日本四大公害病の一つ、イタイイタイ病。日本初の公害病で1910年代〜1970年代にかけて発生し、富山県で多くの人々を苦しめました。原因は鉱山の精錬に伴う汚染水(カドミウム)が川に流出していたことでした。その水を摂取したり、またその水を使って作られた農産物などを食した人々は長年に渡って、全身の骨の変形や骨折に苦しむことになるのです。
先週土曜日に放送されたTBSテレビの『報道特集』では、かつて日本の人々を苦しめたイタイイタイ病が中国の農村でも発生していることを報じました。私自身も調査などコーディネーターとして実際に現地を訪れていました。今回は改めてその時の様子についてお話したいと思います。
中国広西チワン族自治区にある三合村と呼ばれる農村では、複数の農民が日本のイタイイタイ病と同じような症状に苦しんでいるというのです。私が昨年10月、この三合村を訪れた際、イタイイタイ病に苦しんでいる黄付強(61)さんと会うことができました。黄さんの手は常にグーの形で開くことができないといいます。また、脚や腕の骨は大きく変形しており、骨がボコボコと突き出ていました。痛みは90年代からどんどん強くなり、歩くことも困難になっていたと訴えます。現在は痛み止めの薬を毎日服用し、日々を過ごしています。
この村には黄さんの他にも、同様の症状で苦しむ住民がいます。かつてこの村は農業や林業に恵まれた土地でした。そんな中、こうした症状が現れることになった原因は鉱山工場だ、とある住民は話してくれました。住民の案内で村から2キロ上流にあるその鉱山に向かいました。鉱山工場は1950年代に国有企業として創業されたそうで、工場から伸びる排水溝は村の方に向かって下って行くことが分かります。この排水溝は、農業に使う貯水池にも繋がっていたのです。
村人の多くはこうした工場排水が症状の原因だとして、99年に国有企業を相手取り住民200人が裁判を起こしました。裁判は住民側の訴えを認め、企業側に賠償金の支払いを命じました。さらに裁判所は、工場排水に基準を大きく上回る多量のカドミウムが含まれていたことを明らかにした上、村の農産物からも基準値を上回るカドミウムが含まれていたことが分かり、住民の苦しみと痛みの原因が工場であることが明らかになったのです。
日本でも中国でも、国が発展する過程で発生してきた公害病ですが、その因果関係がはっきりするまでには多くの時間を費やし、残念ながら亡くなってしまう方もたくさんいます。国の発展の影に、犠牲になる人がいてはいけません。公害病は決して過去のものではありません。現在を生きる我々も一人の市民として、こういった問題を忘れてはいけないのです。