しかし、今の状態では全てを投げ出すに等しい事になりなにかしらのストーリーが必要であったと同時に、自身の中で未練があった。
それは、これまで純粋な思いでこの1年以上の時間を費やしてきたのである。初めて中途半端に、自身の敗北を刻むことに対する抵抗もあった。既に、1月中旬に和田氏関係の株式の相対での株式譲渡を引き受ける旨をネクサスと合意し、処理待ちの状態だった。しかし、耕一には約2,000万円もの現金は集めることが出来なかった。この件は、相互企画の山崎氏に相談を持ちかけ最後の切り札でもあった。
この交渉にために、耕一は広島へ飛んだ。
山崎「わざわざ来てもらって、恐縮です。」
耕一「いえ、こちらこそ時間を頂いて有難うございます。」「本日は、お願いに上がった次第です。前回ご説明した、米国エイペックスも含め当社、エイペックスジャパンの今後についてご説明させて頂き、その上で融資、資本参加をご検討いただきたく考えております。」
続けて、「米国エイペックスは、結果的にはネクサスを通じ、法外なライセンス料と引き換えにとてつもなく大きな負債を負わせたことになっています。
このままでは、エイペックスジャパンは行き詰まることは必至です。これを打開するために、エイペックスジャパンが米国エイペックスを吸収する方向で進めたいと考えます。」
山崎「ほう、それはまた大胆な筋書きですね。で、いくらで目算をつけているのですか?」
耕一「はい、今となってはあちらも赤字企業です。残された経営資源を買い叩くこととして1株50セント前後で考えています。総額では、日本円で1億円弱です。」
山崎「なるほど。しかし、その企業を買収しても何かメリットはありますか?逆に、国境を越えて法人を持つとなるとそれなりのパワーが必要では?・・・」
耕一「はい、その通りです。逆に現状のままでは、特許を含めたライセンス権利の確保・管理が不透明のままです。それこそが、今は一番の経営資源です。」
山崎「しかし、誰が米国を見るの?」
耕一「私です。」
山崎「???中澤さんが?・・・・・それは、無理がではないですか?少なからず、日本がまだ立ち上がっていないのに、他に手を出すのは・・・」
耕一「おっしゃるとおり、次期早々です。しかし、今後の第三者割り当ての資金調達の上で、このストーリーがベターかと・・・」
山崎「で?こちら側にどうしろと?とても1億は出せないですよ。」
耕一「はい。そこで、ご存知の和田氏一派の株式を相対で私が、譲渡取得する話が決まっています。これにより、私の現在0.1%しかないシェアを10%に引き上げたいのです。これまで、資金調達の際にネックになっていたのが、私の株式保有率も大きな一つの要因でした。よって、エイペックスジャパンでの実質的な経営支配を持っているネクサスに対抗するバランスが必要と考えています。」
山崎「そうですね。バランス論は、その通りです。しかし、相手がネクサスと言うのが気にかかります。これまで、同じようなケースで融資と引き換えにその株主権限を担保にしてきたことがあります。ご存知の木場氏のいた会社のトップもそうです。今は、沖縄のサイバーファーム社長も同じです。2年以内に、IPOさせるべく現在も動いていますから・・・」
耕一「そうでしたか・・・」
山崎「それでは、中澤さんが株式取得するための資金の融資と言うことですか?」
耕一「はい。」
山崎「なるほど。筋書きは分かりました。しかし、米国法人の吸収はキツイですね。」
耕一「はい。そこを何とかご理解頂き、お願いします。」
山崎「検討してみましょう。」
話が終わったのは、午後8時を過ぎていた。耕一は翌朝の一番の新幹線で東京へ戻ることとなった。