中国で社会問題となっている受験移民とは? | 周来友 オフィシャルブログ

周来友 オフィシャルブログ

中国出身のジャーナリスト、タレント。
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アメリカでは今、ハリウッド女優たちによる大学不正入試事件が連日ニュースを賑わせています。自分の子供を有名大学に進学させるため、大学とコネを持つブローカーに数億円の金を渡していた、というのが今回の事件のおおよその経緯です。

実は中国でも今、大学入試を巡りある大問題が起きています。中国独自の大学入試制度の裏をついたグレー受験が横行しているのです。

広東省の教育委員会は今月、ネット上で情報提供を呼びかける通達を発表しました。その通達によると、中国の一部の学生が、学籍を広東省の学校に移し大学入試に臨んでるというのです。メディアによると、広東省深圳市のいくつかの高校では、普段学校には登校せず学籍だけ置いている学生が数多く存在していると言います。この学籍だけおいている生徒は、実際は地方に住んでいるにもかかわらず、学内テストや大学受験の時だけ、深圳の高校に現れます。

《中国では毎年1000万人が大学受験に臨む》

中国では“受験移民”と呼ばれるこの現象。具体的にどういうことなのか説明しましょう。一般的に中国の大学は合格者数を省毎に割り当てています。つまり、受験者数の多い広東省など都市部の省では大学合格者数の定員の上限も多く、逆に地方の省は少ないのです。都市部は受験者数も多いですが、その分、合格者の数も多いということです。そしてこの制度をうまく利用すると、地方の学生が学籍だけ都市部の高校に移し、都市部の学生として大学受験する、といったことが可能となるのです。この“受験移民”の学生の多くは、普段は地元の高校で授業を受け、テストや大学入試の時期になると、学籍を移した先の都市部の高校に現れます。

中国では省ごとに大学の定員を設けたり、少数民族に対して入試の点数を加算したりと独自の大学入試制度を設けてきましたが、こうしたやり方は教育における不平等だと指摘する声も上がっていました。今回の受験移民はまさに中国の不平等な入試制度を逆手にした手法と言えるでしょう。

日本でも最近、医大が受験生の性別に応じて点数を操作していたことが明らかになり、差別だと批判を浴びた事件が起きました。教育は誰もが享受すべき権利です。中国でこうした受験移民が生まれたのも、元はといえば受験生が不平等だと感じる中国の入試制度に問題があるのではないでしょうか。

中国の教育委員会は市民に対し、受験移民に関する情報提供を募っていますが、その前に受験移民を生んでしまう現行の制度そのものを見直すべきでしょう。