大きな円卓を囲んで、謝氏が立って一同を見渡しながら話し始めた・・・
謝「皆さん、本日はお集まりいただいて、有難うございます。ここにお集まりいただいた方々は、今回の大洋百貨店での新プロジェクトに関わって、ご協力いただいている方々です。詳しくは後で、それぞれ名刺交換してください。それでは、先ず、自己紹介を簡単にしていただきます。」
そういって、円卓の順番で各々、簡単な自己紹介をした。
謝「それでは、新プロジェクトを祈願して・・・カンパイ!」
皆は、それぞれ隣同士でグラスを交わした。
食事は、卓に沢山並べられていたが、名刺交換が始まった・・・耕一はユキの通訳に助けられながら、それぞれ名刺交換をした。ただ、不思議に思ったのは、よく理解できない人々が半分くらい居た事であった。しかし、それは耕一もまた同じで、相手は耕一の事を不思議に思ったかもしれない。
食事が始まり、噂に聞く中国式の乾杯や、これまで見たことも無い中華料理のメニューを口にした。
『いったい、この空気でこのプロジェクトは進むのか?』疑念が消えなかった。
会食が終わり、一同はレストランを出た。三々五々と散るかと思いきや、謝と柴田に呼び止められた。
柴田「中澤さん、これからが中国の面白いところだから・・・一緒に着いて来て・・・」耕一は、促されるままに彼らとタクシーに乗った。
着いた場所は『カラオケ』であった。今さら、中国まで来て『カラオケ』?と思った。ところが、そこは日本のそれとは大きく違っていた・・・
日本人、6名で通された部屋は20畳ほどもあろうか、大きな部屋であった。豪華な応接セットと大画面のモニターが置かれ、贅沢な造りであった。そこへ、30過ぎの女性が入ってきて、何やら謝に耳元で囁いていた。すると5分ほど経って、ぞろぞろと女性が並んで入ってきた・・・
柴田「中澤さん、中国初めてだから、一番の選択権をあげよう。この中から気に入った女性を指名していいよ・・・」
耕一は、面食らった。『ナンなんだ?ここは?』・・・
耕一「女性を選択するって、よくここのシステムが分からないのですが・・・」
柴田「まず、ここで飲む際に横に座らせる女性を選ぶんです。その分のチップは、個別に払うんです。そして、気に入ったらお持ち帰りできます。価格は、交渉次第です。もしその気になったら、言って下さい。謝が代わりに交渉してあげますよ・・・」
耕一「そ、そうなんですか?!・・・私は後でいいので、先にどなたか選んでください・・・」
柴田「そう?後悔しない?・・・じゃ、そっちからどうぞ!・・・」
そこに居合わせた、他の数人は、選び始めた・・・最初の20人位で気に入ったのが居ないと、総入れ替えで、次の20人が入って来るのである・・・その繰り返しが、5回ほどして・・・・
謝「一応、本日のメンバーは一巡しました。これからは、最終決定として、選んでください!・・・」
そう、ここのシステムは、ホステスそのものを指名して買うのである。単に、飲む場だけのアテンドであれば、日本で言うキャバクラに近いが、持ち帰るとなると話は変わる。要は、置屋の場としてカラオケの個室が使われているのである。明らかに、売春・買春の現場である。耕一は、一応許可を取って、ビデオを回した。・・・小さなファインダー(液晶)に映るその様子は、一種独特のものが伝わってきた・・・
聞くところによると、彼女達は田舎から都会へ出稼ぎに来ているのが殆どであった。そして、昼間は普通に働き、夜はこうして働いているのである。中国では、ダブルワークが当たり前となっており、そうして経済発展が下支えされているのであった。よって、女性向けの商品のターゲットは、ある程度毎月の稼ぎがある事が前提となる。収入バランスから見て、アンバランスな高価で手が出ないはずの商品に、なぜか人気がある。例えば、携帯電話やスーパーブランドのアパレル品である。その経済原資は、こういった夜の世界があるからであろうか?
耕一は、結局女性を指名しなかった。シケた日本人として見られたであろう。そして耕一は、ここ上海で自分は、住めないであろうと確信した・・・・(続)