死亡した貧困女性 | 周来友 オフィシャルブログ

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中国出身のジャーナリスト、タレント。
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世界第二位の経済大国となった中国。しかしその実態は経済格差が広がり、都市部で次々とビリオネアが誕生する一方、内陸の貧困地域では餓死寸前の生活を迫られている人も少なくありません。

今月13日、中国貴州省で亡くなった24歳の女子大学生、吴花燕(ウー・ファイエン)さんも経済的弱者として犠牲になった一人です。吴花燕さんは、10代の頃に母親と父親を亡くし、精神疾患を患う弟の治療費を捻出するため、一ヶ月300元(4500円)の生活保護費を治療費に回すべく、5年に渡り1日30円で生活していました。その生活は悲惨を極め、白米に唐辛子を混ぜたものや、マントウなどを1日1回食べるのみでした。

こうした生活が続いた結果、彼女は栄養失調から臓器に異常をきたし、昨年10月、地元の病院に緊急入院します。当時、彼女の身長と体重は135センチ、約20キロと9歳児並みで、髪の毛などもほとんど抜け落ちてしまっていました。そして懸命な治療の甲斐もなく、3か月後の今月13日、命を落としてしまったのです。





さらに今回の事件では、女性のために慈善団体が多額の寄付金を募っていましたが、その団体が集めた寄付金のほとんどが女性に渡っておらず、使途不明となっていることも明らかとなりました。このため、中国国内で慈善団体や行政に対する非難の声が高まっています。

中国国務院などの政府関係者や医療関係者が幹部となって組織されている慈善団体「中華少年児童慈善救助基金会」は、メディアで昨年10月、吴花燕さんの境遇が大きく取り上げられたことを受け、募金活動を開始。全国から100万元(約1500万円)もの寄付を集めました。しかし、吴花燕が実際に受け取ったのはわずか2万元(30万円)のみで、あとの98万元の行方が分からなくなっているのです。

同基金会はメディアの取材に対し、「吴花燕さんは手術が出来る状態ではなかった。残りのお金は手術後に渡す予定だった」と、信じられない言い訳をしており、地元行政や基金会に対する非難の声が続出。ネット上でも「本当は渡すべきお金を基金会で私的に流用したのではないのか」「貧困者を利用して金を手に入れようとしていたのではないのか」「残りの98万元が今どこにあるのかしっかり説明するべきだ」「行政は300元しか支給せずにどうやって生活しろというのか」「国の宝である若者の治療費もろくに出さないこの国の未来は終わりだ」と厳しいコメントが投稿されています。

今回女性が亡くなった貴州省は中国でも特に貧困が深刻な地域の一つで、1人当たりのGDPはわずか60万円ほど。農村部ではさらにGDPは低くなります。社会保障制度が未整備なまま、経済成長を急いだ結果、今回のような事件が起きるほど深刻な経済格差が生まれた中国。今回の事件はまだまだ氷山の一角で、今も彼女と同じような境遇に苦しんでいる人々が多くいます。中国政府はこうした問題こそ最優先課題として取り組んでほしいと思います。