海底軍艦60周年 | zojurasのブログ

周年企画で『マタンゴ』、『ゴジラ対メガロ』、『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』を紹介してきましたが、最後の紹介は、マタンゴと同年の『海底軍艦』となります。

基の海底軍艦は、明治時代に押川春浪に描かれた冒険小説ですが、そちらでは、活動場所は海底と海上という海の中に限られており、映画の轟天号のような万能潜水艦という訳では無いのですが、独特のフォルムが、小松崎茂デザインにも表れているし、舷側のリボルバー式の魚雷発射口は、後の『惑星大戦争』の轟天にも活かされたことは想像に難くないと思えます。

カメラマンの旗中(演:高島忠夫)と助手の西部(演:藤木悠)は、冬場にグラビアアイドルをとある埠頭で撮影中、突然海から異常な蒸気を吹き上げているのを見つけ、その蒸気を吹き出しているのは、異様な姿をした人型の物体である事が判っただけではなく、突然乗用車が猛スピードで海に飛び込んでしまう光景まで目撃しました。

 

翌日、車は引き揚げられたものの、中に乗っていた運転手の姿は見つからず、更に各地で同じように蒸気を吹き上げる人間を目撃した情報が次々と出てきました。そして、旗中は美しい女性が怪しい男(演:平田昭彦)に連れ去られようとしているのを見つけ出して助け出したのですが、その女性、神宮司真琴(演:藤山陽子)を狙っていた男は、ムー帝国工作員23号と名乗りました。

 

真琴は元海軍軍人で、海運会社を経営している楠見(演:上原謙)によって育てられた楠見の元部下神宮司司大佐(演:田崎潤)の娘でした。そんな楠見と真琴の廻りに奇妙な事件と、怪しげな男が彷徨き始め、更に各地で大地震まで頻発するようになりました。伊藤刑事(演:小泉博)はムー帝国から送られたという小包を開くと、ムー帝国から、地上への宣戦布告と、優れた科学力で地底のマグマを操り、地震を起こして地上を滅亡させる脅迫が伝わってきました。更に、攻撃されたくなければ、旧日本海軍が極秘裏に開発、建造していた万能潜水艦「海底軍艦」の所在を明らかにせよ、と。

 

ムー帝国攻撃の為に、アメリカの最新鋭潜水艦「レッドサタン号」が、ムー帝国の潜水艦を発見し、追跡しますが、ムー帝国潜水艦は強烈な水圧がかかる深海を悠々と航行し、レッドサタン号の方が水圧に負けて潰され、最新鋭潜水艦でも、ムー帝国攻撃は不可能だと思い知らされました。

 

手がかりは、ムーのフィルムの中にあった大戦末期に日本が造り、楠見の命令で神宮寺が、戦局好転の為に出撃させた潜水艦伊403と、ムー帝国のいう海底軍艦という言葉だけ。そうした中、真琴の廻りを彷徨いていた男が捕らえられましたが、その男は工作員23号では無く、天野兵曹(演:田島義文)と名乗りました。天野は神宮司の部下で、密かに真琴を守るよう命令されて派遣されていたのでした。

 

最早、頼れるのは海底軍艦だけと見た人々は、楠見の命令、いや、頼みを聞き入れた天野によって、事件に関わった一向は、海底軍艦を建造しているという南洋の島に向かいますが、そこに海野(演:佐原健二)という怪しげなカメラマンに、スクープされ、秘密を保持する為に、同行させる事にします。

そして辿り着いた島で、遂に一向は旧日本軍の生き残り軍人達と、彼等を指揮する神宮司大佐と対面し、そして遂に完成した海底軍艦轟天号を目撃しました。

轟天号の性能は、目を見張るもので、一同はその高性能さに驚くばかりでした。

 

その轟天号の性能が判った楠見は、かつての部下に、海底軍艦を出動させるよう頼みます。今は日本、いや、世界が危急の時であり、全世界は海底軍艦の出動を望んでいると。

 

しかし、日本が世界に雄飛する一心で轟天号を造り上げてきた神宮司には、その要請は承諾出来ないものと拒否しました。そんな父の姿に真琴は失望と悲しさのあまり、飛び出してしまいます。娘の気持ちが理解出来ない神宮寺に対し、旗中は「せっかく、父との再会を楽しみにしていた娘に、優しい言葉一つかけられない戦争きちがいと話すなどありません!」と詰ります。

