光る君へ

初回、面白かったです。


かの有名な若紫の

「すずめの子を犬君が逃しつる!」

のオマージュもあったし、まひろが語る作り話が「桐壺」の話だったりとか、家の貧乏っぷりが「末摘花」だったりとか、いろいろありました。


でも個人的に面白いな、と思ったのは、まひろが三郎に「馬鹿」の故事を語ったくだりからの流れ。


まひろは、間違いを知っているのにへつらって指摘しない人を「馬鹿」というのだと言って三郎をなじるわけですが。

その一件のあと、彼は自分の兄が従者に暴力を振るったことを母に言っちゃうんですよね。

たぶん、彼は親に告げ口するタイプじゃないと思うんですけど、黙っていたらまひろの言う「馬鹿」になってしまうと思ったから、あえて言ったんだと思うわけです。


でも、それがきっかけで彼の兄は母への屈折した思いを拗らせまくって、結果としてまひろの母を殺しちゃう。


その因果応報っていうか言霊というか。

まひろが「馬鹿」となじった言葉がまわりまわって返ってくる。

兼家が晴明に呪いを発注するシーンもありましたが、これが「呪い」や「言霊」の本質ってことですよね、たぶん。


そもそもが平安時代という馴染みの薄い時代を扱っているわけなので、見る方も知らないことだらけなのをわかってるし、いっそ「呪いとはなんぞや」ってことをセリフで直接説明しちゃえば早いと思うんですけども、軽々しく言葉で説明しないで、あくまでもドラマ的表現で見せていこうというのが、なかなか腹筋の効いた仕様で面白いなと思いました。

こういうの、私は好きです。



葬送のフリーレン


アニメですけど、これがえらく面白くて最近ハマっております。

娘が金ローで初回を見ていたとき、「音楽 エバン・コール」ってのを見かけて、「えーー!鎌倉殿の13人の音楽を担当した作曲家じゃん!」と食いついたのがきっかけ。(そこ?)


一見、わりとのんびりしたアニメで、ゼルダの伝説とかドラクエとかに出てくるような、わりとありがちな、わかりやすいファンタジー設定。

でもストーリーはRPGにあるような冒険譚とか自己犠牲とか技を磨いて強くなるとかの少年ジャンプ的な内容じゃなくて・・っていうかそういう要素もないわけじゃないけど、人生における一つのエピソードとしてさらっと描かれるだけでことさらフォーカスしないんですよね。


このアニメ、10年かけて魔王を倒した勇者が故郷に戻ってきて、「さあ仕事を探さなきゃ」とボヤいてるところから始まるわけなんですけど、もはや魔王もヒーローもいない、栄光と後悔と恥に満ちた人生のその先をいかに生きるか、っていうことがおそらくメインテーマで、いろんな人間模様が角度を変えながら描かれている。


脇目もふらず何かのために生きてきたつもりなのに、人生折り返す頃になって、気づけば若い人や子供に教えられ助けられて生きていることに気づくのも、いつしか新しい視点を獲得し、内面が変わり、行動が変わっていくのも、何かをきっかけに過去の記憶が鮮明に塗り替えられるのも、自分は死んだ人々の記憶を抱えて今生きているという感覚も、数十年前が「最近のこと」みたいに思えるのも、歳をとるほど「あるある」と共感する話じゃないかと思うんです。

ストーリーよりも、些細な言葉のやり取りの中にリアルな人生を垣間見るというかなり渋い仕様で、50代が見ても普通に等身大に共感できる。

この先どうなるかは知らんけど。


もちろん恋愛要素もあったりするので若い人も面白いのだろうけど、どちらかというとその親世代、40代以上が見た方が色々感じるところがあるんじゃないかなあ。

とにかくどーでもいいところで不意に泣かされる。


素直じゃないひとつひとつの言葉に人生の実感がこもっていて、良い。

戦闘シーンで「あ、あの技は!」みたいに延々説明する的な、くっそ退屈な(くそ退屈いうな)シーンが、無いわけじゃないけど少ないのも大変よい。

そして音楽が良い!

エバン・コール最高かよ。

ミレイが歌うエンディングも好き。


第二シーズン、次回も楽しみにしてます。