ウイスキーは慣れないと違いが分かりにくい。

同じ蒸溜所でも加水とカスクストレングスがあるし、熟成年や熟成樽による違いがある。

ラベルには記載がある場合が多いが、見方を分かっていないと違いが分からず、価格差がある理由もピンとこない。


これはワインも同様だ。

ドメーヌものとメゾンもので、同じ生産者のラベルでも値段が全く違う。

同様に、同じ村名でも単一区画と複数の区画を混ぜたもので、金額は違う。

同名の畑でも片や一級畑、片や村名格というものもあるし、隣村だったりする。


しかし、慣れてくるとラベルをみればだいたいの内容は分かってくる。

ヨーロッパの場合、原産地呼称がしっかり定義付けられていて、ラベルにもそれによる表記が定められている。


例えば、このベルトラン・アンブロワーズの広域ブルゴーニュのワインを使った、ブルゴーニュ・ルージュ。

以前このブログで紹介したのは、古木から収穫したブドウを使ったキュヴェ・ヴィエイユ・ヴィーニュだ。


https://ameblo.jp/zgmf-x10a19730730/entry-12837506919.html 


そして、このワインは同じヴィンテージのブルゴーニュ・ルージュだが、表記はブルゴーニュ・コート・ドールとなっている。

値段も私が買ったのは、200円ほどヴィエイユ・ヴィーニュ(VV)より安かった。


古木から収穫したブドウの方が、房が減って凝縮し、果皮が厚くなる。

また根が深くはるため、多層の土壌から養分を吸収する。

そのために、複雑で多彩なワインになるといわれる。

私もドメーヌ・セラファンのジュヴレ・シャンベルタンなど、VVがあるキュヴェは多少の差ならついそちらを選びがちだ。


とはいえ、樹齢何年からをヴィエイユ・ヴィーニュと呼ぶかの明確な規定はない。

樹齢25年以上ぐらい、というざっくりとした感覚のようだ。

しかし、生産者によっては樹齢50年、100年という古木のブドウを使うこともある。


このアンブロワーズのブルゴーニュ・ルージュのように、同じキュヴェで古木とノーマルなキュヴェをつくる生産者のものを並べて飲むと、違いが体感できる。


ということで、VVを飲んだのは少し前だが、同じヴィンテージのノーマル・キュヴェを開栓し、飲んでみた。

なおヴィンテージは2021、輸入元はラックコーポレーション。

グラスはシュトルツル・ラウジッツのギブリ 24ozブルゴーニュを使用した。



【テイスティング】

焼いた樽の炭の粉っぽいタンニン、アメリカンチェリー、ブラックベリー、苦味が強い。

熟した蜜柑、黒土っぽいニュアンス、ヨード香、ジくャミーなプラム。

ブドウの皮、鉛筆の芯の削りカス、焦がした肉、頑強な骨格をもち、濃い味わいでパワフル。


パワフルで樽の利いた濃い果実味のピノ・ノワール。

ブドウは熟していて、樽が利いているところが、アメリカのピノ・ノワールのようだと感じる。

キュヴェ・ヴィエイユ・ヴィーニュとの差は、値段差同様大きくはない。

しかし炭っぽさや樽の苦味がより強く、樽負けしている印象。

普通に考えたら新樽比率は変わらないはずだろうから、ブドウのポテンシャルの差なのだろう。

ボトルの個体差もあるかもしれないが、200円の差なら個人的にはキュヴェ・ヴィエイユ・ヴィーニュを買う。


このワインは今どき税前3,000円強で買える、ブルゴーニュのピノ・ノワールの果実味が堪能できるワインだ。

しかしモダンで濃い味わいなので、繊細な果実味やエレガントさを求める人には、もの足りないかもしれない。

とはいえ、今のブルゴーニュの値段を考えると良心的で、クオリティ的にも悪くないと思う。


今のブルゴーニュは、記録的な不作に端を発し、価格は高騰の一途をたどる。

2022、2023は豊作だったと聞くので、価格が落ち着いてほしいが、一度上がったものを下げるのは難しいだろう。


また、人気のドメーヌは、クルティエ(仲介人)を通さず顧客へ直販する傾向が出てきて、お金を出せる人が主導し、ますます価格が上がりそうだ。

手元にあるブルゴーニュは大事に飲もうと思うが、さりとて有限なのでテーブルワイン的に飲むブルゴーニュがほしい。

そんな時には重宝するワインだと思う。


ブルゴーニュを取り巻く環境を考えると、いつまで続くかは分からないが、できるだけ価格と質を維持してほしい。

そんなアンブロワーズのブルゴーニュ・ルージュだ。


【Good/Verygood!!】