと、私の係わり合い方、もしくは立ち位置について、考えます。良いお返事が出来るように・・・」

柴田「さすが、中澤さんですね。UP-RISEの中での年寄り連中とは違うね。よろしく頼みますわ!それじゃ、これで・・・」

柴田は、耕一のオフィスをそそくさと立ち去った・・・・(続)


耕一は、小田に・・・


HJPでの業務に関する実務を側面的に支援する仕事をさせるように進めた。それはこれまでのデータをDBによる簡易分析や、新規に業務フロー効率化するための中間的システムなどのディレクション等々などである。

小田は、心なしか明るい表情で仕事をするようになった気がした。一方、これを横で見ていた本多は、時折耕一を強引に、食事に誘った。ある時、銀座のオフィスで同席を求められる機会があった。それは、店舗開発を中心としたコンサルティング・企画会社の佐嶋であった。長身のアパレル系のモデルのような男であった。話の主旨は、新規商業施設における、レンタルオフィス事業の投入の是非についてであった。最初に耕一は、予め用意しておいた本多の会社プレゼンを5分ほどした。

佐嶋「本多さん、初めて御社の紹介をキチンと聞きましたよ。中澤さんは、以前どこかにお勤めでしたか?プレゼン、分かりやすくてよかったですよ。」

本多「ずいぶんね。これまで、うちがナニやってたか理解してなかったの?」

耕一「有難うございます。私もつい最近、本多に会社の内部説明を受けまして、改めて自分整理しただけなのですが・・・」

佐嶋「では、本題に入りましょう。実は、横浜市が手がける都市開発一環で、みなと未来線に出来る新しい駅を中心に大掛かりな駅ビルが建設されます。今のところ、東急建設とその他3社で入札の話になっていますが、それは表向きで、実はN社にほぼ決まりとなっています。我々は、そのN社から依頼を請けて現在御社のことを検討しています。」

本多「それで、先日連絡もらって、レンタルオフィスの試算表といわれても良くわからないの・・・それで、中澤も同席してもらって、改めて提出しなおすわ。いいかしら?」

佐嶋「ええ、いいですよ。ただ、ちょっと時間が厳しいんで、ナルハヤで・・・」

耕一「いつまでがご希望でしょうか?」

佐嶋「来週の月曜日当たりでいいですか???・・・」

耕一「はい、いいですよ。大丈夫でしょう。」

本多「佐嶋さん、この人はこの手の仕事は本職に近いから、大丈夫よ。それより、ほんとにその施設に私たちの会社としてレンタルオフィスが参画できるの?」

佐嶋「いや、今のところ確約も何も出来ませんが・・・ただ、面白いアイデアの一つであることは、私の周囲は理解しています。」

本多「そう。それなら、是非いい方向に進めてもらいたいわ。見込めるなら、リソースをそちら側にシフトすることも考えるから・・・」

佐嶋「了解です。とりあえず、そういうことで今日はこれで・・・」

耕一「それでは、後日・・・」


この耕一と佐嶋との出会いが、今後の流れ大きな関わるとは誰も予想だにしなかった。むしろ、異業種の者同士としてただ単純に、面通ししたに過ぎないと感じた。
しかしながら、予想以上に深いかかわりとなっていったのである・・・(続)


耕一のサポーターである小田は・・・


本多の紹介で、派遣として耕一の元で働いていた。耕一が忙しくなるにつれて、小田への指示が増えまた、難易度の高い要求が彼女自身に降りかかってきた。

小田は、ある時HJP関連の仕事で、データベース(DB)の作り込みの仕事の指示を耕一から受けた。最初は、そんなに複雑な内容ではないと考え自分でDBの構築をしようと考えていた。しかし、耕一とHJPの担当者と打合せすを重ねると、結構大変な事がわかった。

小田は、HJPほどのクライアントを相手に営業経験は無いし、ましてや仕様書の打合せなど初めての経験であった。小田自身は、僅かながらこれまでと違ったモチベーションを持ち始めていた。


