2週間前、ラムシュタインの新しいアルバムが出ました。今日の記事を始めに、このアルバムの11曲の歌詞を日本語へ訳して解釈も入れたりして投稿していきます。

 

 Rammstein

ラムシュタインは1994年に結成したドイツのロックバンドです。13歳に初めて聞いたんですが、それ以来、僕にとって群を抜いて一番大切なバンドです。ギターやドラムの他にもキーボードも使って特にバンドの初期のスタイルについてはタンツメタール(ダンスとヘヴィメタルの合成語)と自称したこともありますが、一枚目のアルバムでノイエ・ドイチェ・ヘアテ(新しいドイツの堅さ)というジャンルが誕生したと言われていて、ラムシュタインがまだまだこのジャンルの象徴とされています。歌手のティル・リンデマンがせっかく取った花火師の資格を活かして火炎放射器などを大量に使用するコンサートも、世界中で知られています。

 

さて、このアルバムですね。題名はZeit(ツァイト:時間)です。アルバムの特徴を次の記事でもっと詳しく説明しますが、アルバム全体と同じように同名の先行シングルも人生と時間の流れを取り扱っています。

 

 

ミュージックビデオもあってとても感動的だと思いますが、出産が生々しく描写されているシーンもあるので、ご注意ください赤ちゃんぴえん

Zeit・時間

 

Manches sollte manches nicht                  そうなる事、そうならない事

Wir sehen, doch sind wir blind       俺たちは目が見えるが、見えてない

Wir werfen Schatten ohne Licht        光なしに影を落とす

 

Nach uns wird es vorher geben       俺たち以降は以前がある

Aus der Jugend wird schon Not              青春から苦痛が生まれる

Wir sterben weiter bis wir leben        生きるまで死に続ける

Sterben lebend in den Tod         死へと生きながら死んでいく

Dem Ende treiben wir entgegen       最期に向かって進んでいる

Keine Rast, nur vorwärtsstreben      休息なし、ただ先へ突き進むだけ

Am Ufer winkt Unendlichkeit         岸で無限が手招きしている

Gefangen so im Fluss der Zeit       時の流れにこう囚われている

 

Bitte bleib stehen, bleib stehen    (時よ)どうか止まってくれ、止まってくれ

Zeit, das soll immer so weitergehen  時よ、ずっとこのままで続けばいいのに

 

Warmer Körper ist bald kalt          温かい身体はすぐに冷たくなる

Zukunft kann man nicht beschwören    未来は願いを聞いてくれない

Duldet keinen Aufenthalt           寄り道を容認してくれない

Erschaffen und sogleich zerstören      創造しては破壊する

Ich liege hier in deinen Armen        俺はここで君の腕に抱かれて

Ach, könnt es doch für immer sein      ずっとこのままでいいのに

Doch die Zeit kennt kein Erbarmen     時は容赦を知らなくて

Schon ist der Moment vorbei        その瞬間はもう過ぎ去っている

 

Zeit, bitte bleib stehen, bleib stehen     時よ、止まってくれ、止まれよ

Zeit, das soll immer so weitergehen     時よ、ずっとこう続けばいいのに

Zeit, es ist so schön, so schön        時よ、美しい、とても美しい

Ein jeder kennt den perfekten Moment 誰しもが知っている、その完璧な瞬間を

 

Zeit, bitte bleib stehen, bleib stehen     時よ、止まってくれ、止まれよ

 

Wenn unsere Zeit gekommen ist        俺たちの時が来ると

Dann ist es Zeit zu gehen            立ち去る時だ

Aufhören, wenn es am schönsten ist     最も美しい時にやめる

Die Uhren bleiben stehen            時計がとまる

So perfekt ist der Moment           この瞬間は完璧だ

Doch weiter läuft die Zeit            でも時は流れ続ける

Augenblick, verweile doch            瞬く間、待ってよ

Ich bin noch nicht bereit             準備がまだできていないんだ

 

Zeit, bitte bleib stehen, bleib stehen       時よ、止まってくれ、止まれよ

Zeit, das soll immer so weitergehen       時よ、ずっとこう続くべきだ

Zeit, es ist so schön, so schön            時よ、あまりに美しい、美しい

Ein jeder kennt den perfekten Moment  誰もが知っている、その完璧な瞬間を

 

歌の全体的な意味は明快で誰でも共感できると思います。人が人生の浮き沈みを経て時間が一瞬も止まらずに容赦なく常に流れています。でも、気になった部分もあります。

 

一つが、第一行のmanches sollte, manches nicht. インターネットで見た英語の翻訳と2つの日本語の訳では、逐語的な訳が多くてその意味を伝えてない、またはそもそも読み取れていないようです。英語のit's meant to beやsome things are meant to beというフレーズが思い浮かぶんですが運命は前から定められているものなので、いかに頑張ってもいかにこうなってほしいと願っても、そうなることもあればそうならないこともある、という意味です。

 

もう一つがNach uns wird es vorher gebenです。誰かが死んだら、残された遺族にとってその人の死を境にすべてが変わりました。死ぬ前と死んだ後と、時間が二つに分かれてしまいます。あるいは、死ぬ前しかないようになってしまうかもしれません。前はそうだった、幸せだった、今虚しい気持ちで心はでいっぱいだ。しかし、いくら嘆いてそれを取り返そうとしても時間が流れ続けていきます。

 

そして、wir sterben weiter bis wir leben/Sterben lebend in den Tod. Wir sterben weiter bis wir lebenということは、時間が経つにつれて人間は必然的な死へ徐々に近づいていく、しかもいつ死ぬのかわからないから、生まれた瞬間から死に始めたという風に考えることもできる、ということです。Sterben lebend in den TodのSterbenが名詞なのか動詞なのかも少し曖昧ですが、それよりin den Todとin dem Todの違いが気になりました。in den Todは英語だと、into deathまたはuntil deathになります。死が最終的な行先に例えたものです。しかし、インターネットで見た日本語の翻訳では、両方とも「死の中...」になっていてin dem Tod(英語:in death)から訳されているかに思えます。

 

次に、das soll immer so weitergehenです。私見ではこれは「時よ、どうかと待ってくれ、止まってくれ」に続いて、これから進まずに、今、この瞬間が幸せなのに、時間が止まってずっとこの瞬間を楽しませてくれないことを嘆いていると思いますが、それをどうやって自然に日本語で表すのか、迷いました。「こう続くべきだ」なのか、「こう続けばいいのに」なのか、または「ずっとこのままでいいのに」とか...

 

最後に、ein jeder kennt den perfekten Moment(誰もが知っている、その完璧な瞬間を)です。本当はそうでしょうか。それなら、いつ分かるのでしょう。その瞬間を生きている時に分かるのか、その瞬間が過ぎ去って初めてその意義が身に染みて感じるのか。振り返って自分の人生における1つの完璧な瞬間を思い出せますか。もしかしたら、まだ来ていないかもしれません。それか、完璧な瞬間などそもそもないのでしょうか。もし、あっても人生は引き返せないものだから、周りの人を大切にして最高の瞬間を多く生きたらいいでしょう。

 

ちなみに、ミュージックビデオに登場する黒衣の人物は死神ではなくて、北欧神話において人間の運命を形作る女神です。俺の解釈ではこのビデオでは、人は皆同じように平等で無力で純粋な赤ちゃんとしてこの世に生まれてくるが、生まれた瞬間に宿命が人生を乗っ取って、戦争で撃たれる人や、船で嵐に遭遇して溺れる人など、人のそれぞれの最期へと時間に流されていく、ということをバンドが表現しています。

_______________________________________________________________________________________________

次はAngstです。フォローしてね!