井田とのゴタゴタから2週間後・・・・耕一は、村井と面談していた・・・・
村井「中澤さん、本社が米国だと何かと大変だね・・・まあうちもうちで、典型的な日本企業で、ドンくさい組織だから、他人を評価できる立場ではないけど・・・」
耕一「・・・・」
井村「ところで、お宅の社長ともめたようですね。仕事は、これまでどおり進められますか?」
耕一「力不足ですいません・・・」
井村「そうですか・・・こちらの社内では大騒ぎですよ。」
耕一「大丈夫でしょうか?」
村井「まあ、薄々分かっていたことですから・・・・井田社長の弁解も見苦しいですね・・・・」
井村「ところで、CBという御社の競合を知っていますか?」
耕一「はい、社名は知っていますが・・・」
井村「今、そこが熱心に当社へ売り込みに来ているんですよ。」
耕一「それは、今の製品につなげるためにですか?今回のゴタゴタで、弊社の製品以外のもを採用するという事ですか?」
井村「いや、今回の件とは別に1年以上前からコンタクトしてきていたよ。既に3ヶ月前から検討はしていたのは事実です。また、今の製品に採用するのではなく、次機種への採用を考えようかな?と思っていますがね・・・」
耕一「いや、それは勘弁してください。この事を会社に報告せざる終えないし、そんなことをしたら、私は恐らくFierになります・・・・」
井村「なら、これから紹介する人物に会って見て下さい。」
耕一「はあ・・・その方は、どういう方ですか?」
井村「まあ、合えば分かりますから・・・・」そういって、電話番号のメモを耕一に渡した。
耕一は、そのメモを受け取ってから2日後・・・井村から紹介された人物に電話した。
耕一「突然ですみません。井村様から御紹介されました、中澤です。」
渋木「これはこれは、お電話有難うございます。お待ちしておりました。是非一度お会いしたいのですが本日は、いかがですか?」
耕一「はあ・・・分かりました。どちらにお伺いすればよろしいですか?」
渋木「夕方6時過ぎに、こちらからお電話差し上げます。都内であればどこでもよろしいですか?」
耕一「ハイ。分かりました。それでは・・・失礼します。」
随分と急な話であった。耕一は、『どんな相手?どんな話?』と思案し始めた。
オフィスに戻ると、再度、井田に呼ばれた。
井田「色々考えたんだが、辞表をだせ!3ヶ月猶予やるから、その間にこの会社から出て行け!」
突然の話であった。耕一は、一瞬全身の血が逆流するのを覚えたが、その後は冷静に「分かりました」と口にしただけだった。
その日の夕方、耕一は渋木と面談した。呼び出されたのは、銀座4丁目辺りの寿司屋であった。
渋木「はじめまして。お会いできてうれしいです。さあ、まずこちらに座って下さい。」と上座に通された。
耕一「こちらこそすいません。こんな形とは思ってもいなかったので・・・」
渋木「いきなりお話を進めるのもなんですが・・・私がCBジャパンの代表も務めております。村井さんからお聞きになっているか分かりませんが、既に御社の競合として日本で活動しております。」
耕一「・・・・そうですか、村井さんが私を紹介した理由が少し理解できました。」「しかし、私にとってどう係わりがあるのか?未だはっきりと分かりません。」
渋木「ハイ、その通りだと思います。単刀直入にいえば、当社へ来ていただきたいのです。先ほど、お渡しした名刺とは別に、本来これまでやってきた事業そのものがあります。そのために、1点集中がなかなか出来ないことと、業界の知識・経験が少ないため、現役の適任者を探しておりました。更には、マネージメントも含め、ある程度の人材を探しておりました。そこへ、村井さんが中澤さんを紹介していただいたというのが事実です。」
耕一「そうでしたか・・・」
数時間前に、自分の会社でクビを言い渡された直後である。耕一は、混乱していた。短絡的に、転職先が見つかったという事実だけ見れば、大変な幸運でもあるが、それ以上に自身の身の置き方を何も整理されてないまま、時間と物事だけが潜行しているようにも感じた。
耕一「突然のお話で、びっくりしています。本日は、話はこの時点で保留にさせて下さい。」そういい残し、丁寧にお礼を言い、その場を去った。
数日後、耕一は担当先の関係者にどう話をするべきか、悩んだ。とりあえず、後輩の下田を後任として担当替えのあいさつ回りをすることにした。
訪問先では、びっくりされることが多く、その度に耕一は頭を下げていた。ただし、退社することは一切口にしなかった。それは、耕一自身が本当に『自分がこの会社を辞める』気がしなかったのである。
耕一は、クライアントの本部担当の加治には、退社の件を言わざる終えなかった。すると加治の上司である中本課長が『ぜひ、うちに来てほしい』と言ってきたのである。耕一は、困惑した。自分は純粋に仕事をしていたはずであったが、なぜにこんなに状況が一転したのか?心の底から自身の行く末に不安を覚えた。