耕一「今日は、予定が無いなら食事に行こうか?」と小田に声を掛けた。

小田「いや、ちょっとまだキリが悪いのでもう少しやってから帰ります。」

耕一「それなら、待ってようか?」

小田「いえ、自宅でもちょっとやりますから・・・」

耕一「それじゃ、僕は帰るわ・・・」といってその場を出た。耕一は、驚いた。これまで一度も自ら動く事があまり無かったのだが・・・小田の変化に気づいたのであった。

翌朝、小田はいつもより少し早くオフィスに来ていた。前日からの仕事に引き続き集中していた。

実は、小田の中では個人的な葛藤があった。それは、それまで付き合っていた男性が居た。およそ3年半、お互いの部屋を行ったり着たりの半同棲みたいな生活であった。しかし、3ヶ月前くらいからその彼との関係が冷め始めていた。丁度、耕一の所へ派遣されてからである。冷め始めた理由は、特には無いのだが、小田自身が派遣の身でありながら、耕一に食事に誘われたりして、内心驚いていた。これまで、派遣先では決して無かった事である。

小田は、次第に耕一に魅かれつつあった。しかし、何かがあるわけではない。小田自身は、耕一から指示される事にひたすら応えようと必至でもあった。何が、そうさせたかは自身も気づいてはいなかった。

しかし、今手を付けているDBの仕事に関して、どうしても、元彼に相談せざる終えなくなってきた。小田は、迷った。『元彼に、聞くべきかどうか?』

小田「あの、中澤さん、これから新宿に出かけていいですか?」

耕一「ああ、いいよ。どうしたの?何か用事?」

小田「いえ、その例のDBの事で知り合いに相談する事があって・・・」

耕一「了解。いってらっしゃい・・・」

耕一は、ピン!ときた。恐らく、彼氏に相談するのだろうと・・・

小田は、2時間ほどDBの打合せをして、オフスに戻った。それから、またDBの構築に取り掛かった。

耕一は、彼女を観察しながら、とても満足気であった。それは、まさに今自分の目の前でヒトが成長しているのが見れるのである。これほどうれしい事はない・・・と感じていたのであった。

・・・2日後の週末、2人は食事に出かけた。耕一は、少し慰労の気持ちもこめて、いつもとは違う雰囲気の店に小田を連れて行った。
ここで、小田は、少し上気した。元彼とは異なる耕一の雰囲気や、言動にいよいよ魅力を感じていたようであった。


耕一から見れば、良き社員であって欲しいとの気持ちであった。ルックスも悪くない小田(身長172cm)細身で、耕一を訪れるその殆どの客人が、小田に驚いた様子を隠せなかった。

耕一は、小田との食事が終わって、本多と別の打合せを兼ねて、他で会う予定だった。しかし、しばらくしてそのアポイント(?)はキャンセルした。

翌日、耕一と小田は2人でオフィスに出勤した・・・・(続)


耕一は、新たに「UP-RISE」という・・・


意味不明な組織(?)を作る羽目になった。というのも、先の栃木氏と宇田氏を中心とする数人の年配者が、耕一のオフィスに訪れた。(レンタルオフィスだから、会議室は、有料となっていたが・・・)その際に、栃木氏が第一声に、『新たに、我々で資金調達を必要としたり、株式公開したいベンチャーの支援するグループを作ろう!』と言い出したのである。

しかし、耕一は彼らの顔色を見て、感じた。『このおっさん達は、60歳も過ぎ、70歳も過ぎてるハズなのに、まだ口利きだけの手数料収入を求めている。悲しき証券マンの顛末か?・・・』と・・・

仕方なくこの話に付き合うこととなり、耕一の会社で事務局をすることとなった。
また、この活動の一環として、かつて耕一が手がけていたB-Linksの『Link-Party』を鞍替えして、このUP-RISEでの異業種交流会を再興させることとなった。この頃には、既にB-Linksの藤本氏は姿を消し、Link-Partyは休止状態にあった。

実質的には、実務は耕一が採用していた小田がやる事となってしまった。このような状況において、大企業出身者は、そのままの文化で生きてきているのであった。

ある時、耕一がいつものように事務所不在で小田が、事務所で仕事をしていた際に、急にUP-RISEメンバーの一人が来て、『おい、悪いけど客人だ!お茶を2つ出してくれ・・・』と小田に指示した。小田は、一瞬、ぽかんとしたが、言われたとおりにお茶を出した。耕一が戻ると、小田は一応報告した。

耕一は、あきれた。ここのレンタルオフィスは借り上げスペース以外、全て有料である。その費用は全て耕一の会社で負担していた。冷静に考えれば、理解できるはずの事だが・・・自分の懐以外の事は、これまでの育った文化や習慣のままなのである。