ムーの攻撃が世界各地に及ぶ中、神宮司は父として、真琴にずっと娘の事を案じてきたと云いますが、真琴は「お父様はムーと同じです!」と拒絶する態度を崩しませんでした。未だに戦争から離れられないままの神宮司に旗中は「海底軍艦はきちがいに刃物、今のあなたは愛国心という錆びついた鎧を着た亡霊です!」と厳しい言葉を投げつけます。

 

だが、父と娘の確執を見ていた海野が真琴に襲いかかり、助けようとした旗中共々拉致されました。海野もまた、ムー帝国のスパイで、二人をムー帝国まで連れて行ってしまい、更に海野が仕掛けた爆弾で、海底軍艦の建造ドッグまで破壊されてしまいます。

旗中と真琴は、ムー帝国皇女(演:小林哲子)の前に引きずり出され、ムー帝国守護神のマンダの生け贄にせよと云います。ムー帝国は地上の科学者達を誘拐し、帝国の為の奴隷にしていたのでした。

ここに至って娘を、世界を救う為、神宮司は決断します。錆びついた鎧を着ていた今までの自分と決別し、生まれ変わった気持ちで遂に海底軍艦を発進させました。

轟天号は飛翔し、ムー帝国攻撃に向かいます。

その轟天号の姿を見たムー潜水艦は直ちに逃げ出しますが、轟天号はそのまま追跡します。

行き先は深海のムー帝国でした。

レッドサタン号では歯が立たなかった水圧もものともせず、轟天号はムー帝国目がけて進みます。

一方、旗中達は強制労働に従事させられていましたが、ムー人が使っている物を拝借します。それは高性能爆弾でした。旗中は真琴と拉致された人々と共に、皇女の前でマンダの生け贄に捧げられそうになったところで、一瞬の隙を突いて、皇女に爆弾を突きつけ、皇女を人質に脱出を計ります。

旗中達は遂に皇帝を連れたままムー帝国を脱走しようとするものの、そこにマンダが蜷局を巻いて待ち構えていました。だがそこへムー潜水艦を追跡してきた轟天号もやってきて、煙幕弾を放ってマンダの視界を遮り、旗中達はその間に轟天号に戻りました。

 

神宮司は無事に娘を取り戻し、そして脱出した一行が連れて来たムー帝国皇女と対面します。

 

皇女は気丈に振る舞って、「抵抗は止めて、ただちに降伏せよ」と云いますが、生まれ変わった神宮司は「降伏するのはそちらの方だ。平和的な話し合いをするのなら、ムー帝国攻撃を控えてもよい。」と告げます。あくまでも戦いを止めようとしない皇女に神宮司は「それではムー帝国の心臓部を攻撃してご覧に入れよう」と告げます。

マンダは轟天号に襲いかかりますが、轟天号は放電してマンダを引き離し、艦首の必殺兵器である冷線砲を浴びせてマンダを黙らせました。

轟天号は冷線砲+ドリルで、ムー帝国を突き進んでいき、決死隊も突入して、冷線兵器で兵士達を凍らせ、動力部も沈黙させました。

そして、爆弾を仕掛けて脱出します。

海上に舞い上がった轟天号は、ムー潜水艦も冷線砲の一撃で息の根を止めます。

やがて、ムー帝国は大爆発を起こし、着水した轟天号の目の前で、海底火山の噴火のような形で燃え上がっていきました。そんな故郷の最期を見た皇女は一人、燃え上がる故郷へ向かって泳いでいきます。それは神宮司にとって、かつての自分を見るようで、そして戦いの愚かさに気づいた時には既に、という思いが湧き上がってくるものでした・・・・・・・・・。

 

既に戦後から20年近く経った後で、未だに超兵器で・・・・・なんて神宮司の時代錯誤っぷりや、あれだけ脅威振りを発揮しながら、轟天号たった一隻にあっさり滅ぼされてしまったムー帝国には少々物足りない感もありましたが、かの宇宙戦艦ヤマトにしても、本作が無ければ生まれなかったと思うし、艦首にドリルを戴く超強力軍艦が突き進むインパクトは、日本だから造られたといえそうなものであり、轟天号が無ければ、後のSFドリルメカの発生もなかったといえそうです。

 

ゴジラ-1.0の元海軍司令官が、明らかに田崎潤の神宮司大佐を意識しているような感じもしたし、ミレニアムシリーズのGFWでも・・・・という意味合いで、海底軍艦轟天号の及ぼした影響は、今でも大きいでしょう。