台湾総統選まで残り6日、脱中国の蔡英文の経済政策とは | 周来友 オフィシャルブログ

周来友 オフィシャルブログ

中国出身のジャーナリスト、タレント。
公式ホームページ:http://zhoulaiyou.jp

いよいよ今月11日、台湾で総統選が実施されます。今回の総統選ですが、香港で発生している大規模デモや習近平政権が主張する台湾統一、そして台湾市民の間で高まる対中感情の悪化など様々な要素が複雑に絡み合い、台湾の歴史上、最も注目を集める総統選となりそうです。まずは、今回の総統選の概要について紹介したいと思います。

今回の総統選に立候補したのは、蔡英文(民進党・現総統)、韓国瑜(国民党・現高雄市長)、宋楚瑜(新民党・党首)の3名。とは言え、事実上、蔡英文と韓国瑜の一騎打ちとなっています。

《左から、蔡英文、韓国瑜、宋楚瑜》

台湾のNGO・台湾民意基金会が12月30日に発表した民意調査では、蔡英文=52.5%、韓国瑜=21.9%、宋楚瑜=9.5%という結果となりました。

台湾全土から無作為に抽出した1075名の有権者を対象行われたこのアンケート調査。これまで台湾メディアの予想通り、改めて蔡英文総統の再選を裏づけする形となりました。総統選で蔡英文の再選が確実視されている台湾ですが、経済については今後さらに厳しい状況となることが予想されています。

香港の大規模デモ以降、台湾市民の間では対中強行路線を主張してきた蔡英文氏を支持する声が高まり、「中国からもたらされる短期的な経済利益より、台湾の主権を堅持すべきだ」という蔡英文氏の主張に同調する市民が増えているからです。

蔡英文政権成立後、台湾を訪れる中国人観光客は激減し、台湾の観光収入は厳しい状況に直面しています。実際に台湾では多くの有名ホテルが倒産するなど、台湾経済への影響が顕著に現れています。

ただ、長年経済的に中国に依存してきた台湾も2016年、蔡英文政権の誕生とともに政策を大きく転換。対中依存型経済から脱却するため、東南アジア各国やASEAN、インドなどとの関係を強化する方針を打ち出しました。すでに東南アジアや南アジアから留学生を多数受け入れ、優秀な人材を育成、確保している他、IoT分野の牽引役となるべく「アジア・シリコンバレー計画」を打ち出し、海外企業の誘致などに力を入れています。こうした施策によって現在、台湾経済は徐々に回復の兆しを見せ始めました。

これまで経済カードをちらつかせることで台湾に大きな影響力を与えてきた中国。こうした台湾の脱中国政策は、台湾統一を目指す上で非常に厄介な存在と言えます。今回の総統選の結果によって、これまでつかず離れずだった中国と台湾のパワーバランスも大きく崩れることになるでしょう。軍事的にも経済的にも、日本にも大きな影響を与えることになる今回の総統選に日本の皆さんもぜひ注目してみてください。