話は少し逸れるがここで、あるコンサルタントからベンチャー企業の検証する際に幾つかチェックするポイントがあると聞いたことがある。そのポイントをご紹介しよう。


【社長編】
1.オープンカー若しくは赤色の外車を持っている(乗っている)。
2.時計はやたらと高くて重い。
3.ネクタイをしない。(これは今ではちょっと感覚が異なるが・・・)
4.ネックレスをしている。


【オフィス編】
1.どこでも喫煙OK!
2.オフィス内は、上履き(スリッパ)
3.社長の机は社長室だけの個室。
4.オフィスの机の上はいつも雑然としている。


【社員編】
1.女性社員がやたらと派手か、全くの地味で両極端。
2.定時に、全員が揃う事が無い。
3.挨拶が極端にしないか、もしくは反対にやたらとでかい声で、体育会系のりでさけぶ。
4.社内の個人に対する陰口が多い。


これらは、ほんの一部であるが最初のインパクトでほぼ統計的に、これらに当てはまるベンチャー企業は問題を抱えている事が多いとの話であった。いかがだろうか?当てはまることや思い当たる節はあるだろうか?実際には100項目以上のチェックポイントで総合評価(第一段階の企業分析ツールの一つ)するのである。この評価は意外と、その企業の傾向を掴むバロメーターになるらしい。

また、ベンチャー企業以外でも、老舗、大手と言われる企業も、同じである。
特に、大手の上場企業は、昨今では『コンプライアンス』なるキーワードで、内部監査や内部牽制に力を入れているようだが・・・まあ、いづれにしても異文化で育ったもの同士がいきなり同じ場所で事を成しえると言うのは、非常に多くの抵抗感や問題が起こる。ここでは人事の重要さを感じるが・・・


話を戻して、耕一は、栃木氏に電話を入れた。

耕一「栃木さん、事務局はやる話にはなったけど、そちらの事務所まで受けたつもりは無いですよ。お望みなら、ここのレンタル会員になってくださいよ。」といきなりカウンターと同時に営業をしたのであった・・・

知らず知らずのうちに耕一の一日は、フル稼動に近いくらいの仕事量になっていた。ただ、唯一落ち着けたのは、本多の存在だったのかもしれない・・・いや、底に逃げ場を求めたのかもしれない・・・(続)


時期が重なり、色々なことが・・・


耕一が、メインで受託していたメインクライアントである、ハイデルベルグジャパン(HJP)での仕事が山に差し掛かり始めた頃、担当窓口であった執行役員の水谷氏と個人的に話す機会があった。

そして、水谷氏はある相談を耕一に持ちかけた・・・

水谷「中澤さん、実はもう一つ仕事を請けてもらいたい。この仕事は、ここ(HJP)の仕事ではなくて、私の妻の実家の会社の仕事なんだ。場所は、小田原なんだけど・・・」

耕一「そうですか。内容にもよりますけど、業種は?どういった内容ですか?」

水谷「製造業だよ。樹脂の圧空・真空成形で、特徴としては、テフロンのボトルなどを製造しているんだが・・・」

耕一「ほう、それは結構付加価値高いんじゃないですか?通常の樹脂の製品は、海外の製造拠点に圧されて、国内では採算が合わないことが多いと聞きますが・・・」

水谷「その通りだよ。しかし、古い体質の会社で結構大変なんだわ・・・」

耕一「で、私がお手伝いするお仕事というのは、どのような内容ですか?」

水谷「まずは、営業部門の建て直しと経営陣の再教育かな?・・・」

耕一「それはまた、深い内容ですね・・・しかし、私なんかでいいんですか?」

水谷「いや、いいんだ。身内ばかりで、私も役員にはなっているが現在の役員たちがある意味で血縁なんで、ある種の情が入ってしまう。それでは、現場を始めとする他の社員にはあまりいい影響力が出せないんだ。そこで、第三者の意見を直に伝えて変えていかないと・・・」

耕一「分かりました。お請けしますよ。費用は、実費(交通費)以外は、そちらで決めてください。あまり高額なお話もしにくいですし・・・」

水谷「ありがとう。それじゃ来週の土曜日に定例会に出席するために小田原に行くから、一緒に来てくれるか?」

耕一「かしこまりました・・・」

元々耕一は、社会人として働き始めたのが長野県諏訪市であった。当時付き合っていた女性の知人の紹介でその会社に、4年ほど勤めていた。この会社は、工業用資材の商社であり、副資材(梱包材)から始まり、試作用のモックアップ~試作金型~量産に至るまで、樹脂・ゴム専門に扱い会社であった。また、加工専門の子会社もあり、一通りの製造に関する知識は持っていた。この耕一の勤めていた会社(第一商工)は、同族企業でもあり今回の小田原の会社と経営状況は似ている空気があった。

