1.インターネットと電子メール  その3 | 起業から、経営者へ、そして・・・

起業から、経営者へ、そして・・・

スレッドの書き込み、楽しみにしています。

米国CB社との一件から、3週間後、長谷社長の指示で携わっていた業務から外された。大義名分の指示は、「新規事業の開発」と言うことであった。後で分かったことだが、この移動は山田経理部長からの長谷への裏打ちによるもので、先のビジネスの将来性を否定する意見であった。



耕一は、クライアントへの挨拶回りも終え、ひたすら「新規」となるビジネスの模索を強いられていた。彼は、可能な限りの情報を集め読み漁り、PCでインターネットを除いては、思案する事の連続であった。都内の色んな店舗も回り、何かしらのビジネスの種になるものは無いかと探し回った。

実際に、実験的にビジネス構想の実施にも取り組んだ。併せて、試算し利益率の判断も重ね・・・しかし、これと言う確固たるビジネスの計画は立つはずも無かった。このころから市場では「IT(アイ・ティー:情報技術)」なる言葉が一般化しつつあった。

彼は、現在に至るまでに通算で7年以上半導体業界での経験があった。ゆえに、少々畏まった硬い思考性であることは否めなかった。よって、「IT」なる言葉も彼には受け入れにくく、抵抗感のあったことは言うまでもない。



毎朝09:00に出社し18:00まで着座し、なんとも冴えないサラリーマンを演じざる終えなかった。この日も、定刻どおり出社した。PCを立上ると、新着の電子メールが何通かあった。順番に目を通していたその時、一瞬視線が止まった。



[来たれ!企業家志望者!熱き情熱を求む!]



「何だこれは?」耕一は呟いた・・・[新規事業に興味のある者、連絡されたし!君の可能性を開花させて見ないか?]と短い本文であった。

この電子メールは、登録してある100名前後のML(メーリングリスト)の不定期配信であった。耕一は早速、

[大いに興味あり、是非その可能性に賭けたし!]と返信した。それから、1時間ほどして返信があった。

[貴殿の略歴をお送りください・・・]耕一は、「しめた!」と思った。この時のために、常に準備していた。外資系企業での経験から日本文、英文両方電子ファイルで即座に送った。



・・・2日後・・・

[今度の土曜日に鎌倉まで出向いていただきたい。住所は以下の通り・・・]と回答があった。「やったー!」耕一は心の中で叫んだ。「ついに待ちに待った好機(チャンス)が巡って来たのだ!絶対にモノにしてやる!」そう実感した。

この段階では、その内容が全く知らされておらず、どういうものかも分からない話なのだが、彼の動物的嗅覚が120%興奮していた。

「さて、どうしたものか?」耕一は思案した、ただ一人で指定された場所に行ったとしても、何がどうだか未知の話。やはり、パートナーを連れて行こうと決めた。それは、先のビジネスで前職から引き連れていた後輩の下田に事の経緯を伝えた。

下田は「なんか、よくわかんないですね?でも行くだけならいいですよ。」と快く応じてくれた。耕一は、これまで現場で仕事をしている際に、下田に教えてきた事もあったが、それ以上に彼のセンス、特に判断する際の感覚を大変信頼していた。

今回も同じく、下田の感覚を信頼していたのだ。



そう、インターネットが広く世間に認知されつつあるまさにその時期に、中澤耕一は、一通の電子メールで大きな岐路を迎えようとしていた。それが天国への階段か若しくは、地獄の入り口かどうか、知る由も無かった。