これまで、耕一は外資系としてのキャリアを前面に押し出して仕事をしてきたが、ここへきてまさか、10年以上前の経験が引き出されるとは考えに及ばなかった。耕一の記憶では、その手の製造業の中小企業は、非常に大手に抑圧されて存在していることが多く、収益体質も決して高いわけではない。しかしながら、身近にあるペットボトルと同じように、水やガスと同じくらいその存在感はあり、産業分野のみならず、簡単にはなくならない業種でもある。


耕一は、また一つ考えることが増えた・・・


そして、この話と同時期に、ある知人からある人物を紹介された。それが、池谷氏であった。池谷氏は証券会社に長く勤めた後、独立してベンチャー企業の支援などをしつつ、耕一と同じようにクライアントと契約し、現場での仕事をしていた。


ある時、池谷氏が更に紹介したい人物がア居るということで、あるベンチャー企業の資金調達に絡んだ打合せに出席するように言われ、その人物と面会した。
それが、元山一證券国際部部長の栃木氏と元山一證券常務の宇田氏であった。耕一は、違和感を感じた。それは、明らかに金融・証券業界に居た人間の匂いであった。

耕一は、後々彼らとの人間関係に振り回されることになるであろう予感がしたのであった・・・(続)


それからの耕一は、・・・・
本来の自分の仕事とは別に、本多の会社の内側も見ることとなった。それは、ある意味、新鮮な部分もあった。知らない事に触れることは、耕一にとっては一番好奇心が沸き立つのであった。

ただ、これまでこの会社は『本多女史』の看板で対外的にその色が強かったのだが、場合によっては耕一が同席する場面も出てきた。それは、ある種一つの改革でもあった。それは、若い女性経営者は、往々にして本来のビジネスから逸脱した部分を観察されがちである。しかし、その空気を変えるために、耕一は本多のカードの一つとして存在した。
これにより本多と耕一は、これまでの面談・交渉相手は、その態度が変わるのを顕著に感じたのであった。

ある意味、耕一は牽制役であった。

しかし、耕一はそれだけに留まるつもりは無かった。本多の会社を変えるには、そのスポンサーである徳山氏を切り崩さなければならない。その為に、『何をどうするのか?』を考え始めていた。また、株主構成も見直し、どうすべきか考え始めた。

本多の会社は、一人の男性スタッフを除いて全て女性である。本多自身のこれまでの経験や価値観において、ある意味粒のそろったスタッフが居た。但し、耕一には経験不足の彼らにいきなり、耕一の考えは伝わらないと気づいた。


知らぬ間に、耕一は激務となった。時間的に窮屈になってきたのである。メインのクライアントとの契約を優先しつつ、それ以外はその殆どが、本多の会社の現場に関わる事となった。


本多の会社のスポンサーは・・・


企業家を目指す人材を相手に、「インキュベーション」をビジネスとしている内容であった。それは、『起業家ネット』と称する雑誌の出版と起業家予備軍を集め、『起業家大学』なるセミナーを6ヶ月単位で開講し、講習料を売上とするものだった。この中から、某大手アパレルベンチャー企業に成長した「三本谷氏」がOBとして、宣伝文句としていた。

本多は、あるときこの『起業家大学』に通い、最終レポート(卒論もどき?)において、現在のレンタルオフィスの企画を立案し、見事その期に表彰され、起業に至った。その際に、資金や不動産(貸ビル)などのバックアップをしたのが、胴元的存在であり、そのままスポンサーとなったのであった。

このスポンサー起業の徳山氏は、色々な過去の経歴と肩書きを耕一に、披瀝した。
しかしながら、耕一は「単に、知恵を集めて鵜飼いになろうとしている輩」にしか見えなかった。事実、この会社は後に、ファンドを立ち上げ、投資顧問業もスタートさせた。要は、VCと何ら変わらないのであった。

同じように、間接金融である銀行の傘下にある『○×総研』などというところも、同じような目的を持っている。彼らの場合は、体力に任せて、様々な情報を餌に、同じように、『投機』の対象を確保したいのである。

耕一は、かつてのエイペックスジャパンの頃を思い出した。そう、起業家は、投資家からは、『喰う』対象であり、起業家は『喰われる』対象である。投資=資金と言う構図の中で、経営に苦しむ経営者は、年齢・性別に関係なく、知らぬうちに剥がされていくのである。
本多の持ち込んだ「契約書」もまさに、そのものであった。

耕一は、徳山氏との面会の後、本多に言った。

耕一「本多さん、このまま維持しながら社長を続けるの?・・・」

本多「・・・私、今さら普通に『勤め人』にはなれないわ。」

耕一「でも、今のままでは自分の首を絞めるだけにならないかな?・・・」

本多「そうかもしれないわね・・・私、人間の本能(食欲・性欲・睡眠欲)での商売は、誰でも出来ると思うし、女なら尚の事、体売ればお金になるわ。でも、それはいつでも出来ると思うの。欲を商売にしたら、相手はどんな人間でも単純だから・・・」

耕一「じゃあ、俺は何なんだろうか?本多さんから見て、俺の存在は?・・・」

本多「まだ、分からないわ。だって、あなたの事まだよく知らないし・・・でも、少なからず、私がこれまで知っている男性の中では、一番まともに見えるわ・・・」

耕一「それって、褒められているのかな?・・・」

耕一は、今ひとつ自分の中で何か落ち着かないものがあった。しかし、それとは裏腹に、本多の女性としての魅力には魅かれていくのであった・・・。(続)


耕一は、本多の会社の役員を受ける事となった・・・
本多「まずは、スタッフに紹介するね。そして、来週はここの会社の協賛元である、『起業家育成株式会社』に挨拶にいきましょう。」


耕一「それって、この間の契約書の相手じゃないの?」

本多「そう。でも、今は喧嘩して欲しくないの・・・もう暫く大人しくして、こちら側の経営状態を早く安定させたいから・・・その上で、相手側に詰め寄れるだけのネタを蓄えたいの。」

耕一「なるほど・・・でも具体的にネタとは?それに、今回、黙って契約更新したとしても、あと2年は今のままの条件で甘んじるということだよね?」

本多「ええ、そうよ。」

耕一「・・・僕は、役員として何をするべきのかな?・・・」

本多「とりあえずは、私の横に居て欲しいの。」

耕一「分かった。ちょっと理解に苦しむけど・・・」

本多「で、申し訳ないけど役員報酬は難しいの。但し、ある程度交通費として経費は出してもいいわ。」

耕一「・・・・」

なんとも、割の合わない話である。まあ、ある意味個人的関係が『代償』として暗黙の了解なのか?それは疑問だったが、耕一は、金銭は問題にしていなかった。
ただ、個人的関係を楯に、基本的なルールを無視しようとする感覚が受け入れられなかったのかも知れない。

耕一は、本多からスタッフに紹介され、予定通りに協賛元に挨拶に行った。初対面でいきなり、耕一は相手に対する違和感と嫌悪感の空気を感じた。どうも、しっくり受け入れられない。その場で、話をするのも耐えられない感覚を覚えた。


耕一は、本多の役員就任の申し出に困惑した・・・



確かに、耕一は純粋に善意で、本多の経営する会社のヘルプはした。但し、それは現在入居している自社のレンタルオフィスそのものの存在に問題が生じれば、結果自分にも返ってくる事も考慮したことであった。

しかし、個人的な関係が進んだとすると、話は変わってくる。法人(企業・組織)そのものには、感情は無いはずである。これに、血液を流すがごとく、経営者の理念や価値観が入ることによって、企業は命を吹き込まれることとなるのはないだろうか?

ここへきて、耕一が本多との間に個人的な感情が混じり合った状態で、その感情的な部分が、経営感情に大きく影響が出るとなると、それはあまり良い事とは思えない。また、日々の時空間においても、本多を意識することで、自身の仕事やクライアントに影響が出ることも在り得る。一般的に、このような事を論ずるには、稚拙で、論外と揶揄されても仕方が無いが・・・
やはり、基盤となる自宅やオフィスが落ち着かないと、なぜか必ずといっていいほど何かしらの影響が出るのではなかろうか?

耕一も、例外で無いかも知れない。

果たして、耕一自身にこの先、何かが起こるか????


現在、8話の「搾取と裏切」ですが・・・・

本年2月の予告では、次章は「独立」となっていまして、それ以降は未定のままでしたが、次章から若干幾つかの章を入れることとします。

取り急ぎ次章は「錯綜」といたします。<m(_ _)m>